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「えっと……もしかしてこの前の警備隊の秘人ですか?」
「ああ、そうだ! やっぱりきみだね! 宮本真緒ちゃん、だったかな?」
「はい、そうです」
真緒が出会ったのは、茶色のローブを着た30歳くらいの警備隊だった。以前おばさんの家にふたりの警備隊が訪ねてきたが、そのうちのひとりで、険しい表情をした方ではなく、名前を聞いてきた優しい印象の方だったので、真緒は少しほっとした。
「まさか、こんなところで会うとはね。で、他に秘人がいるっていうのは本当かい?」
「はい。このあたりじゃなく、ずっと向こうの方なんです」
真緒が来た道を指差して言うと、警備隊の男性は少し驚いたような、それでいて困ったような顔をした。
「きみ、よく無事でいられたね。あっちの方は、事件の発生現場あたりじゃないか。あー、でも弱ったな、向こうかぁ。僕ひとりだと道がわからないし、かと言って、きみを連れていくことは危険だし……そうだ、その秘人のいる建てものがどんなところか、なんていうお店かわからないかな?」
「えっと……すみません、香水とか売っているお店なんですけど、店の名前までは見てなくて……」
「そうかぁ」
警備隊が腕を組んでうーん、と考え込む。だが、そうしている間にも時間は過ぎていく。真緒は少しじれったく思った。
「あのっ」
真緒が話しかけたとたん、近くで物音がした。
「しっ! 後ろに下がってて」
警備隊が人差し指を口にあて、もう片方の手で真緒を制止する。見つめる先は、怪物の仕業なのか、全壊した店の方だった。
真緒はすぐに警備隊の後ろに隠れ、少しだけ顔を出して様子を見た。すると、山積みになったがれきの何枚かがふわっと宙に浮いた。
「ぃよっと!」
がれきの下から、杖を持った若い男性が現れる。
「はぁー、命拾いしたー! む?」
その男性は腕を伸ばして体をほぐし、真緒たちに気がつくと、自分の着ているローブのほこりを払いながら近づいてきた。フードは脱げていて、黒いボサボサの髪があらわになっている。
「ふぅ、危なかったですよぉ! 変な竜みたいな奴がやってきたかと思うと、いきなり僕の使い魔を殺しちゃうんだから、ひっさしぶりに生命の危機を感じちゃって……って、あれ? なんか僕、驚かせちゃいました? あの、警備隊の方ですよね?」
「あ、ああ。きみ、名前は?」
がれきの下にいたとは思えないほど、はつらつとしている男性に、真緒と警備隊はあっけに取られた。身構えて緊張していたのがゆるみ、怪物でなくて良かったと胸をなでおろす。
「僕は中野彩也斗。ひぐれ妖術学校で呪術を教えている導士です。これでも立派な導士なんですよぉ! なんつって、本当はまだまだなんですけどねー」
後頭部をさすりながら、男性はテヘッと舌を出して笑った。
「あの……頭から、血が、出てます」
ふと、真緒は男性の額から血が流れ落ちてきていることに気づいた。その血は瞬く間に男性の左半分の顔を赤く染めた。




