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闇のペンタクル  作者: 侑佐
霧雨通り
78/105

15

「ねぇ、貴夜くん」


「ああ。誰かが魔法を使ったに違いない。それも、強力な魔法を」


 軽快な音楽が、ぴたりとやむ。真緒たちが見つめる先に、菓子でできた大きな化けものがいた。近くにあるいろんな菓子を吸い寄せて、どんどん体にくっつけていく。そして巨大な人型になり、ついには歩き出した。それを周囲にいる秘人が腰を抜かして見上げている。


「あっ、あっち見て!」


 真緒がドラゴーランドを指差す。ドラゴーランドから、クモの子を散らしたように多くの秘人が逃げだしていた。悲鳴や逃げろと連呼する叫び声が聞こえる中、ドラゴーランドの乗りものである竜たちが、まるで意思を持った本物の竜のように、次々と自由に動き出す。


「早くここを出て、逃げるぞ!」


 貴夜が叫んだ。


 真緒たちのいる出口に押し寄せてくる秘人の波。その後方から、ズシン、ズシンとゆっくりやってくる菓子の巨人。近くにいるまがいものの竜たちが、強靭な長い尾を振り回し、壺の乗りものや近くのものを壊している。


 真緒は突然どうしてこんなことが起きたのかわからなかったが、貴夜の言うとおり、ここにいては危険だと察知し、急いで外に出た。


「こっちだ!」


 店を出てすぐに、貴夜が左に走って誘導する。


「待って!」


 真緒は、貴夜に置いていかれないように、全速力で後を追った。


 ふたりが薄い霧に包まれる細い通りを走っていると、前方から目に見えないなにかが飛んできた。見えないそれは、貴夜の頬をかすめ、真緒の揺れる髪を突き抜けた。


 驚いた真緒たちは足を止め、前方を凝視する。貴夜の頬に赤い線が現れ、はらり、と真緒の髪の毛が散った。


「この先は、危険だ」


「また、なにかいるの?」


 真緒はごくんと唾を飲んだ。体が小刻みにふるえる。


「わからない。だが、この先で誰かが風を操っているのはわかる」


「風を?」


「ああ。さっき、風の刃が俺の頬をかすった」


 そう言って、貴夜が手の甲で頬の血を拭う。真緒も自分の髪を触った。また、数本の黒い毛が落ちる。


「なにか、来る!」


「へ?」


 はっと見上げる貴夜に、真緒もつられて見上げた。


 とたん、斜め上の方から大きなヘビのような形をした水の塊が、真緒たちに襲いかかってきた。


 

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