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「ねぇ、貴夜くん」
「ああ。誰かが魔法を使ったに違いない。それも、強力な魔法を」
軽快な音楽が、ぴたりとやむ。真緒たちが見つめる先に、菓子でできた大きな化けものがいた。近くにあるいろんな菓子を吸い寄せて、どんどん体にくっつけていく。そして巨大な人型になり、ついには歩き出した。それを周囲にいる秘人が腰を抜かして見上げている。
「あっ、あっち見て!」
真緒がドラゴーランドを指差す。ドラゴーランドから、クモの子を散らしたように多くの秘人が逃げだしていた。悲鳴や逃げろと連呼する叫び声が聞こえる中、ドラゴーランドの乗りものである竜たちが、まるで意思を持った本物の竜のように、次々と自由に動き出す。
「早くここを出て、逃げるぞ!」
貴夜が叫んだ。
真緒たちのいる出口に押し寄せてくる秘人の波。その後方から、ズシン、ズシンとゆっくりやってくる菓子の巨人。近くにいるまがいものの竜たちが、強靭な長い尾を振り回し、壺の乗りものや近くのものを壊している。
真緒は突然どうしてこんなことが起きたのかわからなかったが、貴夜の言うとおり、ここにいては危険だと察知し、急いで外に出た。
「こっちだ!」
店を出てすぐに、貴夜が左に走って誘導する。
「待って!」
真緒は、貴夜に置いていかれないように、全速力で後を追った。
ふたりが薄い霧に包まれる細い通りを走っていると、前方から目に見えないなにかが飛んできた。見えないそれは、貴夜の頬をかすめ、真緒の揺れる髪を突き抜けた。
驚いた真緒たちは足を止め、前方を凝視する。貴夜の頬に赤い線が現れ、はらり、と真緒の髪の毛が散った。
「この先は、危険だ」
「また、なにかいるの?」
真緒はごくんと唾を飲んだ。体が小刻みにふるえる。
「わからない。だが、この先で誰かが風を操っているのはわかる」
「風を?」
「ああ。さっき、風の刃が俺の頬をかすった」
そう言って、貴夜が手の甲で頬の血を拭う。真緒も自分の髪を触った。また、数本の黒い毛が落ちる。
「なにか、来る!」
「へ?」
はっと見上げる貴夜に、真緒もつられて見上げた。
とたん、斜め上の方から大きなヘビのような形をした水の塊が、真緒たちに襲いかかってきた。




