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「そこは確か、おかしなお店、甘味楽園だわね」
「うん、そうだね! 甘くておいしーい楽園っ!」
麗華と遊が笑顔で答える。
「カンミラクエン、甘くておいしいところ?」
真緒は小鳥のように首を小さく傾げた。
「そっ! お菓子と遊具があるお店なの」
「へぇ。なんだか楽しそう。行ってみたいな」
「でも、この後すぐに行くのはきつい」
麗華と真緒の会話を聞いて、貴夜が意見する。
「貴夜の言う通り、ここでご飯を食べて、向こうでまたお菓子を食べながら遊ぶっていうのは、苦しいわね。でも、これからの時間っていったら、いっぱい秘人がやってくるから、甘味楽園なんかすぐに秘人で埋まっちゃうわよ?」
「じゃあさ、じゃあさ、甘味楽園に行ったら、お菓子は後回しにして、先に遊ぼうよ! 遊ぶのも、激しく体を動かさなければ気分も悪くならないと思うし!」
「そうだな。遊のその案なら、別に構わない」
「真緒ちゃんはどう? それでも大丈夫?」
遊に尋ねられて、真緒は小さく3回うなずいた。心を躍らせ、顔をほころばす。
食事を済ませた後、真緒たちは移動した。
おかしな店、甘味楽園は、外観からして他の店と違い、とても大きく目立っていた。カップケーキのような形をした建てものに、大きなキャンディーやビスケットなどの菓子をかたどったものをいたるところにくっつけている。ミント色や蜂蜜色のまるい窓があり、板チョコレートのような扉の前では、大きなうさぎの人形が2本足で立って、出迎えてくれる。中から陽気な音楽が流れ、真緒の気分をさらに良くした。
「わぁ。やっぱりこの時間でも秘人が多いね」
「うん。子供ばっかり」
遊と真緒が広い店内を眺めて言った。
近くには、大きなチョコレートの噴水があり、何人かの子供がマシュマロのようなボールを投げて浮かばせている。他に、シャボン玉のような泡がどこからともなく流れ飛んできて、目の前ではじけると、ほのかに甘い香りがした。少し先の方に行けば、メリーゴーランドのようなものも見える。
ここにあるもののほとんどが無料で楽しめるというのだから、真緒は夢を見ているようで信じられなかった。今なら呪文なしでも空が飛べる、そんな気分だった。
「ドラゴーランドがあるよ! ねぇ、あれ乗ろうよ!」
近くにある、金色のコインの形をしたチョコの山からひとつかみして、それをポケットに入れた遊が、メリーゴーランドのようなものを指差しながら真緒たちを誘った。ぐるぐると回っているのは、木馬ではない。深緑の鱗で覆われた体に手足が生えている、竜だった。
「俺はやめとく。他のがいい」
貴夜もコインチョコを1つ取って答えた。
「えー、いいじゃん。乗ろうよ! 大きな壷も回ってるよ?」
竜の乗りものに紛れて、数は少ないが、壷もあった。壺の乗りものは、中にあるハンドルを回せばその場でもくるくる回る仕組みだ。




