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「答えに、なってない」
真緒がそう言うと、少年はうつむいてフッと軽く鼻で笑った。
「ちゃんと答えているつもりだけど? それとも、わからない?」
顔を上げた少年の目つきが鋭くなる。
「普通に会うと面白くないだろ? だから、わざわざああやってお前に気づかせ、僕を追わせたんだ。それに、お前が真緒だっていう確信がなかったし」
「だからって、どうしてあんなこと……。ううん、それより、私が聞きたいのは、あの壁の赤い文字。どうして私のことを知っているの? ただ、適当に書いたわけじゃ、ないよね?」
「ああ、お前の正体のこと? お前が秘人ではなく、せ」
「やめて!」
普段大きな声で話すこともない真緒が、力を込めて叫んだ。ドクドクドクと脈が速くなり、呼吸が荒くなる。
「あはは。そんな怖い顔するなよ」
少年は声に出して笑ったかと思うと、急に真顔で言った。
「だって、あなたが!」
「僕が、なに? ここでお前のことを話したとして、誰がそれを信じる?」
「でも」
「おばさんに、誰にも話すなって言われた? 安心していいよ。まだ、誰にも言っていないから」
真緒は衝撃を受けた。まさか、少年の口から“おばさん”という単語が出るとは、思いも寄らなかったのだ。
「どうして? なんで? あなたは、私のこと、どのくらい知っているの? どうしておばさんのことを知っているの? どこでそんな情報を……」
気が動転した真緒は、矢継ぎ早に質問した。けれども、少年は変わらず冷静でいる。
「知っているのはそのくらいだよ。なんで知ったのかは、今はまだ言えないね」
「どうして言えないの? 一体、なにを考えているの? 私は、あなたのこと、なにも知らない。なにも、わからない」
「知る必要なんて、ないよ。ただ、お前があいつと関わったこと、後悔さえしてくれれば。それが僕の……うっ」
突然、少年は右目を押さえ、苦悶の表情を浮かべたまま、その場にしゃがみ込んだ。
「ど、どうしたの? 目が、痛いの?」
いきなり苦しみ出す少年を見て、真緒はおろおろと狼狽する。
「その……大丈夫?」
中腰になって少年に触れようとした。
「触るな!」
だが、少年に叫ばれ、ぴたりと手を止める。伸ばそうとした腕を引っ込め、真緒は少年の様子を黙ってうかがった。




