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「あ、私、買わないといけないものがあるの」
真緒がおばさんに言われたことを思い出す。
「なあに?」
麗華に聞かれ、薬の黄繕液のことを話した。
「ああ、それだったら、ここから少し行ったところにあるわよ」
「じゃあ、その間、その隣の店に行ってもいいか?」
「僕も行きたい! その店って魔法文具店だよね?」
遊が尋ねると、貴夜はローブの下に着ているジャケットの内ポケットから、地図を取り出し、ああ、と返事した。
「この地図に載ってた。ここで買いたいものがある」
「それだったら、私もその向かいの仕立て屋さんに、糸と布を買いに行きたいんだけど」
「じゃあ、そこまで行って、別行動にすればいいんじゃないか?」
貴夜の提案に、3人ともうなずく。
「そうね。みんな近いし、それじゃあ私と真緒は、それぞれ買いものが済んだら文具店に行くってことにしましょ」
「うん、わかった」
真緒は麗華の言葉に同意した。それから4人で同じ方向を目指し、文具店の前で一時解散する。
真緒が薬屋に入ると、店内には薬をずらりと並べた陳列棚がいくつもあった。天井に浮かぶ光の玉は青いものが多いせいか、どこか陰気で、買いに来る客も少ない。
「おや、いらっしゃい。なにかお困りかね?」
黄繕液を探す真緒に、店の誰かが声をかけた。
姿が見えないので、真緒はその声のする方へと進む。真緒より背の低い老婆が、カウンターからひょっこりと顔を覗かせていた。ねこのような目に、大きな鉤鼻。灰色の頭には、先の折れ曲がった黒の三角帽が乗っかっていて、きらきらした金のモールが巻きつけられている。
「あ、あの、黄繕液っていう薬を探しているんです」
真緒がそう言うと、老婆はついといで、と言って案内をする。
「これがそうだよ」
棚から1つの箱を取り、真緒に見せた。箱には縦書きで黄繕液と書かれている。
「ありがとうございます。じゃあ、これ、2つください」
真緒はお金を払って受け取り、薬屋を後にしようとした。が、その時、急に真緒の視界に、ある言葉が映った。たちまち真緒の顔色が悪くなる。
“オマエノヒミツヲシッテイル”
白い壁に、次々と浮かぶ赤い文字。
“オマエノショウタイハ――”
まるで、真緒に宛てて書かれたような言葉だった。




