2
「ハイド魔法学園前、ハイド魔法学園前」
バスの運転手の低い声が車内に響いた。
真緒がバスから降りると、すでに貴夜と遊が待っていた。
「お待たせ。もしかして、だいぶ待ってた?」
「ううん。今来たところだから、そんなに待ってないよ」
と、遊。その隣にいる貴夜も小さくうなずいた。
「本当? それならいいんだけど……。あれ? 麗華ちゃんは?」
ふと、真緒は麗華がいないことに気がついた。あたりを見回してみても、どこにもいない。
「ここに来る前、ニーニから緊急の手紙が来たんだ。急用ができたから、直接霧雨通りに行くって。だから向こうで会えると思う。そろそろ僕たちも行こ。霧雨通り行きのバスが来る頃だから」
真緒たちが乗るバスは、ここから少し離れたところに止まるらしい。遊と貴夜がその場所を知っていたので、真緒はふたりについていく形で一緒に向かった。
霧雨通り行きのバスに揺られて1時間。降り立ったそこは、真緒の住む家の近くにある大通りと同じくらい、不気味で幻想的な場所だった。暗闇の中、あたり一面に白い霧がうっすらとかかっている。大通り沿いに、赤と黄色の炎を交互に閉じ込めた街灯と、いびつな形をした店が並ぶ。光の玉と人魂の姿はなかった。
「あ、雨?」
真緒は手を前に差し出し、見上げた。空から、細かい雨が真緒の顔や手に降りかかる。
「これくらいなら、大丈夫そうだな」
「うん、まだ霧も雨もひどくない。今のうちに行こう」
貴夜と遊が歩きはじめた。
「ま、待って。ねぇ、どこに行くの?」
レインコートを出すべきか迷っていた真緒は遅れて、ふたりを呼び止める。けれども、貴夜は先を行く。
「とりあえず、本屋に行こ。ニーニがもう来てるかもしれない。真緒ちゃん、はぐれないように僕たちについて来て」
振り返って立ち止まった遊が、真緒の手首を軽くつかんで、貴夜のところまで小走りする。真緒もつられて小走りした。視界が白い霧によってかすむ。ここで迷子になったら大変だと真緒は思った。
『夢幻書店』
大きな店の、大きな木製扉の上に、そう書かれた看板が掛けられていた。四角い窓からは、光がもれている。真緒が覗くと、中では秘人が本に囲まれて行き来していた。
「入るぞ」
貴夜が、真緒と遊に声をかけて中に入る。真緒たちも中に入った。
「わっ? ななな、なに?」
真緒が入ったとたん、ゴォッと凄まじい音とともに、紫の炎が真緒の上空を走った。




