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しばらくして、諸岸導士の話が終わると、真緒たちは地上に出た。
「はぁ。やっとオリエンテーションも終わったわね」
麗華が両手を組んで、夜空に向かってうんと腕を伸ばす。
「そうだよ。次から授業がはじまるよ! あー楽しみっ! どんなこと、教えてくれるんだろう?」
遊はスキップしながら、真緒たちの前を行く。ローブから出たふさふさの茶色い尻尾が、左右に大きく揺れていた。
「私は、呪術か占術が楽しみだわね」
麗華がそう言うと、貴夜もうなずく。
「そうだな。それ以外は特に興味もないし」
「僕も早く呪術習いたい!」
振り向いた遊が、今度は後ろ向きで歩き、途中で立ち止まった。
「出でよ! 大きなチキン!」
右手の人差し指を立て、くるっと手首を回す。しかし、もちろん、なにも起こらない。その場に凍てつくような空気だけが流れた。
「そんな呪文、呪術にあるわけないじゃない。どちらかというと、それは呼霊術に近いわよ。ま、そんな呪文でチキンが出てきたら、お月様もびっくりだけどね」
麗華が肩をすくめ、両手を両頬の横で広げてみせた。わざとらしい驚きのしぐさに、遊はむぅっとして頬を膨らます。
「バスが来てる。先に行くぞ」
ふたりの間を、貴夜が無表情のまま通り過ぎる。待ってよ、と言って、遊と麗華もバスに向かった。
そんな彼らを黙って見ていた真緒は、ひとり取り残された気分だった。
「真緒も早く!」
麗華に呼ばれ、はっと我に返る。
「うん!」
小さな笑みを浮かべ、3人のもとへと走った。そして、明日は今日より楽しくなりますようにと願った。
濃紫の空に、ひとつの小さな星がきらめく。学園の木々は、静かにバスを見送った。




