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真緒たちは、諸岸導士と共に筑羽導士の案内で地上に出て、そこで食事をすることになった。呪術シャドウ学園もハイド魔法学園と同じく、地上は大きな木々がグラウンドを取り囲み、その中心に石像がある。石像は杖を持っていたが、ハイド魔法学園とは違う男性の像だった。
「眠れる木々よ、目を覚ませ。今宵、この者たちに、食事する場を与えよ」
筑羽導士が杖を掲げて唱えた。全ての木々が反応し、ざわざわと葉を揺らしながら動きはじめた。大きな木の幹が曲がり、するすると枝が伸び、広いグラウンド上をはう。そしてそれらは複雑に絡み合い、たちまち大きなテーブルといすがいくつも出来上がった。
その完成図に、真緒は声をのんだ。
「今から弁当を配る。受け取った者は、空いているところに座って食べるように」
諸岸導士が見習いたちに弁当を渡した。真緒も受け取って、遊たちと食べはじめる。四角い弁当箱の中には、こまぜと呼ばれる米に似たものと、野菜や肉などの多彩なおかずが入っていた。
「ねぇ、明日行くところってどんなところなの?」
ふと、明日のことが気になった真緒は、隣にいる麗華に質問した。
「明日行くところ? ああ、霧雨通りのこと? あそこは、そうだわねぇ、一言で言うと、買いものすると楽しいところよ。いろんなお店があって、安くって、子供から大人まで好きそうなものが、たーくさんっ!」
「へぇ。買いものかぁ」
「なあに? 浮かない顔して。 買いものが好きじゃないとか?」
「ううん。買いものは、好きだよ。だけど」
真緒は視線を落とした。おばけのポシェットが真緒の目に映る。
「だけど?」
「その……貧乏だから、お金持ってなくて」
「そうなの? でも、そんなに気にすることないわよ。ただで食べられるお菓子があるし、見るだけでも楽しむことができると思うから」
「うん。そうだといいんだけど」
真緒が暗い表情をしていると、向かいに座る遊がそんな真緒に気づき、声をかけた。
「真緒ちゃん、どうしたの?」
「あ、えっと」
「明日の話。霧雨通りってどんなところかって、真緒が私に聞いてきたの」
なかなか話さない真緒に代わって、麗華が遊に説明した。
「そ、そうなの。霧雨通りって行ったことがないから、楽しみでもあるんだけど、不安もあって、それで、麗華ちゃんに」
真緒は小さく2度うなずき、再び口を開いた。けれども語調がだんだん弱くなる。
「でも、お金がなくて……あまり買いものはできないから。それでも楽しめたらいいんだけどなって、そう思って……その、なんだかごめんなさい」
真緒が自嘲的な笑みを浮かべてうつむくと、遊は明るい声で大丈夫だよと言った。




