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「あ、あれ?」
真緒は不思議に思って目を開く。ちょうどトンネルに入ったところだった。
「ねぇ、麗華ちゃん。坂、下りなかったよね?」
「今日はハイドじゃなく、違うところに行くからだわ」
「あ、そっか。そうだよね」
麗華の言葉に、真緒は納得し、胸をなで下ろした。今までどこに行くにしても、ハイド魔法学園前からの下り坂は付きものだったが、それはどの行き先も学園内だったからだ。今から行くところは学園外である。真緒はその実感が湧いてきた。
真っ暗なトンネルは長く、まっすぐ突き進むと、大きな上り坂があり、その先にかすかな光が見えた。しかし、箱列車の光の軌道が見えず、そこで終わっている。
「へ? もしかして……やだ、怖い」
真緒は嫌な予感がして、バーにいつも以上の力で必死にしがみつく。その予感は見事にあたった。
真緒たちを乗せた箱列車は、トンネルから出た瞬間、急降下する。箱列車に乗った何人かが悲鳴を上げた。
「真緒、もう大丈夫だわよ」
麗華の言葉に、真緒はそっと目を開く。前方に、光の軌道が3つに分かれているのが見えた。相変わらず周囲は暗かったが、上の方は光の玉で明るくなっている。
「もう、下り坂、ないよね?」
「さあ、それはどうだか。でも、坂があった方が、面白いじゃない」
ふふっと麗華が笑う。本当に楽しんでいるようだった。
箱列車は交差点まで進むと、そこで止まり、左に方向転換して進みはじめた。
数十分後。ハイド魔法学園に似た場所に到着した。無数の大きな光の玉の下で、さんさんと光を浴びた大きな塔や青々と茂る木々がある。大きなプラットホームには、呪術シャドウ学園前と書かれた看板が、天井からぶら下がっていた。
「ハイド魔法学園の皆様、呪術シャドウ学園にようこそいらっしゃいました」
駅員が三角の旗を振って出迎えてくれる。旗に描かれていたのは、シャドウ学園のシンボルでもあるコウモリと王冠の絵だった。
真緒たちが箱列車から降りると、そこへローブを着たひとりの男性がやってきた。栗色の髪に、目鼻立ちがはっきりとした顔で、茶色い瞳をしている。
「久しぶりですね、諸岸導士。またお会いできて嬉しい。ここへ、よく来てくださいました」
「こちらこそ、筑羽導士に再会できて、欣喜雀躍でありますぞ」
筑羽導士と呼ばれたその男性と諸岸導士は、力強い握手を交わした。
「次の学園対抗試合が楽しみですな」
「そうですね。次は来年でしたか。待ち遠しいですね。もしかして、その子たちが、その代表の?」
「いや、我が受け持つAの梅クラスなのだ。そなたの期待にそえず、申し訳ない」
「ああ、そうでしたか。確かにそう言われてみれば、皆、若すぎる。私の早とちりでしたね」
筑羽導士が苦笑した。




