9
「諸君、見習い証は持ってきているな? これは、己の証明だけでなく、箱列車で学園都市を行き来する際にも必要となる。数年前から学園内でも使うようになったから、次の授業開始日からこれがないと、箱列車に乗れないぞ! もし忘れたら、臨時発行しなければならない。今日忘れた者はいるか?」
真緒たち梅クラスは、諸岸導士に連れられて、ハイド学園前に来ていた。導士の話を聞いた真緒たちは、それぞれ自分の見習い証を持っているか確認する。見習い証は、入儀式の誓いの時に使用した、赤褐色の薄い金属でできたカードだった。入儀式の時はなにも描かれていなかったが、今は名前などの文字や校章が彫られていて、赤と黒の模様がカードの縁に描かれている。
「忘れた者はいないな? それでは、行くとしようぞ!」
導士が9番乗り場に向かう。遊と麗華たちが急いでその後ろにピッタリとつく。真緒も、走ってその後についた。駅員に見習い証の提示を求められ、真緒たちはそれぞれ自分の見習い証カードを見せる。
「どうしてそんなに急いでるの?」
真緒は遊に尋ねた。
「僕について来て!」
遊は笑顔で言い、真緒の手を引いて走りだす。その先は、箱列車の前方だった。
「わぁ! やった、やった! いっちばん前を取ったぁ!」
箱列車の先頭の、それも最前列に乗り込み、遊は前に身を乗り出してはしゃぐ。
「ゆ、遊くん……。こういうわけだったんだね」
真緒も遊の隣に座った。
「ちょっと、遊! やめてよ! また駅員さんに怒られるじゃない!」
真緒の隣の、遊とは反対側に座る麗華が言った。
「おい、そこ! 1番前! 騒ぐな!」
男の駅員が真緒たちの方にやって来て、注意した。
「ほら、言ったじゃない!」と、麗華が小声で遊に話す。
「それと、きみ。帽子は脱いでくれるかな?」
「え? 私?」
麗華は赤面して駅員の方を見た。
「あ、あの、これ、私の髪の毛なんです」
恥ずかしそうにそう答えると、駅員は首を傾げたが、ああ、とすぐに理解した。
真緒は思わず笑ってしまった。けれど、今までと違って、前に箱がなく、視界が開けているので、だんだん落ち着かなくなってきた。胸がドキドキと高鳴る。
「なんだか、怖くなってきた」
真緒がバーを強く握って呟くと、麗華はそんなことないわよと否定した。前方に景色が広がってよく見えると思うから楽しいわよと、ニコニコ笑顔だ。
「では、発車しまーす!」
駅員が大きな声で言った。プルルルルっと発車音が鳴り響く。箱列車がガタガタと動き出した。
真緒は、すぐにやってくる下り坂に備えて、ぎゅっと目を閉じた。いつも、下り坂を滑る時の、体がふわっと軽くなる感じが嫌だったのだ。それは、おばさんと買いものをしに、ほうきに乗った時の怖い感覚と似ているからかもしれない。だが、箱列車は光の軌道に乗って下り坂を滑るのではなく、右に曲がった。待ち構えていたのは、真っ暗なトンネルだった。




