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真緒は白のリボンを入儀式の日に見たことがあったので、黒のとんがり帽子の方を選んだ。すると、麗華が手鏡を持ちながら、頭上にある帽子をデコレーションしていく。薄紫のレースやリボン、金色のブローチなど、麗華が触れたところにそれらは現れる。慣れた手つきだった。
「それも全部、髪の毛なの?」
「ええ、もちろん」
「触ってみても、いい?」
真緒の問いに、麗華がいいわよと笑顔で答えたので、真緒は慎重に帽子を触ってみた。硬い生地でできていて、金色のブローチの飾りなどは金属でできているようだった。
「す、すごい。本物みたい」
「そりゃあ、90パーセント本物だもの」
「え? そうなの? すごい!」
「最近やっと、髪質も変えられるようになったの! と言っても、ある程度のものまでだけどね。でも、苦労したんだから」
麗華が誇らしげにフフンッと鼻を鳴らし、帽子のつばを持って向きを確認する。真緒はそんな麗華を見て感心していた。
「でも、いったん体から離れると、数秒しかもたないのよね」
「それってつまり、髪の毛に戻ってしまうってこと?」
「そうなのよ。それが悩みだわね」
麗華は小さくため息をつき、ふと思い出したように真緒の方を見た。
「そういえば、真緒の能力ってなんなの?」
「へ?」
「真緒の先天能力よ」
麗華に尋ねられ、真緒は面食らった。先天能力のことを聞かれるとは思ってもみなかったので、すぐには答えられなかった。まさか自分にはないとは打ち明けられない。
「えっと、先天能力は……えーっと……」
真緒がどう答えようか悩んでいると、麗華は疑わしげに目を細めた。
「なに? 秘人に言えないような能力なの?」
「ううん! そういうわけじゃないんだけどね、えっと、その……」
近くにいる貴夜と遊も、気になって真緒の方を見る。余計に真緒は追い詰められた気がした。
「その、たいした能力じゃないから。だから、そのうち、わかると思う」
真緒が麗華と同じように、おばさんに能力の質問をしたことがある。その時言ったおばさんの言葉を思い出し、苦笑いを浮かべた真緒は、おばさんの真似をしてそう答えた。
「だったら、教えてくれたっていいじゃない。もったいぶっちゃって、もう……。ま、いいわ。お楽しみってことね」
麗華がすんなり諦めてくれたので、真緒はほっと一安心した。けれども、またいつ聞かれるかわからない。対策を練らなければ、と真緒は思った。




