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「秘人の能力を真似るって……」
真緒は鳥肌が立った。ひょっとすると、魔獣変化より、とんでもない能力かもしれない。そう思った。
「この前言っていた魔獣変化の子がいるだろう? もし能力模写の力を持っていたなら、その子と同じように、魔獣に変身することができるのさ。他の能力もそう。つまり、いろんな秘人のいろんな能力を、一時的ではあるが、手に入れることができる。それを利用して、悪さをする奴が昔多かった」
「そんな……」
真緒は思わずスプーンを強く握りしめた。
「だから、能力模写の力を持つ者は、学校や仕事場では必ず公表しなければならない。そういう決まりができたのさ」
「そう、だったんですか。だから、あの時……」
「でも、悪いことばかりじゃあないよ? その能力模写を持つ者は、そっくりそのまま他人の能力を再現するだけでなく、その意図することまでわかっちまうんだ。だから、悪いことのために能力を使っている奴らを見抜くことができる」
「例えば?」
「例えば……そうだねぇ。透視能力を持っている者がいるとするだろう? 透視能力はわかるね?」
「はい。例えば、ふたをした箱の中になにが入っているのか、開けてみなくてもわかるっていう、そんな能力ですよね?」
「ああ、そうさ。もし透視能力を持った奴が、強盗をしようとする。あらかじめ、そいつが下調べとして金庫にお金がどれだけ入っているか、客のふりでもして見に行くとするだろう? けれども、能力模写の者がそこにいたとする。そして、そこで能力模写の力を使ったらどうだろう? その強盗をしようとしている奴が、透視して下調べをしにきたことがわかる。未然に強盗を防ぐことができるってもんさ。まあ、透視で見抜かれるような金庫が、今の世の中どこを探しても見つからないだろうがね」
真緒がいまいち理解できていないような素振りを見せると、おばさんは違う例を挙げた。
「ああ、コンテストがあった! ほとんどのコンテストでは、審査員の中に能力模写の者が必ずと言っていいほど、いる」
「コンテストの審査員に?」
「そうさ。この前、肉体美コンテストがあったんだが、そのコンテストの参加者に、肉体変形できる先天能力の持ち主がいて、あらかじめその能力を使って、自分の肉体を良いように変えていたんだ。それを能力模写の審査員が見抜いて、その肉体変形の奴はあえなく失格に終わったんだ」
「へー。能力を真似るだけじゃなく、その時の考えていることがわかったり、そんなことが見抜けたりするんですね! 能力模写ってすごい!」
「そう思う者もいれば、おそれる者もいる。いろんな見方があるのさ。先天能力っていうのは、良くも悪くも使えて、いろいろあるもんだからね」
「そうなんですね。ちなみに、おばさんはどんな能力を持っているんですか?」
「私かい? 私は」
と言いかけて、おばさんはそこで言うのをやめてしまった。その代わり、口元に小さな笑みを浮かべる。
「どんな能力なんですか?」
真緒が気になって再度尋ねると、おばさんはいたずらにも、いずれわかるさとだけ答えた。




