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「では、はじめ!」
導士の合図で、真っ先に駆けだしたのは遊だった。遊は、近くにいたちょうちんおばけを捕まえようとした。が、捕まえようと両手を伸ばしたとたん、ちょうちんおばけはすぐに、うさぎのようにぴょんと跳ねて逃げてしまった。
「おい、今の見たか?」
「うん、ちょうちんが跳ねた!」
「意外と難しいのかも」
新見習いたちがひそひそと話していると、早速誰かが菅原導士の前にちょうちんおばけを見せにきていた。
「これで、いいのか?」
一番先に捕まえたのは、貴夜だった。ちょうちんおばけの頭の上に付いている、まるいわっかの取っ手部分をつかみ、腕を伸ばして導士に突きだしている。
「早いですね。もちろん合格ですよ。名前を教えてくれませんか?」
「藤崎貴夜です」
貴夜が相変わらずのしゃがれた声で答えると、菅原導士は風邪かと心配した。が、地声だとわかると謝って、紙に藤崎貴夜の欄を見つけてチェックを入れた。
「あの……」
導士が振り向くと、そこにもうひとりの見習いが立っていた。包帯をぐるぐるに巻いた少女だった。その少女の手にも、ちょうちんおばけがぶら下がっている。
「あなたも早いですね。名前は?」
「雪星羅です」
少女が名乗った。
それから1時間後。真緒は何度か捕まえようとしたが、ことごとく失敗する。はぁ、とため息をついてあたりを見回すと、クラスの3分の1ほどが捕まえ終わっている。遊もちょうちんおばけを捕まえて導士に見せに行くところだった。
真緒はどうすれば捕まえられるのだろうと悩んだ。思っていた以上に体を動かし、汗が出てくる。ちょうちんおばけを逃がす遊のところに行き、アドバイスを求めた。
「遊くん、すごいね。私、どうすれば捕まえられるのかわかんないよ。なにかコツとかあればいいんだけど」
「コツかあ。うーん……僕の場合、わーっと追いかけて、バババッと掴みかかって、やっと取れたって感じだから。数をこなせばいけるんじゃないかなぁ」
「わーっと追いかけて、ババッと……や、やっぱり数かな。ありがと、遊くん」
遊の説明に、真緒は自分なりのやり方を見つけた方が良さそうだと思った。
「今日はこのへんでそろそろ終わりたいと思います。今捕まえた秘人は速やかに私のところまで来てください」
2時前になり、導士が部屋にいる見習いたちに声をかける。真緒は捕まえるのをやめた。
「真緒、捕まえた?」
麗華が尋ねると、真緒は首を横に小さく振った。
「ううん、ダメ。麗華ちゃんは?」
「私も」
ふたりは同時にため息をついた。




