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見ると、黒いローブをまとった者が2、3人、じゅうたんに乗って空を飛び、真緒たちに向かって手を振っている。少しして、じゅうたんの1番前に座る者が巻物のようなものを横に広げた。
『ハイド魔法学園へようこそ! 新見習い大歓迎! クラブはぜひ行事クラブへ!』
そう書かれた紙をなびかせながら、その者は箱列車に近づき、真緒たち新見習いに声をかけた。白い陶磁器のようなすべすべの肌にミントグリーンの瞳、金色の長髪を後ろで1本に束ね、一見すると女性のようだった。
「やあ、やあ、やあ! 新見習いたち、ハイド魔法学園へようこそ! 僕たちはDクラスさっ! あ、ちなみに僕はラーエン! よくレディと間違えられるけど、正真正銘の男だから。それから……」
その金髪の少年が後ろを振り返った。後ろには、黒髪の精悍な顔つきをした少年がいて、片手をこめかみあたりにあて、そのまま斜め上に伸ばして挨拶した。
「俺は悠馬! よろしくな!」
「私は楓! 皆、行事クラブに入ってね!」
黒髪の少年の横から、緑の髪をした少女もひょっこり顔を出して挨拶する。3人とも、真緒たちより3、4歳年上だった。
「では、素敵な儀式を!」
3人を乗せたじゅうたんが遠ざかっていき、広げた紙が色鮮やかな花びらとなって散っていく。新見習いたちが歓声を上げると、シャボン玉が前方から流れ飛んできて、真上で花火が上がった。
「学園生活、楽しみだね」
心がウキウキした真緒は、笑顔で貴夜に言った。
「あ、ああ……」
いきなり話しかけられた貴夜がうなずく。けれども、あまり楽しい雰囲気ではなかった。そのことに、真緒は気づかなかった。
しばらくして、箱列車は宮殿のような建てものの前の停車場で止まった。
「皆、バーを上げて、手前の秘人から順番に降りて!」
停車場にいる駅員の男性が叫んだ。新見習いたち全員を無事に降ろし、儀式場への道を簡単に教える。
「ここの階段を下りて、右に曲がってまっすぐ行けば儀式場だ。後は近くにいる導士に聞いてほしい」
真緒たちは言われるままに動いた。宮殿のような建てものは儀式場になっていて、豪奢な装飾が施され、金や銀色に光り輝いている。その出入り口では、先ほど真緒たちを案内した坊主頭の男性がいた。
「諸君、いよいよ入儀式だ。我についてきたまえ」
そう言ってさっそうと歩く坊主頭の男性にならい、皆も早足でついていった。
幅の広い通路の両端には、大きな石柱が等間隔で並んでいる。床は真っ白なタイルで埋め尽くされ、歩くと軽やかな音が響く。一言もおしゃべりが許されないような、厳かな空気の中をずっと奥まで行くと、そこに大きな金色の扉があった。その中心には、龍が輪になったようなドアノッカーが2つ付いていて、坊主頭の男性はそれをつかんでノックした。
金色の扉が、音もなく内側に開いていく。中は真っ暗だった。
「ようこそ……愛すべき、新たな見習いたち」
真緒たち全員が中に入ると、扉は勝手に閉まり、低い声がどこからか聞こえてきた。




