4
「誰からそんな話を?」
「私のお姉ちゃんが、ここのHクラスなの。だから、聞いたの。ラッフィは、4年前までここの駅で働いていた秘人の名前で、皆から親しまれていたって。でも、私のお姉ちゃんがAクラスのとき、死んじゃったって……。ラッフィさんはそのときペリカンを飼ってたって聞いたけど……もしかして、あなたがそのときのペリカン?」
少女の話をうつむいて聞いていたペリカンのラッフィは、帽子を下げて目深にかぶった。しばらくして、ラッフィの大きなくちばしが開いた。
「隠しても仕方ないネッ! そう、ラッフィはおいらをかわいがってくれた秘人の名前、というよりニックネーム。おいらはその秘人のニックネームを借りていて、今はその秘人の代わりに働いてル。と言っても、おいらはこの台座から離れることはできないけどネッ! って、そんなこと話してる間に時間がなくなってく! さっ、さっ、皆、5番乗り場に急いで! もうすぐしたら、発車すルッ!」
ペリカンのラッフィが羽を広げてバタバタするので、皆は慌てて5番乗り場へ急いだ。
真緒は走っている途中、ラッフィのことが気になり、ちらりと後ろを向いた。遠くなった台座の上で、帽子を目深にかぶったままのラッフィがじっとして、真緒たちを見送っていた。
「さあ、乗って乗って! すぐに儀式場行きが発車するよ! 乗り遅れないように、でもけがのないように、落ち着いて乗って!」
5番乗り場にひとりの女性が立っている。ラッフィと同じ紺色の帽子に、紺色の上着とズボンの制服を着ている駅員だった。近くに、腰くらいの高さの鉄でできたブースがあり、そのブースの台の上には赤くまるいスイッチがある。
「奥から順に詰めて座って!」
真緒たちが箱列車に乗ると、その駅員の女性が言った。
箱列車は1つの大きな鉄の箱に4人がけのいすが3列ある乗りもので、それが10個並んでいる。奥から遊、麗華、貴夜と続き、真緒が座った。
「わぁ! 僕たち、この箱の最前列だよ! 箱は、前から6番目みたいだけど」
遊が立ち上がって騒いだ。鉄の箱の横には白い字で6と大きく書かれている。
「そこ、立ち上がらない! 騒がないで!」
駅員に注意され、遊はしゅんとなって腰を下ろした。
「箱に座ったら、絶対に立ち上がったり暴れたりしないように。危険です。横1列座ったら、前にあるバーを手前に下ろして」
駅員に言われた通りに真緒たちが1本の長いバーを下ろすと、ちょうどお腹のあたりに下りて、ガチッと固定された。それを駅員が確かめる。安全だとわかると、後ろへ後ろへと全員の席が安全かどうか確認していく。確認し終わったところで、駅員が赤いスイッチの前まで戻った。
「それでは、出発しまーす! 皆、行ってらっしゃーい!」
駅員が赤いスイッチをポチッと押すと、プルルルルッと大きな音が鳴り響いた。
真緒はなんだか急に怖くなって、バーを強く握りしめた。とたん、箱の乗りものが前進し、上下左右にガタガタと揺れだす。大きな音は発車の合図だった。
箱列車は駅から出ると、1本の大きな太い光の軌道に乗った。光に乗ってからはガタガタ揺れることなく、流れるように滑らかに、そして速く進む。
大きな下り坂を滑ると、真緒はぎゅっと目を閉じたが、おそるおそるまぶたを上げた。そこには真緒の見たこともないきらめく世界が広がっていた。
「わぁ! すごい!」
空中を走る箱列車よりずっと離れた上の方では、数えきれないほどの巨大な光の玉や小さな光の玉が浮かび、建てものや道を照らしている。
建てものは、塔のように先の尖った背の高いものが数多くあり、遠くには、まるみを帯びた壮美な宮殿のようなものまである。道の上には、青々とした大きな植木が何本も置かれ、大きな石造りの噴水があった。
地上の夜とは裏腹に、真昼のような明るい地下を目のあたりにした真緒は、この地下で暮らしたいと思った。
「あ、見てみて! 誰かがこっちに手を振ってるわ!」
麗華が上空を指差しながら叫んだ。




