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真緒が大きな門の前までやってくると、そこに坊主頭の男性がひとり立っていた。背が高く、白粉のような真っ白い肌で、新見習いたちと同様に黒いローブをまとっている。
その男性は、門の前に見習いたちが集まったのを確認すると、口をゆっくりと大きく動かした。
「我が愛しき、新たなる見習いたちよ。よくここに来た。魔示士であり、導士である我が前に、小クラスに分かれて列をなせ」
男性が両手を広げ、目を大きく見開く。橙色の瞳が輝くと同時に、男性の近くにあった3つの光の玉がふわりと宙に浮いた。
3つの光の玉は白く輝き、それぞれ松、竹、梅の文字が書かれていた。それが小クラスを意味することに気づいた真緒は、遊たちとともに、梅と書かれた光の玉の前に並んだ。
「見習いたちよ、これから式がはじまる。Aの松組から、我についてくるがいい」
坊主頭の男性は、およそ100人の新見習いの前で声を張り上げた。そしてローブの裾をひるがえし、さっそうと歩く。その後に松組の光の玉と見習いたちが続き、竹組が続く。真緒たち梅組は1番最後だった。
門がひとりでに外側へ開き、真緒たちを学園の中に招き入れる。たくさん葉のついた木々がざわざわとより一層揺れ、それを知らせた。
真緒が砂利の上を歩いていると、異様な気配がした。学園の敷地内に入ってから、騒ぐ木々以外になにも見当たらない。校舎らしき建てものもなければ、秘人も動物もいないのだ。
だだっ広い砂利の真ん中に、大きな石像がぽつんとある。杖を頭上高く掲げる男の像だった。坊主頭の男性がその前に来ると、見習いたちを3列に並ばせた。
「ときは満ちた。ここでその胸に刻むがいい。この素晴らしき夜を! ハイドの見習いとなる喜びを!」
石像を背にして、その男性は吠えるように叫び、口端をつりあげる。両手を胸の前で交差させ、天を仰いだ。
とたん、大きな石像が地面をこすり、低い音を立てながらゆっくりと後ろへ動いた。
「あれ? どこ行ったんだ?」
見習いたちが急に騒ぎだした。さっきまで皆の前にいた坊主頭の男性が、突然消えてしまったのだ。
「あ! 見て!」
誰かが叫んだ。
見習いたちの前に浮かんだ3つの光の玉が点滅しだし、松組の光の玉が石像の前まで行く。そのとき、石像の元の位置に、下りる階段があったことを照らし示した。
「階段がある! きっと、この下だよ!」
チカチカと点滅していた松組の光の玉が、再び点灯した。Aの松組の見習いたちは、それが下に行けという合図だとわかり、1列になって下りていく。
松組がいなくなると、竹組の光の玉が次に下りる見習いたちを誘導する。そして竹組がいなくなると、梅組の光の玉も階段上のところで点灯し、真緒たちの行く先を照らした。
ジグザグになった長い階段を下りていくと、なにやらガタゴトと鈍い音が近づいてくる。
「ねえ、麗華ちゃん。この音、なんの音?」
気になった真緒は、前にいる麗華に質問した。
「さあ? なにかしら? ねえ、遊はわかる?」
麗華の問いに、その前を行く遊も首を傾げた。
「なにかなぁ? 貴夜は?」
遊が、前にいる貴夜を突っつく。
「なにが?」
「だから、この音だよぅ。なんの音かなって後ろのふたりが言ってる」




