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闇のペンタクル  作者: 侑佐
迎えのバス
32/105

18

 緑の霧がだんだん晴れていく。真緒の人形より、ひと回りもふた回りも大きな怪物がそこに現れた。ぶたのような顔をしていて、赤い目をぎらつかせ、口から大きな牙が2本出ている。手足は太く、爪も鋭い。


「呪縛の青、殴打の茶、敵を滅せよ!」


 遊が呪文を唱えると、遊の人形は杖を高々に持ち上げた。


 すると、ぶたのモンスターの体の周りに青い光の輪が現れ、モンスターを締めつけた。そしてモンスターが身動きとれないでいると、頭上に大きな石が現れて落下し、それが見事に直撃する。


 モンスターは痛さに悲鳴を上げ、頭をぶるぶると左右に振った。


「火炎の刃、十字斬り」


 次に貴夜が必殺技を唱えるが、人形はぴくりともしない。


「……敵の番か」


 貴夜が呟いた。


 モンスターは自分を締めつけていた輪を力ずくで外し、麗華の人形の前まで進んだ。


「やめて! 私のところに来ないでよ」


 小さく叫ぶ麗華の願いもむなしく、モンスターが麗華の人形にパンチをくらわした。麗華の人形がぐらりとふらつく。


「あ、真緒。言い忘れてた! 敵の攻撃を2回受けると自分の人形は死んでしまって戦えなくなるの。だから、攻撃を受けたときは次のターンで回復することを勧めるわ」


 真緒はテーブルの上で繰り広げる戦いに夢中だったが、麗華のアドバイスをしっかりと聞いた。おかげで次に真緒の人形が攻撃されたときには、すぐに回復する呪文を唱えて回復させた。


 だが、人形とはいえ、自分が攻撃を受けるのを見ているのは痛々しい。そう思った真緒は、自分の体に傷やあざがないか、こそっと確認した。


「ねぇ、これって、攻撃を受けても私自身は大丈夫だよね?」


 真緒の質問に、麗華が当たり前のように答えた。


「大丈夫よ? だって、ゲームなんだから」


「そっか。そうだよね」


 真緒は頬をぽりぽりと掻いてうつむいた。安心したと同時に気恥ずかしくなる。


 数分後、ゲームはいよいよ終盤を迎えた。


 遊の必殺技でモンスターの体がぐらぐらと揺れる。けれども、倒れずに持ちこたえた。それを悔しそうに遊が叫ぶと、次の瞬間には貴夜の人形がモンスターを倒し、勝利の紙吹雪がテーブル上で舞った。


「はぁー。負けちゃった!」


 ゲームが終わって、遊はため息混じりに言った。


「遊くん、惜しかったね。初めてしたけど、楽しかった。ありがとう」


 真緒がほほ笑むと、遊もにっこりと笑った。


「そうだね! またゲームしよ!」


 テーブルに散った紙吹雪はモンスターと共に消え、人形たちが元の茶色い人形に戻っていく。その光景を見つめながら、真緒は夢でも見ているような気持ちで余韻に浸っていた。だが、麗華がテーブルの上に転がる人形をカップに入れ、いすに取り付けられたゴミ袋に捨ててしまうと、急にもの悲しい気分になった。


「そのゲーム、捨てるの?」


「ええ。モンスターパウダーがなくなれば、遊べないもの。だから使い捨てゲーム」


 麗華は肩をすくめて苦々しく笑った。


 

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