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「やったぁ! 真緒ちゃんも梅組なんだね! 座って座って!」
遊は小さくガッツポーズをして自分の席にすとんっと腰を下ろした。遊の隣の少年がじっと真緒を見たが、ふぃっと窓の方にそらす。
本当に座っていいのか戸惑った真緒だが、お言葉に甘えて座らせてもらうことにした。
「あ、私は新荷麗華。麗華って呼んで」
真緒の隣の少女が思い出したように自己紹介し、にこっと笑って手を差し出してきた。細い指先に、薄いぶどう色をした爪が形良い。
「えっと、私は真緒。宮本真緒」
真緒も口角を上げ、麗華の手を優しく握った。
「あ、バラが取れかかってる」
ふと、麗華が、フードを脱いだ真緒の頭に手を伸ばした。
「フードをかぶるとぐしゃぐしゃになるから、式がはじまる前に付けた方がいいわよ?」
「ありがとう」
真緒はにっこり笑って、麗華から自分のバラを両手で受け取った。それから麗華の向かいに座る、素っ気ない態度の少年に視線をずらした。その少年の肌は青白く、あごが尖っている。切れ長の目にかかる、紺藍色の毛先は針のようにまっすぐだった。
「あ、この無愛想な奴は貴夜。いつもこんな風だから気にしないで」
挨拶しようか迷っている真緒に、麗華が紹介した。
「貴夜くん……」
真緒が呟くと、貴夜と呼ばれた少年は麗華をにらんだ。少年の濃い赤紫の瞳が鋭く光る。
「麗華、勝手に俺の名前を出すな」
そう発する貴夜の声に、真緒は少し驚いた。まるで風邪を引いたようにかすれていたからだった。
「だって、あんたが自己紹介しないんだもん」
麗華が口を尖らせる。
「これから、するところだったんだ」
「うそつき。する気なかったくせに。あ、真緒。貴夜の声は地声だからね。声変わりや風邪引きとかじゃないから」
貴夜と激しくにらみ合っていた麗華が、途中で真緒の方に向いて、笑顔でしゃべった。
「え、あ、う、うん」
真緒はあいまいにうなずいた。
「ところで、遊。あんた、さっきからなにしてんの?」
麗華が尋ねると、遊はいすの上で後ろを向いて、なにやらごそごそと袋の中をいじっている。真緒も貴夜も、なんだろうかと気になった。




