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「よろしい! それでは、ふたりはAの梅組だから、1番奥の席ね」
バスガイドが真緒と包帯の少女をステップに上がらせ、奥に進むように誘導した。
バスの中の座席は、2席と2席が通路を挟んで横に並び、それがずっと奥に続いている。真緒が進む間、席に着いている見習いたちは小声でおしゃべりしたり、窓の外を見ていた。中には、興味ありげに真緒をじろじろと見る者もいる。
視線を感じた真緒は緊張して、前を見ては時々足元を見たりと、足取りが重かった。
「ここから奥が梅組よ。空いている席に座ってね」
バスガイドがそう言って通路脇に寄ると、包帯を巻いた少女は、左の空いている席を見つけて座った。真緒も早く座ろうとしたが、近くに空いている席がない。ふと、明るい少年少女たちの声が奥から聞こえてきて、真緒が奥に進むにつれ、会話している内容がはっきりとしてきた。
「あんたたち、あまりそのチョコ食べないでよね! 結構高かったんだから」
「俺は、そんなに食ってない」
「なにそれ! まるで僕がいっぱい食べてるみたいじゃんかぁ」
「うるせぇ」
その会話がするところは、座席が向かい合っていた。窓側に、紺と藍色が混ざったような色をしたサラサラの髪の少年がいて、その隣の通路側には、真緒の見覚えのある少年がいる。
「あ……」
真緒はドキッとした。
褐色の肌に澄んだ青い瞳、ふんわりした赤い頭に三角の茶色い耳。その少年は、魔獣変化の力を持つ、遊だった。
「おい」
紺藍色の頭の少年が、立ち尽くす真緒に気づき、遊の肩に手を置いて、あごで真緒の方を差す。
遊は真緒を目でとらえるなり、満面に笑みを浮かべた。
「真緒ちゃん!」
「遊くん」
遊が立ち上がって耳と尻尾をしきりに動かし、あまりにも喜びを前面に出すので、真緒は照れくさくなった。
「え? 誰? 遊の知り合い?」
遊の斜め前の、真緒に背を向ける形で座っていた少女が、振り返るようにして真緒の顔を仰ぎ見た。アメシストを散りばめたような紫の髪が胸のあたりまで伸び、目の瞳は墨のような色をしている。
目と目が合った真緒は、小さな声で挨拶した。
「う、うん、まぁ……。こっ、こんばんは」
「こんばんは。なに? 席を探してるの?」
紫の頭の少女に聞かれ、真緒は首を縦に2回振った。
「だったら、ここ空いているから座ったら? 遊とも顔なじみみたいだし」
少女が自分の隣の席をポンポンと叩く。




