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真緒はそこで自分に合うサイズを適当に選びはじめる。最初に手に取った制服は、白のブラウスに黒のジャケットと赤い大きなリボン、黒を基調とした赤のチェックのスカートだった。
「真緒、私はちょっとここを離れるから、終わったらそこのいすにかけて、待っていておくれ」
試着室に入ろうとする真緒に、おばさんが言った。ちょうど試着室の横にいすが3つ並んである。
真緒はそれを確認すると、はいとうなずいて試着することにした。
試着室は、五角形の地面に縦長の板を垂直に張り巡らせた形になっていて、黒い扉が付いている。中に入ると、大きな鏡が三面と、服を入れるかごが置かれていた。
真緒が全て試着して出てくると、おばさんはまだ戻ってきていないらしく、周囲には誰もいなかった。時計を見ると、試着室に入った時から30分は経っていた。
「遅いなぁ」
真緒はいすに座って足をバタバタ動かしていた。あのおばさんのことだからすぐに戻ってくると思っていた真緒だが、いくら待ってもなかなか来ない。さらに30分が経とうとしていた。
そばにいる店員におばさんを見かけなかったか聞こうとして、真緒が立ち上がろうとした瞬間、聞き覚えのある声が近くから聞こえてきた。
「ほら、遊! これを着てみたら? 黄色より青のレインコートの方が子供っぽく見えないし、男の子に見えるわ」
「そうかな? じゃあ着てみる!」
棒にかかっている服の上から、毛先がくるっと巻かれたふわふわの赤い頭が見えた。そしてその上には茶色い三角耳がある。
真緒は焦った。あの頭とあの高い声は、昨日出会った男の子に違いない。ここにいると、またあの男の子に会ってしまう。そう思い、真緒はその場からこそこそと離れた。
「真緒、どこに行こうとしてるんだい?」
突然、おばさんに大きな声で呼びかけられた。少し離れたところから真緒の方にやってくる。
「えっ? あ? あのー、おばさんがなかなか来ないから、ちょっとお店の人に聞いてみようと……おばさんこそ、どこに行ってたんですか?」
そう言って、真緒はおそるおそる少年の方を見た。高鳴る胸を押さえて、唾をごくりと飲む。
少年は年の離れた女性と話をしていて、真緒に気づいていないようだった。
「どうかしたのかい?」
おばさんに聞かれ、真緒は首を横に振った。
「ううん、なんでもないです!」
「そうかい? じゃあ、さっさと行くよ」
「はい、行きましょう!」
真緒が逃げるようにその場を去ろうとしたそのとき、
「あ! 真緒ちゃん? 真緒ちゃんだよね?」
背後から少年の大きな声がした。




