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真緒たちを乗せたほうきはぐんぐんと高くなり、視界が広がっていく。深紫色の空に包まれ、眼下には散らばった小さな家々の明かりが見える。あまりの高さに、真緒は意識が遠のきそうだった。
「少し高く飛びすぎたねぇ」
そう言って、おばさんがあたりを見回しながら高度を下げる。今度は下がりすぎて、足が家の屋根に届くくらいだった。
「なかなかうまくいかないもんだね」
「だ、大丈夫ですか?」
真緒が心配になって聞くと、おばさんは大丈夫と言った。
「ああ、久しぶりに飛んだから、ちょいと狂っただけさ」
「は、はあ」
「さあ、行くよ!」
おばさんのその合図でほうきは一瞬後退したかと思うと、ぎゅんっと力強く前進した。あまりの速さに、真緒はバランスを崩して落っこちそうになった。
「お、おばさん! 落ちる! 落ちるーっ!」
真緒がいくら叫んでも、おばさんの耳に届いていないのか、おばさんは右にカーブしたり左にカーブしながら、道に沿って建物の間を縫うように飛ぶ。もはや真緒の体はほうきと平行になり、手を離してしまえば一巻の終わりだった。
ここで死んでたまるか。生への強い執着心が芽生え、真緒は歯を食いしばって必死でほうきにしがみついた。
「このへんで降りよう」
速度を落とし、おばさんが言った。
真緒はほうきにぶら下がる状態でいた。手がしびれて力がなくなっていく。もうだめだと思った。
「おばさん……落ちる、助けて」
最後の力を振り絞って助けを求めると、真緒はとうとう手を離してしまった。
「アイタッ!」
草むらの中で真緒がうめいた。
「平気かい?」
おばさんが真緒を見下ろしている。
真緒は一瞬わけがわからなかったが、ほうきから落ちたことを思いだした。そして今、尻もちをついて地面に座っていることに気づく。
「はい、なんとか」
真緒が答えると、おばさんは笑いだした。
「クックックッ。あんたがどうして事故に遭いやすいのかわかったよ」
「へ?」
真緒はきょとんとした。




