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「ああ、そうだよ。あそこはこのへんと違って緑が多いし、いろんな施設などがある。学校はすべてあの区域にあるのさ。どんなところか、あんたも行けばわかるよ」
おばさんの目が輝いているのを見て、良い場所なんだと真緒は思った。
「今まではずっとここに引きこもっていれば良かったが、これからはそういうわけにもいかなくなったんだ。あんたの存在が知れた以上、これから大変になる。わかるね?」
おばさんは真緒がこくりとうなずくのを確認すると、さあ、と言って立ち上がった。
「今から、私はあんたの“おばさん”だ。あんたは私の言いつけを守って、早くここから出ていく方法を考えるんだ。いいね? 約束だよ」
「はい!」
真緒も立ち上がり、にっこりと笑った。
「言っておくけど、私は厳しいからね。あんたが今までどんな生活をしていたか知らないが、ここで暮らす限り、私に従ってもらう必要がある。それがあんたを守る、私の唯一の方法なんだ」
「は、はい……頑張ります」
真緒は自分の頬を両手でペチペチと叩いて気合を入れた。
「まず、今日から、6時から9時の間に寝てもらう。起きるのは早くても構わないが、最低18時には起きてもらう。ああ、学校がはじまったらそうはいかないね。確か学校はその時間あたりから授業がはじまっていただろうから……16時にしておこう」
「え? あ、あのっ、16時って4時ですか? 日が沈む頃の? てことは、寝るのが朝ってことですか? え、本当に……」
真緒は今まで夜に寝て朝に起きていた。しかし、おばさんは真緒と違っていつも逆の生活をしていた。そのことを知っていた真緒は、おばさんが変だと思っていたが、まさか町全体がそんな暮らしをしているとは思いもよらなかった。
「そうだよ。ここでは皆そんな暮らしさ。あんたの生活リズムは変に思われちまう」
「は、はぁ。わかりました」
これからの生活に不安を抱きつつも、真緒は少し楽しみだった。
窓から毎日変わらない景色を見て、毎日外に出られず、家にいる。ここでの生活に飽き飽きしていて、学園都市に行ける日が待ち遠しかったのだ。
薄暗い地下室の中、真緒は床にうずくまりながら、おばさんとの約束を思いだしてはまた涙があふれる。
「ご、ごめんなさい。私……私、本当に、次からは気をつけます。だから……」
ヒリヒリする頬の痛みよりも、ガンガン響く頭痛よりも、自分の不注意でおばさんを不安にさせた心の痛みの方がずっと、もっと、痛かった。
「本当にごめんなさい」
真緒はふらりと立ち上がり、目をこすりながらおばさんに謝った。




