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「今は他に聞くこともないので、我々はこのへんで失礼します。ご協力ありがとうございました」
茶色いローブの者たちが背を向けて去っていくと、おばさんは扉を閉め、鍵をかけた。それからきょろきょろとあたりを見回し、台所の方へ行って、牛乳をグラスに注ぎ、それを一気に飲み干した。
「おばさん?」
真緒が話しかけても、おばさんは無反応だった。まるで真緒がそこにいないような、空気みたいな感じだった。
「ああ、なにが必要だったのか、思いだせやしないよ」
ブツブツひとりごとを言いながら、おばさんが頭を抱えて右往左往する。
「ねえ、おばさん。さっきの秘人たちは誰だったんですか?」
おばさんに近づき、真緒は質問した。
「私、名前答えたの、良くなかったですか? それに、学校があるの知らなくて……嫌いって嘘だったんですけど。私、なにかまずいこと言ってたらって思うと……」
「あーうるさいねぇ! ちょっと黙ってておくれ! 今はそれどころじゃないのさ」
「ご、ごめんなさいっ!」
おばさんの邪魔にならないように、真緒は2階に上がった。けれども、さっきの者たちが気になって仕方がない。とにかく、おばさんと話ができるようになるまで待つことにした。
数時間後、階下からベルが鳴った。真緒はなんだろうかと気になり、階段を下りていく。すると、おばさんが小さな黄色いベルを鳴らして、真緒の方を向いて立っていた。
「いいかい? 今度から私がこのベルを鳴らしたら、すぐに下りてくるんだよ。わかったね?」
「どうして……ですか?」
「理由はどうでもいいんだよ! とにかく、このベルの音が聞こえたら、すぐに下りる。そして、それ以外はできるだけ下りてこないこと。いいね?」
「あ、あの……お風呂やトイレとかは?」
「それは別に構わないさ。だからできるだけって言ってるんだよ! ちゃんと聞いてるのかい? つまり、これが次から私の合図になる。わかったら返事は?」
「は、はいっ」
おばさんから、ただならぬなにかを感じた真緒は、そこで嫌ですとは答えられなかった。
「それと、さっきの者たちは警備隊と言って、茶色いローブをいつも着ている。この町の安全を第一に考えて行動している奴らなんだよ」
「じゃ、じゃあ、私がさっき答えたこと、その……なにか変なこととか、話してなかったですか? 大丈夫でしょうか?」
不安そうに質問する真緒に、おばさんは少し悩む素振りを見せた。
「そうだねぇ。多分、ちょっとは怪しまれたかも知れないけど、今のところは大丈夫だと思うね」
「そ、そうですか」
真緒はそれを聞いてほっと一安心した。
「問題なのは、これからなんだよ」
真緒がおばさんの顔を見ると、おばさんは真剣な目で真緒を見つめていた。




