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「いったぁ……」
身を乗りだすあまり、バランスが崩れて数段転げ落ちたのだった。
「真緒! そこでなにやってるんだい?」
痛さに顔をゆがめた真緒の目と、振り返ったおばさんの目が合った。
おばさんの顔が引きつっているのを見た真緒は、さらに顔をゆがめた。
「ご、ごめんなさい、おばさん」
申し訳なさそうに言う真緒に、おばさんは今にも舌打ちしそうだった。
「あの、あちらにいらっしゃる、黒色の短い髪の、小さな女の子は誰です?」
険しい表情をした者が、疑わしい目つきで真緒を見ながら質問した。
「あ、ああ。あの子はその、遠い親戚の子でして。私が向こうに行ったときに連れて帰ったんです」
「どうしてまた?」
最初話していた者が尋ねた。
「ええ。実はあの子の親が亡くなりまして……それで、私が仕方なく預かることにしたんです」
「そうなんですか。それはお気の毒ですね」
おばさんの話したことをメモに記入しながら、 その者が真緒を見やった。
「ねぇ、きみ。名前と年は?」
「真緒。宮本真緒です。12歳です」
真緒はおばさんの近くまで行き、小さな声で名乗った。そしてちらりとおばさんの顔色をうかがった。
「そっかぁ。じゃあ、今年から学校に通うのかな?」
「え?」
真緒はどう答えればいいのかわからず、おどおどした。
「ああ、すみません。この子ったら学校が嫌いでしてね。でもちゃんと行かせますんで」
おばさんが真緒の体を引き寄せ、肩に手を置いた。
真緒はおばさんの顔を見上げ、次に茶色いローブの者たちを見た。茶色いローブの2人組も真緒とおばさんを交互に見たのがわかった。
「真緒ちゃん、学校はたくさんあるけど、どこの学校に通うのかな?」
名前を聞いてきた男性が中腰になり、真緒の目線に合わせた。探るように見つめてくるので、真緒はできるだけ平然を装った。
「学校は、えっと……嫌いです」
「あの、大丈夫ですんで。必ず行かせますから。ハイド魔法学園に通わせようと思ってるんです」
おばさんが、適当に答える真緒に代弁して苦笑いした。
「そうですか。今どき、学校が嫌いな子って珍しいなぁ。真緒ちゃん、おばさんの言うことをちゃんと聞いて、学校に行くんだよ? ハイド学園なら、素晴らしい導士や見習いが多いって聞くから、きっと学校も楽しくなるはずだ」
その者はぽんぽんと真緒の頭を軽くなで、にこっと笑って立ち上がった。




