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「い、いきなりなによ? どうしたの?」
「中野導士も、麗華ちゃんと同じことを聞いてきたの」
「同じこと?」
「うん。どうやって貴夜くんが怪物を倒したのかって」
「で?」
「中野導士も不思議に思っていたの。まだ入儀式を済ませたばかりの新見習いが、どうやって倒したのか。それが術なら、ありえないくらいにすごいことだし、もしもその術がすごく難しい術だったら……」
「まさか! あんた、それ本気で言ってんの? 貴夜がそんな高度な術を使ったってわけ? うそよ、そんなことありえないわ!」
麗華が、いつも以上に大きな声で叫んだ。周囲の見習いたちがじろじろと真緒たちの方を見る。
「れっ、麗華ちゃん」
真緒は静かな声で、麗華の興奮を抑えようとたしなめた。
「ニーニと真緒ちゃん、今、貴夜のこと話してた?」
前に座る遊が、くるりとふたりの方を向いて、いすの上から顔を出す。さっきの笑顔は消えていて、青い瞳が日のあたらない湖のように暗い。
「貴夜、大丈夫なの?」
「遊くん……」
真緒は言葉に詰まった。代わりに、麗華が話をする。
「今、病院だと思う。さっき、真緒からその話を聞いたの。貴夜、怪物と戦って、けがをしたらしいわ」
そのとき、荒井瀬さんの声が聞こえてきた。バスが学園に到着した知らせだった。
麗華はまた後で話すからと言って、いったんそこで話を終わらせた。
教室に着くと、遊が机にかばんを置いて、急いで麗華の席まで行く。それを見た真緒も、麗華のところへ向かった。
「ねぇねぇ、さっきの話だけど」
と、遊が麗華に話しかける。
真緒たち3人は、できるだけ梅クラスの皆に聞かれないように、教室の後ろの隅っこに移動して話をした。遊には、真緒が麗華に話した内容を簡単にまとめてもう一度説明した。
「で、真緒、貴夜は一体どんな術を使ったのよ?」
「私もはっきりとは覚えていないんだけど、確かこれくらいの長方形の紙を指に挟んで、なにか呪文みたいなことを言って、それで、えっと……それを竜の怪物に貼ったら、その怪物が動かなくなったの。そしたら、貴夜くんがものすごく苦しみだして……頭痛がするって」
麗華に質問され、真緒は両手の指で長方形を作り、紙の大きさを示した。昨日のことが、つい先ほどのことのように思いだされる。
「無事だといいけど。ねぇ、紙を使う呪術って、なにかしら? もしかして……符術? でもあれは、呪術の中でも難しいし、GかDクラスにならないとできなかったわよね? あー、さっぱりだわ。真緒と遊は、なにかわからないの?」
「私もよくわからないけど、その話を中野導士に話したら、すごく驚いていた感じだったから、多分すごい術なんだと思う。もしかして、その符術なのかも」
「え、ちょっと待って! そんなこと、本当にあるわけ……でも、それがもしそうなら、どうやって貴夜はそんな術を使えたのよ? それほどのエネルギーなんて、ないはずだわ」
麗華が眉間にしわを寄せ、腕を組む。真緒もそれについてはどう答えて良いのかわからなかった。




