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「ほら、早く準備をしな。今日から授業だろう?」
「は、はいっ。急ぎます!」
真緒はすぐに2階の部屋に戻った。入儀式に着た礼服とは違う、新しい制服を着て、かばんに教本とノート、花の茎のようなペン、小瓶に入ったインクを何種類か詰め込んで、忘れものがないか確認した。時計に目をやると、時間がない。1階に下りて朝ごはんを食べることなく、小さなパンを取って家を出た。
いよいよ今日から授業がはじまる。普通ならワクワクするところだが、真緒はそれどころではなかった。
「おはようございます」
バスが来るなり、真緒が挨拶して急いで乗り込むと、バスガイドの荒井瀬さんは小さな悲鳴を上げて飛び退いた。
「み、宮本さん?」
「はい」
真緒は荒井瀬さんに呼び止められて振り返った。
「急に乗ってきて、驚いたわ。気をつけて」
「ご、ごめんなさいっ」
ぺこりと頭を下げ、再びバスの奥へと進む。すると、紫の髪の少女が真緒の方にやってきた。
「真緒!」
「麗華ちゃん!」
真緒と麗華は互いに、花が開くような満面の笑みでぎゅうっと抱きしめ合った。
「良かった! 真緒、無事だったのね!」
真緒はうん、うん、と何度もうなずいてみせた。感極まって、思わず泣きそうになる。
「真緒ちゃん」
真緒が顔を上げると、遊がいた。
「ゆ、遊くん!」
遊も変わらず、朗らかな雰囲気で真緒に笑顔を向けていた。
「ふたりとも、無事みたいで良かった」
「うん! 真緒ちゃんこそ! さ、座ろっ」
そう言って、遊は真緒と麗華が座るいすの前に座った。いつもなら、いすを向かい合わせているはずが、今日は同じ方を向いている。
「あれ? 今日はいすが……」
「うん。貴夜がね」
麗華が暗い表情で言う。
その続きを聞かなくても、真緒にはわかった。貴夜がいない。遊の席をちらりと覗き込むが、遊の隣には知らない少年がいた。




