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分裂日本  作者: 三等兵P
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01、北日本、襲来

実際の国家や人物とは一切関係ありません。



そしてシリアスではないのでその辺ご了承ください。

south side


2001年12月08日


「ド、ド、ド根性!ド根性っ!!」



こう間抜けな歌を歌いながら南日本共和国、横須賀空軍基地内を歩くのは今年で19歳の渡瀬勝軍曹。


少し若い気もしないではないが今月末に空軍航空学校を卒業する予定の立派な軍人だ。




そして21世紀初の師走に入り一週間。


世間はお歳暮セールがやっており、渡瀬も次の休暇に買って中学時代の恩師や両親に送るつもりであった。


ブオーン。



彼が空を眺めていると、自分より一つ下の学生がプロペラ練習機がフラフラと4機、編隊を組みながら空を飛んでいた。


これじゃあ、教官に頭を叩かれてるな。



「おい、渡瀬。」


「ハッ、何でしょうか少佐殿!!」


「貴様は確か戦闘機志望であったな?これから貴様に特別補習だ。付いて来い。」


「イエッサー!!」


彼は渡瀬の上官である赤磐拓真大佐。


齢38で戦闘機パイロットとして現役、湾岸戦争時にも国連軍に参加してイラク・共産同盟軍の戦闘機としのぎを削ったベテランである。


今は横須賀教育航空隊の司令であり、後身のパイロットを厳しく、しかし丁寧に指導してゆく。



「今日はファントムで空対空ミサイルの特性を勉強しよう。」


教官の赤磐大佐は格納庫へと歩きながら渡瀬へと言う。


「ハッ!」


渡瀬はその度に丸刈りの頭で敬礼するため旧日本軍という徒名が有るが、本人は一切気にしていない。








暫くして格納庫へと入るとそこには当時、赤磐拓真ここにありと共産同盟軍パイロットを恐れさせた真っ白な塗装のF-4Jファントムが、今は旧型化しているが、未だにその重厚な威圧感を発しながら最新型のF-15やF-16の中で佇んでいた。


プシュン。


炭酸飲料の気が抜けるような音を立ててコクピットが開くと、赤磐大佐が操縦席へ、渡瀬はミサイル員の席へ座る。


「こちら赤磐だ。特別訓練のため離陸許可を貰いたい。」


『こちら管制塔、赤磐大佐のファントムですね。離陸を許可します。二番滑走路から離陸してください。一番には輸送機がいますので。』


「赤磐了解。」



2人を乗せた純白のF-4Jファントムはぐんぐん加速しながら上昇してゆく。


すると、眼下には南日本の首都である東京や、その周辺にあるベッドタウン、さらには北緯37度線にある南北軍事境界線が一望することが出来るようになる。


「……………いつ、日本は再統一するんだろうな。」


ふと、渡瀬の前の操縦席で赤磐が溜め息と共に呟いた。










north side


2001年12月08日


日本社会主義民主共和国、仙台空軍基地



「…………え、南日本解放作戦?それは本当でしょうか同志杉菜少佐?」


「ああ、本当さ同志白根中尉。先程参謀本部付きの政治士官が着てな…………」


基地内の飛行隊ごとにある共用スペースにて白根緑亜中尉は自らが所属する飛行隊隊長の杉菜紫亜少佐とある作戦について会話をしていた。



「何でも数時間後には東京攻撃の主力のSu-24部隊が来るから出撃準備せよ、との話だ。お門違いもいいとこだがな。」


「はい、いくら我が第68征空戦闘機連隊第12中隊、通称『レッドタイフーン』隊とはいえ、我々は元は防空戦闘機隊ですからね。」


「だか同志中尉、君の名を高めるチャンスだ。特に君のような人間は党の宣伝に使えると判断したのだろう。だから、しっかりと働けよ。中尉が使えると判断したから俺は新米の中尉をこの名高い『レッドタイフーン』隊に引き入れた。」


そこまで杉菜少佐が喋り終えたその時、キューンというジェットエンジンの音が滑走路から響く。


「おやおや、もうお着きかと思えば、給油だけして飛んでゆくようだ。攻撃機の連中はどんなけ血が騒ぐんだよ。」


「では、我々の出撃も繰り上げと?」


「そうだな…………あ、そうそう。中尉にはまだパートナーがいなかったな。後席に座る武器管制官だ。」

「はあ…………」


「彼女はもう機体の近くで待たせてある。早く行ってやれ。後のメンツは俺が集めよう。」


白根は『彼女』という言葉にすこし違和感を覚えたが上官の命令なのでしぶしぶ一足先に愛機MiG-31が仕舞われている格納庫へと急ぐ。


彼が自らの普通の機体とは違う紅と黒の塗装の機体の前で足を止めると、


「あなたがっ、同志白根中尉どのですねっ!」


という10代後半の少女であろう声が聞こえてきた。


声のする方を見れば、黒髪をポニーテールのようにまとめて飛行服に身を包んだ小さい少女が緊張した面もちで立っていた。









south side


そのままミサイルの実射訓練と称した遊覧飛行をする赤磐大佐と渡瀬。



すると、レーダーが北からマッハ2位で南下する多数の目標を捉えた。


『管制塔より赤磐大佐へ、北から高速で南下する航空機を捉えた。すぐさまインターセプトしてください。こちらや羽田基地からも順次迎撃機を発進させます。』


「了解した、目標の現在位置は?」


『軍事境界線を突破、東京に向かっています!!』


「了解した。すぐさま迎撃する。」


無線を切ると赤磐大佐は、

「渡瀬、今から実戦訓練を始めよう。目標は北の軍用機。多分Su-24だ。戦闘機の敵じゃない。」


そう言うなり南に向けた機首を反転させ、軍事境界線のある北へと向ける。





しばらく飛んでいると、眼下に編隊をなして低空を超高速で突破しようとしているSu-24攻撃機を多数視認した。

「やってやるぜ、渡瀬!スパローミサイルだ!準備急げ!!」


「イエッサー!!」


渡瀬は兵器選択レバーを中距離ミサイルに合わせ、赤磐の旋回や降下に合わせて最初の一機にミサイル誘導用の電波を照射する。


実はもっと新しいAMRAAMという中距離ミサイルならば同時に4機までロックオン出来るが、ファントムは機体そのものが古いため搭載できない。


故に一世代前で命中までレーダーで誘導するタイプのスパローミサイルを積んでいた。




「渡瀬!奴ら、防空エリアを越えているな!!」


「イエッサー!越えております!!」


「なら撃てぇ!責任は俺が引き受ける!」


「ラジャァァァァ!!」



パシュウ!!



渡瀬が発射スイッチを押すと4発あるスパローミサイルの内、一発が白煙を噴き出し音速の4倍で飛翔を開始する。




「しっかり誘導しろ、Su-24は攻撃機だが運動性は高いぞ!」


「分かってます!」



彼は実際にスパローミサイルを発射した経験は無いが、シュミレーターでは多少の経験が有るため誘導は上手いものであった。


電波に誘導されたスパローミサイルは誤らず最後尾のSu-24に突入し、機体を四つに引き裂いた。


「やったあ!撃墜だっ!」

実戦での初撃墜に思わず興奮する渡瀬。



だが、実戦経験豊かな赤磐大佐は、


「渡瀬、早くミサイルをスパローからAAM3へと切り替えろ。まだまだ敵機は沢山いる。」


「ハッ!」


その頃、正式に日本社会主義民主共和国は南日本に宣戦布告をしていたが、実際の戦いは既に始まっていた。


渡瀬が眼下を見ると、南日本国防軍のF-15戦闘機やF-16戦闘機が東京空爆を阻止しようと必死に北日本空軍のSu-24攻撃機やTu-22M爆撃機を阻止しようと勇敢にMiG-29やSu-27戦闘機の妨害をモノともせずに空対空ミサイルを放つ。


当然、地の利もあり、地上の対空火器の支援を受けられる南日本側が有利となった。


実は南北日本の空軍の保有機数には大した差はない。

故に短時間に多数の機体が集まれる南側が有利であった。



少なくとも『あの部隊』が戦場に舞い降りるまでは…………。


その瞬間は突如やってきた。


いきなりあさっての方角から飛んできたミサイルによって南日本空軍のF-16が20機以上爆発し、東京の市街地へと墜ちていった。


その僅かな隙を衝いて生き残りのSu-24が対空ミサイル陣地を次々と破壊、形勢は一挙に北側へと傾いてしまった。


そして姿を現した下手人。

その機体は通常のグレー塗装ではなかった。


黒を基調として血管のように紅色が刻まれたデザインであった。


「ウソだろ…………『レッドタイフーン』隊じゃないか…………。」






north side



白根緑亜中尉は『レッドタイフーン』隊二番機パイロットとして杉菜少佐機を守る役目を担っていた。


『杉菜機より全機、まずは中距離ミサイルで戦闘機を叩くぞ。R-77を二本発射せよ。』


白根は隊長機の指示に従い、R-77中距離ミサイルを起動、発射命令を待つ。



『ミサイルが目標をロックししだい発射。』


杉菜少佐の発射命令はすぐに出た。



「梶原准尉、発射せよ。」

格闘戦用の短距離ミサイルと機関砲はパイロットである白根の管轄だが、中・長距離ミサイルは後席に座る兵器管制官の梶原沙希准尉のテリトリーである。


「発射っ!」


梶原准尉が釦を押すと6発の内の二発のR-77が発射された。



「R-77、目標をロック……………一機目に命中、さらに二機目にも命中しました。」


隊長の杉菜少佐機が旋回するため機体を傾けている状態でも梶原准尉は淡々とミサイルの命中報告をする。


「レーダーから敵反応が21が消滅しました………。三発はチャフにでも引っかかったんでしょう。」


梶原の呑気な分析には白根も呆れたが、


『杉菜機より白根機、これより本機は分隊行動に入る。三番機、四番機は第二小隊の援護をせよ。』


という新たな指示が出されたため杉菜機の向かう方向へと機体を向ける。


『奴がいる。先代隊長が湾岸戦争で対峙した『白きもの』だ。いくら旧式なファントムとはいえ、油断するとすぐに食われる。気を引き締めて行くぞ。』


「了解です。援護します。」



二機の深紅と黒に彩られたMiG-31は低空を進撃する赤い星印のSu-24攻撃機を付け狙う純白のF-4Jに狙いを合わせる。


『白根機は俺が外したら撃ってくれ。それまで周囲を警戒せよ。』


「了解です。」


白根中尉の操るMiG-31は単機で上昇、戦闘からだいぶ離れた高度9000で旋回しながらエースパイロット同士の一騎打ちを眺めることにした。









深紅と黒塗装のMiG-31が純白のF-4Jと格闘戦をする。


杉菜少佐の父親は1991年、湾岸戦争時に共産同盟軍のパイロットとしてイラクへ赴き、そして『白きもの』に落とされ帰らぬ人となった。




ライバルとも言うべき2人はエースパイロットの名に恥じぬ機動で旋回し、ミサイルや機関砲を放つ。



それはまるで闘犬同士が噛みつきあっている様であった。




F-4Jが短距離ミサイルを放てば、MiG-31はフレアを撒き散らして赤外線誘導システムを欺瞞する。



逆にMiG-31が短距離ミサイルを放つとF-4Jは超人的な赤磐大佐の操る機関砲でそれを撃墜する。




結局、戦闘は一通り膠着したあと正面からの前時代的な機関砲の撃ち合いとなる。



二機は最大速力でお互いに迫るとすれ違う一瞬にローリングしながら狙いすまして機関砲を一瞬だけ放つ。

現代の機関砲は毎秒百発近く弾を吐き出すため、それだけで充分なのだ。




シュン!!


相対速度マッハ5ですれ違う二機だが、ここは南日本空軍のF-4Jに天は味方をしたようだ。


杉菜少佐のMiG-31のエンジンには数発の20㎜弾の弾痕が刻まれ、漏れ出した燃料に火が点き小規模な火災を起こした。


『ぐっ…………』


だが、ふと杉菜少佐が悔しさのあまりに振り返ると、どこからかミサイルが飛翔してきてすれ違ったばかりのF-4Jに炸裂していた。


『まさか、白根中尉…………!?』


まさにその通り、白根は赤磐が接近する杉菜機に気を取られている隙にコッソリと短距離ミサイルの照準を合わせていており、杉菜の不利を悟るとそれを発射し見事にエンジンに命中させ、純白のF-4J『白きもの』を撃墜、パイロットにベイルアウトを強制していたのだ。


gdgdですいません。

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