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目覚め

転生異世界戦記物なので場合によってはグロい描写もありますがご容赦ください。なるべく幅広い人に読んでもらえるように配慮致します。

竜に乗ってみたいという方にはお勧めですよ!

それは高速道路を愛車で運転している時だった。

僕の前を走っている大きなトラックがカーブを曲がりきれずに急に横滑りをし、ガードレールにぶつかったのが見えた。

その荷台に満載していた黒い物、多分大量の鉄骨だ、がガラガラと音を立ててこちらに転がり落ちてくるという光景はフロントガラス越しにスローモーションの速度で視界に焼きついている。

ハンドルの運転をとられ急激に運動ベクトルの変換を強いられた愛車は、トラックにひきこまれるように強烈な衝撃を伴ってガードレールへと叩きつけられることを余儀なくされ。

そこで僕の記憶は途絶えている。


・・・

眠りから目覚める時に近い感覚があった。

視界が暗闇から白へと変わり、僕はゆっくりと瞼を開いた。

自分が何をしていてここがどこなのかはすぐに思い出せず、ちょっと混乱する。


(ああ、そうだ。確か田舎へ帰るために車を運転していて事故に遭ったんだ)

視力が戻ると共に断片的に記憶が甦る。今、自分は寝ているようだ。

交通事故にあったというのであればここは病院か。

清潔な白いシーツ、薄暗い部屋。窓は開け放たれており薄い緑色のカーテンが風に揺れている。


だけどこの違和感は何だ?


体をゆっくりと起こす。その動作にまったく痛みを感じないのもおかしい。記憶が途切れているので分からないがあの規模の交通事故なら大なり小なり怪我は負っているはずだ。

にもかかわらず自分の体には外傷は無いように見える。少なくとも表面上は。


違和感の原因はそれだけでは無かった。

普通の病院なら枕元にナースコールのスイッチがあるだろう。事故による患者なら点滴の装置も備え付けられているはずだ。

それらが軒並み無い。そして何より僕の知っている範囲の病室は床に分厚い絨毯が敷かれていたり、壁が明るい木材で出来ていてそこに油絵が掛かっていたり、天井にランプらしきクラシックな照明器具がかかっていたりはしない。

いや、あるのかもしれないけど二十一世紀の現代日本にこのような病院は無いだろう。多分。


「いったいここ、どこなんだよ?もしかして手の施しようの無い大怪我して特殊な病院にでも入れられたのかな」

思わず呟いた。自分の声は特に変わったところもなく記憶にある自分の声のままだったのでなんとなくほっとする。

いや、だけど、この自分の着ている服は何だろう。

車を運転している時に着ていた綿のパーカーにジーンズという服じゃないのは分かる。

だが入院患者にパジャマではなく何かごわごわした天然の繊維によるTシャツのような服に同じ素材の膝だけまでのパンツという格好をさせる病院がどこにあるというのだ。

枕元を見ると自分がしていた腕時計がある。五気圧まで耐えられるデジタル時計の表示は事故当時の日時で止まっていた。


何か自分がとんでもないところに放り込まれてしまったのでは、という根拠の無い不安が巻き起こりぎゅっとシーツを握り締めた時、部屋の隅の壁がぎぃ、と軋むような音をたてて開いた。


あそこはドアだったのか、と気づく暇も無く部屋に入り込んできたのは。


自分が今まで見たことも無い格好をした二人の人間だった。


金髪碧眼の長身の青年は顔だけ見れば普通だ。だけど彼が着込んでいる鈍い灰色の光を放つ金属製の鎧は

病室の雰囲気にまったくそぐわない。

腰には剣、いや、見たこと無いけどゲームではあの両刃の直刀は剣と呼んでいる、まで吊るしているし。

もう片方の人物は若い女性だった。肩まで伸ばした紫色の髪がまず印象に残った。

こっちも着ている服が奇妙だ。体全体をすっぽり覆った黒い布。そして右手には節くれだった木製の長い杖。まるでハロウィンの時の魔女のコスプレのような格好といえば分かりやすいかな。

額に銀色に光る細い鎖をつけているのに気づいた時、その女の方が口を開いた。


「お目覚めですか」

穏やかな高くもなく低くもない通りの良い声だ。不安と不審に駆られていた僕の神経を刺激しないように貴を使ってくれたのかもしれない。

「え、ええ。あの、ここはどこなんですか?」

少しの緊張に包まれながら返事をする。どうにも分からないことが多過ぎる。

僕の問いかけに女は困ったように首をかしげた。代わりに青年の方が答えてくれた。

「その問いに対する返答はいろんな意味を含むが、そうだな、まず言わなくてはならないことは」

思わせぶりにいったん言葉を切ってから青年がそろりと紡いだ言葉に、僕はすぐには反応できなかった。


「君にとっては知らない世界。つまりは異世界だな」


変な冗談は止めてくれよ、と言いたい気持ちが心臓と肺を圧迫したが、二人の大真面目な顔つきとこの部屋のあまりの病室というには常識はずれの造りがそれを口に出すことを押しとどめた。


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