俺と過去と金髪と。
絋斗『蓮華!どこだっ!』
――蓮華視点――
――駅前――
蓮華『はあっ…………はあっ…………。』
はじめまして。藍沢蓮華よ。
なぜ、私が家から出てきたのかそれは、妹の柊の言葉が図星だったから。
もし、彼が落ち込んでいれば間違いなく私のせい。
だから、彼が家に入ってきたとき、間違いなく私のことは無視か最悪、避けるだろうと思っていた。
今まではそうだった。
なのに彼は私の事まで心配した。
だから、私は私が許せない。
あの時から当たり前になってしまったこの句調も。
――三年前――
三年前一回目の事件が起こった。
母さんの“死”だ。
死因は過労だった。
家は母さんしか働いておらず、倒れるのも無理はない。
今、みんなはきっと父親は??
って思ったかな?
父親……………………ね。
居るわよ、家にも。
正確には“居た”かしら。
母さんが生きてる時も、
月、火、水、木、金、土、日
全部パチンコに行ってる様な奴だったけど。
あと、母さんが死んでからは、借金も作ったわね。
まぁ、パチンコ代だけど。
これが一つ目の事件。
次は二つ目の事件。
さっきも言ったけど、私たちには、最低最悪だけど一応“父親”は居た。
私たちは年齢を誤魔化しながら働いていたのよ。
でも……………………ね。
親子の絆なんて皆無だった。
一年前の10月。
父親は私たちを捨て、外国へ高飛びをした。
さらに厄介払いとでも言うように思い出の詰まった自宅を焼いて行った。
幸い、姉妹全員バイト中で誰も怪我はしなかった。
私たちは、借金取りに追われなくなった代わりに家を失った。
そこからは苦痛だった。
一応住む場所は見つけた。
けど、みんな性格が変わったんじゃないかってくらい荒れたし、柊なんて実際、性格が変わった。
まぁ、荒れてたのは主に私なんだけどね。
そして、橘さんに保護してもらうつい最近までその状態は続いた。
これが私たち姉妹の過去。
――繁華街――
と、考え事していたらとんでもない所まで来ちゃった様ね。
暗くて気味が悪い。
だから早く移動しよう。
不良A『ちょっと待てよ。ねぇちゃん!』
私はその声の正体が瞬時にしてわかったので、今すぐ逃げることにした。
不良B『逃がさねぇよ!てめぇにはさっきのお礼を体で払ってもらわなきゃなぁ~!』
ギャハハと他の不良共も笑う。
最早私は足がすくんで動けなかった。
そして、奴等の手が私の服に到達しそうな時、自然とこの名を呼んでいた。
蓮華『助けて!!絋斗!!』
絋斗『わかった。
少し大人しくして目を瞑って耳を塞いでいろよ?
さて、貴様等、覚悟はいいな?』
さっきまで聞いてた暖かみのある声では無く、ドスの効いた低い声だったが、彼は来てくれた。
自分をこの広い町の中から見つけてくれた。
ふふっ、まるで、漫画のヒーローみたいね。
――蓮華視点終了――
時は戻って、絋斗が捜し始めた頃。
絋斗(居ない!何処に行ったんだ!)
絋斗はかなり焦っていた。
そんなとき、
♪~♪~~~~♪
絋斗『メール!?こんなときに!』
だが、きちんとメールを見た絋斗は驚愕した。
そのメールの内容は、
From 高橋大地
to 鏡絋斗
件名 気になる!
本文
すげぇよ!
金髪美少女が繁華街に入って行ったよ!
でも、美少女あんなところで何するつもりなんだろ。
少しつけてみるわ。
そのメールを見た瞬間、絋斗の顔が変わった。
いつもみたくだらしない感じではない。
髪を後ろで結び、その顔は真面目そのものだった。
待ってろ!蓮華!!!
そういって走り始めた絋斗は、50Mを五秒位で走る勢いだった。
繁華街まで2・5キロ。
――繁華街――
絋斗『大地!ほんとにここら辺なんだな!!』
大地『あぁ間違いない!
でもほんと珍しいな!
絋斗が本気出して人捜しなんてな!
まぁ、お前ならさっきの子も落とせるさ!』
絋斗『そんなんじゃねぇよ!』
先ほどから捜してはいるのだが、一向に見つからない。
そんなとき、
大地『居たぞ!
やべぇ!絡まれてる!』
そして、絋斗は聴く。
蓮華の助けを求める声を。
蓮華『助けて!絋斗!!』
自然と言葉がでた。
絋斗『わかった。
少し大人しくして目を瞑って耳を塞いでいろよ?
さて、貴様等、覚悟はいいな?』
絋斗はマジギレとまではいかないが、確実にキレていた。
ぶっつぶす!!
絋斗『さて、その人を離して貰おうか。』
絋斗はあくまで普段どうりに話す。
それをビビったと勘違いした不良は、
不良A『はっ無理無理。この子は今から美味しくいただくからねぇ~』
あと、不良はこの前闘った不良ではない。
不良B『だから~
しかしその言葉は絋斗によって遮られる。
絋斗『だろうね。』
不良『はぁ?頭おかしいのか?テメェ?』
もうそろそろ説得はいいかな。
いま話していた時間は素直に蓮華を返せばよし。
返さなければどうなっても知らないよ。
という時間だった。
ケンカスタート。
人数は五人か。
まずは蓮華確保だ。
袋小路だから逃げられる事は無い。
絋斗は跳躍する。
走るのではなく跳躍。
たかが3m絋斗にとってはモーションをかけるまでもない。
蓮華と捕まえている不良の後ろへ。
そのまま、不良Aの腕を捻りあげた。ボキッ!って音が聞こえたが気にしない。
蓮華を抱えて大地の所までまた跳躍。
絋斗『大地、頼む。』
大地『了解!』
二人にはこれで十分だが、蓮華は違った。
蓮華『怪我しないでね……。』
絋斗『勿論!』
一人撃破。
絋斗(さて、残りはちゃっちゃと終わらせますかね。)
今度は走る。
そして、鉄パイプを手にして、
『鏡流剣術ー風終嶄ー』
絋斗が不良たちに鉄パイプを薙ぐと、激しい風が起こり不良たちを吹き飛ばし、気絶させる。
ハイ!終ー了ー!!
蓮華機嫌悪くしてないかな?
絋斗『蓮華平気?なワケないか。』
大地はいつの間にか居ない。
いつもどうり後処理に行ったんだろう。
蓮華は近くで見たら震えていた。
それを見た絋斗は、
絋斗『恐かったな、良く今まで頑張った。もう無理しなくて良いぞ。』
と、頭を撫でながら言った。
気付いたら、頬を涙が流れていた。
それ程、蓮華は嬉しかった。
今まで人に褒めて貰ったことなど一度もなかった。
次女として姉として、精神が早くから成熟した蓮華に周りは、善くも悪くも“大人”だと思っていた。
周りにいた大人は、みな忙しかったので、そんな蓮華を褒めれるほど余裕はなかった。
だから、嬉しかった。
そして、そんな絋斗がいうのだからもうそろそろ無理して肩肘張った生き方は止めても良いのだろう。
そもそも、あの喋り方は他人に舐められないようにするためで、もう必要ない。
意を決して蓮華は絋斗に聞いた。
蓮華『ねぇ絋斗、誕生日いつ?』
絋斗『誕生日?俺の誕生日はな……………………ボソボソ』
蓮華『ホント!?なら大丈夫ね』
絋斗(目ぇ輝かせてどうした?
しかもなんか若干キャラ変わってねぇか)
蓮華『あっ、髪戻してるー!』
絋斗『別にいいだろ………。』