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僕と四姉妹  作者: だい
15/17

“僕”と“俺”の新学期。


――深夜・絋斗の部屋――


ガチャ…………。



バタン…………。



モソモゾ…………。




今日の絋斗の布団に忍び込む影は二つ。




俺は、溢れんばかりに自己主張をしている太陽で快適な目覚めとは程遠い最悪な目覚めをした。



今日が来てしまったか………。


新学期、またの名を2学期ともいう。



昨日は楽しかったと思いながら、横にいる柊と唯の頭を撫でる。



今日は柊と唯か…………。


部屋に毎日カギを掛けてるハズなんだが。



俺にプライバシーとかって無いのかな…………。


ついこないだまで感じていた、朝の虚脱感、イライラ感はこの朝起きたら誰かがいる、という状況になってからは一切感じない。



なぜだろうね?安眠効果?


変わりに、かなり四人を言い方はアレだが“愛しく”感じる様になった。



流石に、この気持ちに気付いた時は焦ったね。


今はもう平気だけど。





なんて、現実逃避をしてみたけど、9月1日が消え去るワケではない。



俺が新学期嫌いなのは、学校に俺を主に“キモオタ”とか色々言って来るヤツがたくさん居るからだ。



俺が通っている鳴海高校は、大体、全校生徒2000人位の高校だ。


学食や売店が充実しており、学生の約半分近くが学食や売店を利用している。




とか、どーでも良いことを説明をしてみる俺。



ドタドタドタ!!!


階段を走る音が聞こえる。


バタバタバタ!!


廊下を走る音が聞こえる。


バッタァァァン!!!


激しい勢いで扉が開く。



その先に居たのは…………




……………………………蓮華。


蓮華『3人とも起きなさい!!』


無視する3人。


柊も唯も起きているのだろう、更に強く抱き着いて来る。


俺も学校に行きたくないので無視する。



蓮華『ヒッグお゛に゛い゛ぢや゛ん゛エッグ起きてよ~!』



俺は、自称光の速さで蓮華に近付き、抱きしめる。


絋斗『意地悪して悪かったな。』



ギュ~ッ



蓮華も抱きつき返して来る。



トテトテトテトテ!


バタバタバタ!



どすん!!!!



絋斗『ぐふっ!

柊と唯、危ないから走って飛び付くなんて俺だからいいものの他の人のするなよ??』



唯『兄ちゃんにしかしないから良いんだよ~』



柊『そうだよ…………。』



絋斗『そっか…………。

じゃあ、安心だな!!』



結果、みんなが俺に抱きついてきている。



ばったぁぁぁん!


紗香『早く朝ご飯食べよう!』


忘れてた。






――数分後――


俺は、朝飯などの学校に行く支度を終えて、通学路を進んでいた。



だが、学校の生徒がちらほら見え始めると、苛々しはじめた。


周囲から、


あのキモオタが美人と歩いてる!?


とか、死ねばいいのに。


とか、あの4人は良いけどキモオタは消えて。



などを勝手に言っている。


4姉妹はそれに対してイライラしているのか、言って来たヤツを睨む様にして見ている。



だが、逆効果で見られたヤツは発狂している。



遠くから聞こえるのは、


どうする?あのオタクうぜぇから1回ボコす?で、あの4人で遊ぶ?



してみ。本気出すから。

コイツらを傷付けるヤツは許さねぇから。



そんなこんなで、学校。





――学校――


俺は、みんなを職員室に届けた後で教室に向かう。



だが、

朝の件(登校)が、糸を引いているのか、いつもよりひそひそ話される回数が多い。



――教室――


ガラッ



俺は、特に挨拶する相手が居なかったため、無言で席に座り、昼寝ならぬ朝寝を始める。




クラスメートがうるさいが、いつもの事なのでスルー。






俺が寝はじめてから数分後に、廊下がうるさくなる。


聴こえる声は女子の物だ。



アイツか…………。



ガラッ!!!



大地『はよ~っす!絋斗!』



前にも少し出てきたがコイツの名前は

高橋大地(たかはしだいち)


一応、親友だ。

コイツは俺の過去も素顔も知っている。


ケンカ等を起こした場合、大地はいつも事後処理という報復阻止の為に動く。


風の噂では、バラして欲しくない事を使って脅しているらしい。



学校で絡むのは大地と奏、極稀に金城。


この3人だけだ。

みな、美男美女のため、

女子からは、


なにキモオタが高橋君と喋っているのよ!


男子からは、


久遠さんと金城さんと話てんじゃねーよ!!



と、双方から責められる始末だ。


と、話が脱線したな。


絋斗『おはよう…………。

高橋君。』



学校ではキャラ作りしてるからな。

イメージは、髪型にピッタリのネクラボーイだ。



大地『それは置いといてだ!


知ってるか!?


今日は超美人が四人も転校してくるらしい!!


なんでも、男性職員がぶっ倒れたらしいぞ!!』



転校してくるのはみんなだけどぶっ倒れた職員って…………。変態さんか??






ん?また廊下がうるさいな。


次は男子か。


ガラッ!!!



奏『御早うございます。』


大地『なぁ、絋斗、

久遠さんこっちみて挨拶してないか?


遂に、俺の魅力に気付いたか?』



金城『キモオタ!

ちょっとこっちに来なさい!』



朝からうるせーな金城。


無視無視。



金城『不良。マスターコンボ。』



!!!


ガタッ!!



大地『うお!どうした?いきなり席を立って…………。』



絋斗『金城さんと久遠さん着いてきて下さい。


場所を変えます。』




金城『望むところよ!

キモオタが奏に何したか聞き出してあげる。』


屋上への階段にて。




奏『絋斗君!

ごめんなさい!

どうしてもなにがあったか話せって聞いてくれなくて…………。』



絋斗『ハナから期待してない…………。』



金城『キモオタ!

奏になんて口をきいてんのよ!!』



ぶつっ



どうせ全てが知られるのも時間の内だろう。


なら、今まで散々キモオタ呼ばわりしたことの鬱憤を晴らさせて貰うか。



俺は、アニメやゲームの主人公では無いので、悪口や陰口を叩かれて平気な訳がない。



絋斗『黙れ…………。』



少し威圧感を出して言ってみる。



金城『えっ……。

まさかいまキモオ…………』



絋斗『黙れって聞こえない?』


キモオタとは言わせない。



奏『絋斗君!

落ち着いて下さい!』



絋斗『なんで?






……。

まぁ、いいや。

屋上に行けば事足りるし。』






――屋上――


キィィッ……バタン!



絋斗『もういいか。


要は俺の力を見せつければいいんだろ。


朝休みもあとちょっとだしな。』



俺は、そう言いながら花壇の1つからレンガを1つ取る。


そのまま上に投げて、回しげり。


色々と物理的にあり得ない気がするが、レンガは粉々に砕け、屋上に散らばる。



金城『はっ?』


突然の事で呆然としている。


絋斗『わかった?


次キモオタって言ったら、こうなるから。


気を付けてね。


じゃ、また後で。奏。』






――奏side――


私は、絋斗君が出ていった扉を見つめる。



絋斗君は出ていく時に、アイコンタクトみたいな事をしてきました。


口パクでフォローよろしく。


と、言っていました。



フォローは自分でするものだと思いますが、あの不良さん事件の時に


“俺をキモオタ呼ばわりするヤツが大嫌いなんだよ!”


的な事を言っていたと思うので、マコさんにかなりイライラしていたのでしょう。


でなければ、本人曰くキャラ作りしているらしい絋斗君が黙れなんて言うハズがありませんから。


素の絋斗君を知らないので確信はありませんが…………。



とにかく、私はマコさんに絋斗君に謝って貰うことにしました。



奏『マコさん。

誰だって言われて嫌なことは嫌ですし、もし言われれば怒るのは当然です。

わかりますよね?


だから、絋斗君に謝りましょう。』



金城『………………なんであたしだけ?


みんな言ってるじゃない!


それなのになんであたしだけ謝らなくちゃいけないの?』



奏『謝らないつもりですか!?

自分が絋斗君を傷つけたんですよ?


みんながしてないからしないなんて…………

絋斗君が友達じゃ無くなってもいいんですか?』



マコさんは


“友達じゃ無くなっても”


っていう言葉に少し反応した。




金城『友達?

私は、奏が居たから話してただけよ。

奏がいなければ話したくもない。』




奏『嘘…………ですね。』



マコさんの雰囲気が変わる。



金城『もう遅いわよ…………………………。


鏡はあたしを嫌って終了。


それ以上でもそれ以下でもない。』



奏『大丈夫ですよ!


絋斗君はそんなことで嫌ったりはしません!』



金城『さっきっからえらく鏡の肩を持つわね。』



奏『そっそんなことは置いといて、早く教室に行きましょう!』



金城『はいはい。』



ああは言ったものの、絋斗君……許してくれるでしょうか?



――奏side――END






――教室――


ガラッ!!



俺が大地と喋っていると教室のドアが開き、笑顔の奏と不安顔の金城が入って来た。



そのまま二人とも俺の前に。



金城は深呼吸を繰り返している。


そしてーーーーーー。



金城『今までごめんなさい!』



絋斗『別にいいですよ。


わかってくださったならそれで。』



本当に許しても良いと思った。

なぜなら、金城の顔が一生懸命だったからだ。



金城『よかった…………。


じゃあ、これからは絋斗って呼ぶから、あたしの事は真湖って呼んで?』



絋斗『わかったよ。真湖。』



その後、俺たち3人は楽しく駄弁った。










…………………大地忘れてた。





ガラッ!


?『てめぇら早く席につけやぁ~!』



そう言って入って来たのは、担任の


京極杏禍(きょうごくきょうか)


だ。


本人曰く男がみんな逃げるので独身の25歳らしい。



黒髪のポニーテールでえらい美人さんだが、その句調が恐ろしいらしく誰も手を出さない。



らしくっていうのは俺が全然恐くないからだ。



それを言ったら、なんだか贔屓してくれるようになったけど…………。



杏禍『今日は転校生がいるぞ!

野郎ども悦べ!

超美人だ!』



クラス中が阿鼻叫喚の地獄絵図となる。



杏禍『黙れぇぇぇぇぇ!


特に高橋!!


となりの絋斗を見ろ!

特に動じてないぞ!』



クラスメートの1人がいう。


『ソイツは二次元に嫁が一杯いるから三次元の女の子なんて、どーでもいーよなぁ!』



そうだ、そうだと回りが同調する。



杏禍『黙れ!!!!』



鬼も裸足で逃げ出す形相で、杏禍が言う。



杏禍『次に喚いたヤツは放課後職員室まで来い。』



クラスメートが黙る。



そう言えば、みんなは?


え~と


奏は色々言った男子を静かに睨んでいたし、



真湖は隣で『あたしはこんな酷い事を今までしていたの?』

と、過去の自分を恥じていた。(様に見えた。)



大地は真っ黒いノートに名前を書き込んでいた。



あっ…………。


真湖は席隣なんだよ。


で、俺は一番窓側一番後ろ。


絶好の昼寝ポイントだ。




そういえば、転校生は良いのかな?



多分、蓮華だろうけど。






杏禍『ハッ!!


しまった!


つい絋斗に見とれていた…………。


転校生!!入ってくれ!!』



ガラッ!


蓮華が入ってくる。


やっぱり、蓮華か…………。


ってオイオイ。

柊と唯もってどういうことだ?


3人はまだ俺と大地、奏には気付いていない。


杏禍『じゃあ自己紹介を頼む。』


蓮華『ハイ。

藍沢蓮華です。

よろしくお願いします。』



唯『藍沢唯!

よろしくね!』



柊『……………………』



杏禍『ん?どうした?喋らないのか?』



蓮華『すみません。

この子は喋るのが苦手でして。

出来れば無理に喋らせない様にしてください。


この子は藍沢柊です。


私たち3人はお気づきの方もいるかも知れませんが、姉妹です。』



杏禍『言ってくれてサンキュー。


コイツら3人は姉妹で

唯と柊は1コ下だが、家庭の事情やテストから、特別に飛び級した。



わかったか?』



ハーイ!とクラスの男子。


杏禍『3人に言っとくが、鏡絋斗には手を出すなよ。


私のだからな。』



蓮華『イヤです。』


唯『とーぜんだねぇ~!』


柊『……………………イヤ』



杏禍『どうゆうことだ?


お前らは絋斗を知らないハズだ。



なぁ?絋斗。』



3人が一斉にこちらを向き、笑顔になった。



一斉にダッシュ!!


一着は蓮華で直ぐ様抱きついて来る。


ぐふっ



二着は唯で背中にダイブ!


ゴフッ!



柊は歩いてきて腕にしがみついた。




こうなったか…………。




クラスメート+杏禍

『はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?』



奏『こんにちは。』


真湖『絋斗、この子たちと知り合い?』


大地『この間の金髪美少女!』


絋斗『あぁ。そうだよ真湖。』


真湖『ふぅん。

あたしは金城真湖よ。

よろしく。』



大地『俺は高橋大地!

蓮華ちゃんとは1回会ってるよね!

只今彼女募集中だ!』



奏『私は、特別挨拶することはありませんが、改めて。

久遠奏です。

よろしくお願いします。』



蓮華『よろしく。真湖、奏。

それと高橋。』


唯『よろしくね!』


柊『よ……ろ……し…く……』



キーンコーンカーンコーン!!


あっ…………。


ホームルーム終わった………。



今日の時間割は最低だ。



1、2時間目から体育とか…………。




言い忘れてたが、俺らの高校は始業式の日でもバリバリ授業がある。


朝のHR前に始業式がある。



にしても、体育は2学期だから外でサッカーか…………。


めんど…………。


女子は…………。は?



見学?なんだそりゃ。


なんでも、女子を教えてる先生が風邪でお休みらしい。



オイオイ。



まじでかぁ…………。



あの3人に体育見られたくないな。






――校庭――


生徒の前でゴリマッチョな体育教師が授業の説明をする。



教師『さぁ、今日から体育はサッカーだ!



まぁ、ネクラやオタクどもにはちょっとキツいかもなぁ。


なぁ、鏡くん?



クックックッ!!』



チッ…………。


毎回イライラさせてくれる。


大体、ウチのクラスにそれっぽいの俺しかいねぇから後半全部俺への嫌みか?



さらに、最悪な事も。



教師『今日の女子はサッカーを見学しろ。


転校生の3人をクラスに馴染ませてやれ。


なんでも、

鏡にベッタリらしいから、この授業で幻滅しとけ~!』




蓮華『お言葉ですが、幻滅するなんて事は万に一つもありません。』



唯『そうだねっ!』



教師『そうか…………。

そんなに鏡がいいなら条件を出そう。


お前たち3人が鏡のチームに入り、クラスの選抜チームに勝てたら、俺はもう二度と鏡になにか言ったり、雑用を押し付けないと約束しよう。』



は?どの流れからそうなった?

この教師頭沸いてんのか?



だいたい、選抜チームって反則だろ。


サッカー部をはじめ何人運動部が居ると思ってんだ?


だが、そちらがわじゃない生徒がさらに3人。


大地『望むところだぜ!

かかってこいや!』



真湖『そうね。

これ以上は見過ごせないわね。』



奏『私たちも絋斗君のチームでお願いしますね?』



教師『金城、おまえもか。


まぁ、いいだろう。

お前らが負けたらどんなに良い点数をとろうと素点は1だ。』


だ・か・ら

どうゆう流れからそうなった?


しかも素点1って授業出てない事になっちゃうじゃん。



うざ…………。



大地『ハン!吠え面かくなよ?』


そろそろ止めねぇと不味い。



絋斗『高橋君、お気持ちは嬉しいですが…………。



そもそも、人数が足りません。


僕、蓮華さん、柊さん、唯さん、高橋君、久遠さん、金城さん、合わせても七人しか居ません。


サッカーは最低でも九人必要です。


後、ふたり足りないので出来ません。』



どうだ?



杏禍『それならば問題ない!!』



冗談だろ?


どっから出てきた?杏禍……。


紗香『紘君!

事情は聞いたよ!

私が手伝ってあげる!!』



結構です………………。



杏禍『遠慮することはないぞ!


私も絋斗の待遇にはイライラ来ていたんだ。』



遠慮します…………………。






杏禍『そうだな…………。

もし、負ければ、あたしを自由にしていいぞ。

あたしはなに1つ声を出さないからな。

絋斗以外はこの句調が嫌なんだろ?』




教師『クックックッ!

忘れないで下さいよ?

京極先生。』




なんだって?

なぜだ…………。

なぜ俺なんかの為にそこまで?



絋斗『杏禍…………。

なんで俺なんかの為にそこまでするんだ?



杏禍『あたしはな…………絋斗。

この句調のせいで家族以外でまともに話した事は無かった。


あたしも句調にビビるヤツは、嫌いだったからどうでもよかったが……………………。


だが、学生時代に一人だけ普通に話せた人がいた…………。


担任の鏡涼子(かがみりょうこ)先生だ。』



!!!!



母さんか!!

確かに母さんなら大丈夫だろう。



杏禍『あたしは涼子先生に憧れて先生になったんだ。


そして、教師一年目にいきなり涼子先生の息子の絋斗、お前にあった。


驚いたぞ。

まさか、涼子先生の息子にイキナリ会えたんだからな。


しかも、涼子先生と同じであたしの句調を恐れないと来たもんだ。


だが、既に涼子先生は亡くなっていてな。


あの時に孤立していたあたしを助けてくれた涼子先生の様に、あたしも絋斗を助けたいと思った。


最初は同情だったかも知れない。

だが、今は違う。

一人の女として絋斗、君を支えたい。



長々すまなかったな。

とりあえず、今はあのゴリマッチョ倒すか!!』





そっか…………。


母さん生きてる時に、人を助けたんだな…………。


常日頃から教師とは生徒を守り助ける物だって言ってたからな。



俺は、母さん、父さんを心から尊敬していた。


だから、居なくなっちゃった時は目の前が真っ暗になっちゃったけど。



とりあえず言えることは、


孤立していた俺を救おうとしてくれて杏禍、ありがとう。


杏禍も信用出来るのか?


俺を嫌わないでいてくれるのか?


色々な思考が俺の頭の中を過る。


俺が喋らない事で、暗くなった雰囲気を蓮華がぶち壊した。



蓮華『確かに、先生がお兄ちゃんを心から好きなのはわかりましたし、理解したつもりですが、


お兄ちゃんは絶対に渡しませんから!』



その言葉にみんなが同調する。


唯『同じく!』


紗香『お姉ちゃんも忘れないでね!』


柊『わ……た……し……も。』


奏『私も渡すつもりはさらさらありません!』


杏禍『競争率激しいな!』


そんななか大地が俺に囁く。


大地『もう良いだろ?

絋斗…………。

こんなにも心が綺麗な人がお前の為に集まったんだ。

そろそろ自分に正直になれよ。』



絋斗『…………。

そうだな……………………。

俺が間違ってたのかもな。

それに、そろそろ“俺”も限界だ。』



大地『間違っちゃあいないさ。

ただ、少し立ち止まってただけさ。』



絋斗『サンキュー。』



さて、みんなに俺の本気を見せつけてやるか!



絋斗『全員、聞いてくれ!』


杏禍『どうした?

あたしがいうのもなんだが、句調が変だぞ?』


真湖『そうよ?

さっきよりえらく強気じゃない。』



奏『本気ですか?』


絋斗『あぁ。

俺にケンカを売ったことをあの筋肉達磨に後悔させてやる。


柊、いつもの。』



絋斗が髪を結び、眼帯を外す。


固まる杏禍と真湖。



叫ぶクラスの女子。



さぁ、キックオフだ。





クラスメートが絋斗を見て驚く。


『だっ誰だよ!?あのイケメンは!?』


『カッコイイ~』


『ってかキモオタがいねぇぞ!アイツ女の子と高橋とイケメン置いて逃げやがった!』



大地『絋斗は逃げちゃあいねぇよ!

なぁ!絋斗!』



絋斗『あぁ。

俺ならここにいるぜ。』



『嘘つかなくてもキモオタはそんな言葉遣いしないから。』


絋斗『あっそ。』


俺は髪をほどき、全員の前に立つ。



『まっまじかよ…………。』


そんな中筋肉達磨が普通の生徒ならもっともな事を言い出した。



筋肉『大丈夫だ。

鏡の体育の成績は下の下だからな!』


生徒『そっか!

かっこよさに騙されたぜ!』



筋肉『そろそろ試合開始だ。』


コートに各チームの選手が入り、ポジションにつく。


俺らのチームはこうだ。


FW 京極杏禍 金城真湖


MF 鏡絋斗 高橋大地 藍沢柊


DF 藍沢唯 藍沢蓮華

  藍沢紗香 


GK 久遠奏



となっている。


奏『私がGKで良いんですか?』


絋斗『あぁ、大丈夫。

そこまで行かないから相手。』


真湖『どうゆう事?』


絋斗『全部MFが潰すって言ってるんだよ。


散々、キモオタ、キモオタ言いやがって…………。』


真湖(私怨ね…………。)



絋斗『まぁ、俺と大地がいりゃあ負ける気はしねぇな。』



ピー--ーーーーーー!!



絋斗『やるか…………。』





――試合――


杏禍がキックオフし、真湖がMFの大地にボールを下げる。


真湖の中では回し蹴りを見せつけられた事を忘れていたので、大地にボールを下げたのだ。


ついさっきの事さえ忘れてしまうほど絋斗の素顔は強烈だった。



大地が3人相手をかわす。


そして、いきなり敵陣のど真ん中にセンタリングの様な事をした。


味方はまだ自陣だった……。



相手はミスったなと思った。




が、直ぐに認識を改める。


絋斗が急に飛び出しボールを奪っていった。


そのままペナルティーエリアへそして、嘲笑うかの様にGKをもかわしてドリブルゴール。



絋斗の足にボールが吸い付いているかの様なボール捌きだった。



唖然とする、杏禍と真湖、クラスメート。


絋斗と大地はニヤニヤしながら戻ってきた。


相手のキックオフ。


ドリブルしてきた所に大地がプレスを掛ける。


相手はパスをだすが、絋斗に阻まれる。


絋斗はそのままドリブルで八人を抜いた。


ペナルティーエリアに入った時に、ヒールパス。


杏禍にボールが渡る。


完全にフリーだった。


シュート。


が、バーに阻まれる。


絋斗『しっかり決めろよ!』


そうさけびながらのオーバーヘッドキック。


決まって、2対0。






試合は圧倒的だった。


前半終わって23対0。


ハットトリックどころの騒ぎではない。


一度、プライドの問題で負けるわけにはいかない、サッカー部がボールを持っていた柊に足を掛けてファウルしてしまい、絋斗に超速ボールをみぞおちに決められ、吹っ飛びながらゴールした。


ちなみに審判は、どこからか杏禍が連れてきた女の体育っぽい教師。


初めて見た人だ。

と、絋斗は思った。


吹っ飛んだサッカー部は直ぐ様保健室に連れてかれた。



相手は既に戦意を無くしているようだった。



それを見かねた絋斗は、


絋斗『どうする?

まだやんのか?』


クラスメートが首を横に振るった。


試合放棄の瞬間だった。



――試合終了――





絋斗『さて、髪型と眼帯を元に戻してっと。




さてと、先生。』



筋肉教師がハッ!として絋斗を見る。



絋斗『約束はしっかり守って下さいね。』



筋肉教師『くそ…………。



わかった…………。

絋斗、約束は守ろう。

そのかわ……………………』



絋斗『あ?』


どす黒い雰囲気を絋斗が纏う。


真湖『ぇ…………?』



絋斗『俺を名前で呼んで良いのは俺が認めたヤツだけだ!!!

つまり、俺を名前で呼ぶんじゃねぇ!!』


空気が震動し呼吸が出来ない程の怒気。



絋斗『てめぇらもそうだからな。

今までキモオタ、キモオタ言ってきたんだから今更、“絋斗”なんて呼ばないよなぁ?』


絋斗が静かにクラスメートに言う。



クラスメートはその怒気に頷くしか無かった。



真湖『あたしは?

あたしもついさっきまではあっち側だったのよ?』


真湖は不安げに問う。



絋斗『真湖?

なにいってんだ?』




真湖『あたしも絋斗に沢山酷い事をしてしまった…………。


だから、あたしもあっち側の方が良いのよ。』



真湖は本気で後悔していた。


それこそ謝った時以上に。


たかが容姿だけでその人の本質を見ようとはせず、大切な友達になるかも知れない絋斗を傷付けていたのだから。



自然に涙が頬を伝う。



だが、絋斗から返ってきたのは否定の言葉。


絋斗『だから、なに言ってるんだよ。真湖。


真湖は俺の事を名前で呼んでるか?』



真湖は顔をあげる。


そして、頷く。



絋斗『なら……さ。

それが答えだろ。』



真湖は先程の絋斗の言葉を思い出す。



真湖『いいの?

あたしがみんなといても?』



奏『当たり前ですよ~

ね~。絋斗君~』



絋斗『あぁ。

改めてよろしくな!』



真湖『えぇ!

よろしくね!絋斗!』




女生徒『ずる~い~!

金城さんだけぇ~?

わたしぃ~なんかぁ~絋斗君の事好きになっちゃったみたいなんだけど~。』



絋斗は冷たく返す。


絋斗『お前さぁ、さっきの話し聞いてた?


俺を名前で呼んでんじゃねぇよ。


虫酸が走る。』



女生徒『なら私は~?ひろ…………』



ばごぉぉぉぉぉん!!!



絋斗が樹を殴り、へし折る。



絋斗『

な・ま・え・で・よ・ぶ・な!


理解したか?』





大地がひゅう~と口笛を吹く。





大地『やるねぇ~!』


蓮華『お兄ちゃん、喧嘩はダメだよ!』


奏『そうですよ!』


杏禍『ハッハッハ!!

やはり、絋斗はいい!!』


紗香『当たり前ですよ!

なんていったって私たちが選んだ絋君なんですから!』



恥ずかしいな…………。



真湖『あー!

絋斗顔真っ赤~!』



アハハハ!


と、笑い声が起こる。










次の瞬間まで。










『化け物だ…………。

こんなの人間じゃない……。』

誰かがそう言った。



その途端にクラス全体から


“化け物は去れ”


“化け物は学校に来るな”


“帰れ!”



などの言葉が絋斗に投げ掛けられる。







だがーーーーーーー





杏禍『なら、お前らも学校から去るべきだな。』



杏禍が怒りに声を震わせ言う。


男子生徒『先生はソイツ側だから分からないんですよ。


それに僕たちも去るべきとはどういう意味でしょうか?』




杏禍『他人の心の痛みを分からんヤツは人間の資格すらない。

むしろ、化け物だ。


化け物は学校に来てはイケナイんだろう?』



もういい。


もういいよ。杏禍…………。



蘇る過去の記憶。



心から湧き出る黒い自分。



女子生徒『っていうかさ!

化け物庇ってる時点で先生たちも化け物じゃない?』




男子生徒『そうだ!そうだ!


お前らみんな学校辞めちまえ!


この“化け物ども”が!』




だめだ……………………。





黒い自分を止められない…………。






みなはもう泣きそうだった。



黒い自分が喋り出す。



ナァモウゲンカイダロォ?









俺のなにかが壊れた。



それは前にも味わった感覚。



自分の意識が心の中に。



アイツが心の外に。



自分が黒で塗り潰され、殺意の塊になる…………。





ヒロト『アァ、ソウダナ。

オレハバケモノダ。


ナラ、バケモノガナニヲスルカシッテルカ?』




自分とは思えない低い声。

鋭い殺気。



みんなはこちらを見た瞬間に、硬直し、動かなくなってしまった。



杏禍だけが微弱ながらも動いており、喋れる様だった。



杏禍『ど、どうしたんだ?

絋斗!』



それに俺は声色を変えずに答える。



ヒロト『サァナ…………。



トコロデ、ナニヲスルカオモイダシタカ?』



必死に首を縦に振る生徒たち。


ヒロト『ホゥ…………。


ナラアテテモラオウカナ?


アァ、マチガッテタラ………。


ドウナルカ…………………………………………ワカルヨナ?』


そう言って、ヒロトは

一人の男子に向かって指を指す。


絋斗は心の中でソイツが誰だかわかっていた。


ソイツはクラスの人気者で、

絋斗を虐めるのを日課にしていたチャラ男。


名前は確か

原田瞬(はらだしゅん)




ヒロト『オマエガ、ダレガコタエルノカヲシメイシロ。』



原田『おっ俺が指名するのか!?』



人間とはいとも簡単に友を裏切る。



原田『じ、じゃあ、亮だ!』



原田は自分はもう安全だと思っているらしく、テンション高めだ。


しかも、亮って…………。

アイツの親友(だと思う)の

酒井亮(さかいりょう)だろ!?



いいのかよ…………。



酒井『なんで俺なんだよぉ!

なぁ瞬!!


俺たち親友だろぉ!?』


酒井が泣きながら叫ぶ。


だが、ヒロトは待ってはくれない。


ヒロト『サァ!

コタエテミヨウカ!

サ・カ・イ・ク・ン!!!!』



酒井『わかんねぇよ!


わかんねぇんだよ!


なぁ、頼むから許してくれよ!』



酒井はもう涙でぐちょぐちょだった。



くそっ。


チャイムはまだか!?


早く教師が押さえないと大変な事になる!!






ヒロト『ベツニオマエニナニカスルワケジャネェヨ。



オレガナンカスルノハチャントワカルヤツヲシメイシナカッタアイツダヨォ!!』



ヒロトは原田を指差す。



それまでヘラヘラ笑って生徒の周りを歩いていた原田の顔が一瞬で恐怖に歪む。



原田『え?俺?』



ヒロト『アタリマエダロ。


オレハ、

“ワカルヤツヲ”シメイシロ。


ト、イッタンダ。


ケッカ、オマエハ“ウソ”をツイタンダ。



ワカル、ワカラナイ。

イゼンノモンダイダヨナァ?』



そう言って一瞬で原田の前へ。


ヒロトは“顔面”を撃ち抜こうとする。



止めるっっっっ!


これ以上俺の体で好き勝手させねぇよ!!




ブワッッッッッッ!!


パラパラ…………。



原田の髪が舞う。



拳は原田の顔面より1メーターは離れていた。



ヒロト『ナゼトメル?

絋斗?』



うるせぇ!


てめぇがやってる事はあの時の不良となんら変わりねぇんだよ!!


早く俺んなかに戻りやがれ!!



ヒロト『デキナイソウダンダナ。』



だが、ヒロトの言葉に反応した人たちがいた。



蓮華『貴方はお兄ちゃんの顔をしてるけど、心はお兄ちゃんではないのね…………。』



ヒロト『ナニヲイッテイル?


オレハ、“絋斗”ノ“憎しみ”ヤ“哀しみ”ヲカテニシテウマレタンダゾ?


“絋斗”ジャナイワケナイダロウガ!!



アッテカラ、イッカゲツモタタナイオマエニナニガワカル?』



蓮華『私が会う前のお兄ちゃんは確かに知らない。


でもね…………。


私たちは“以前の”お兄ちゃんなんて知る必要が無いの。



私たちが来てからの


“今”


を生きるお兄ちゃんさえ知ってればね。』





ヒロト『ジャア、

オマエタチハ“絋斗”ヲスクッテヤレルノカ?


ムリダロウ!


ショセン“他人”ナンテソンナモンサ!!』






はっ!


確かにオマエの言ってることは正しいよ。



ヒロト『ソウダ……』



でもな、コイツらには確かに俺は救われてんだよ。



確かに“他人”には無理だろう。



でもな……………………。



“家族”と“親友たち”



ならそれだって出来るんだぜ?




ヒロト『モトヲタダセバ、


“家族”モ“親友たち”モ



“他人”ダ。』



先程から皆はヒロトの独り言を聞いて黙っている。







なぜ、基を正す必要がある?



お前は、


なぜ、“家族”を拒絶する?



なぜ、“親友たち”を頼れない?


なぜ、孤独であろうとする?



俺にはお前の心がわかる。


お前だって俺の心の中がわかるだろ?




ヒロト『ダガナ、コドクノホウガミノタメダ。


“友達”モ“家族”モ“親友たち”モ



イツ、ナンドキ

“裏切るか”

ワカラナイカラナ。』




はっ!


裏切らねぇよ!


コイツらなら大丈夫だ!



ヒロト『ナゼ、ソンナコトガワカル?』




さぁて……ね。


でも、“裏切らない”っていう確信だけはあるからな!!


お前が何言ったって、この確信だけは揺らがない!!




ヒロト『ソウカ…………………………………………………………………………………………………………………………………………ナラバモウイウコトハナイ。



ジャアナ。

ナンカアッタラマタデテクルゼ。』




体からフッと力が抜ける。


俺は慌てて自分の体制を立て直す。



絋斗『ふぅ…………。』



蓮華『お兄ちゃん……………………なの?』



絋斗『俺以外に兄貴がいるのか?』





途端に、

みなが顔を“フニャッ”と崩し飛び付いてきた。



唯『兄ちゃ~ん!!』


柊『兄様…………。』


紗香『絋君!』


蓮華『お兄ちゃんっ!!』


奏『絋斗君~』


真湖『絋斗!』


杏禍『絋斗~!』



大地『ひ~ろ~と~






グワベシッ!』



意味不明な言葉を叫び、吹っ飛ぶ大地。



絋斗『なんかヤダ。』



ふと見るとクラスメートはみな地面に座り込んでおり、安堵からか泣いてる者さえいる。



原田は気絶してるけど。



そして、絋斗はクラスメートの前に立ってひと言。


絋斗『みんな!悪い!


でも、俺もそれだけ嫌だった


って事で痛み分けにしねぇか?』






男子生徒『俺は……良いぜ』


私も!


俺も!


そんな声がクラスのあちこちから飛んでくる。



そして、酒井や主だって俺を虐めていたヤツラを先頭に、クラスの全員が横一列に並ぶ。


まだ、原田は気絶してるけど。


下が砂にも関わらず、


男子は土下座


女子は正座して


ひと言。


『今までごめんなさい!』


と言って頭を下げる。




絋斗『あぁっ、だから痛み分けだって言ってるだろ!


もう、そういうのはナシにしようぜ!』



そう言って絋斗はとびっきりの笑顔を見せた。










その言葉に女子が全員顔を真っ赤にして俯いたのは別の話し。





――夜――



絋斗『なぁ、昼間みんな固まってたけどそんなに顔ヤバかった?』



蓮華『うん……。

修羅か般若を見てる方がマシだったかも…………。』


唯『なんか、底知れない恐怖感を感じたよ?』



絋斗『まじか…………。』



紗香『まっ、過ぎた事は気にしない!気にしない!



…………ねっ?』


柊『そう……だよ』


柊あとちょっと!



じゃなくて~


絋斗『そうだな!

気にしない!気にしない!』




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