世界の隙間 残響する声
視界に映るすべてが暗転した、すぐ後の出来事。
まるで、針にかかった魚が釣糸に引っ張られるかのように、輝夜を包む光の膜は一直線に進み続けた。
向かう場所は決まっているかのように…。
行き先は恐らく、先ほど光の表面に現れた景色の場所だと思われるが、今の輝夜にはそれ以上の思考を続ける余裕がない。
なにしろ、竹取輝夜は現在、『宇宙』と対面していたからだ。
「どわあああああ!なんじゃこりゃああああ!」
〈待……て……テ…〉
いや…輝夜が見ている景色を『宇宙』と呼ぶには、少し語弊がある。
宇宙や銀河、そのすべてを収納した、それは言うなれば『世界』。
その『世界』が『虚無』という海の中をユラユラと揺蕩っていた。
そして、『世界』はひとつではなかった。
十、百なんて可愛らしい数でもない。
億、兆、京、該、エトセトラ。
まさに、無限にも等しい千差万別の形をした『世界』の群生が、闇の中を華やかに彩っている。
その世界と世界の隙間を、輝夜は光速を遥かに凌駕する速度で、白い彗星の如く駆け抜けていく。
過去に履いていたズボンを水没させ、小学6年生だった輝夜に『二度と絶叫系には乗らない!』と、固く決意させたジェットコースターが今は可愛く思えてくる。
掴まる場所もない。安全装置もない。
唯一頼れるのは、自分を包む光の膜のみ。
お先は文字通り真っ暗で、進んでいるのか戻っているのか、上昇しているのか落下しているのか、それすらもわからない。
今の輝夜にできることは最悪の想定に備えて、意識を手放さないようにグッと堪えることだけだった。
「びょえええええええ!!」
〈ボク………帰………る〉
それゆえに、囁き声にも似た悲しみを孕んだこの残響も、絶叫を上げるだけでいっぱいいっぱいの輝夜の耳には、これっぽっちも届かなかった。
「うびょおおおおおおおお!」
〈こ…花………印に…〉
まもなくして、七色に輝く一筋の光が、輝夜の視界の先に小さく瞬いた。
その光源に向かって、速度はさらに上昇。
永遠に感じられた、わずか一分にも満たない時間。ようやく見えたゴールらしき地点に、輝夜はホッと安堵の息を吐いた。
それも束の間、その光明は瞬く間に輝夜の視界を真っ白に塗り潰した。
その閃光のような光に奪われた視力も数秒後には回復したが、次に目蓋を開いた輝夜の瞳には新たな景色がひらけていた。
──天に群青、地に瘴気。
地上から、およそ1万フィートに及ぶ上空。
あの『景色』と同じ場所へと、輝夜は勢いよく放り出された。
流星のごとく…。
七色の焔を纏って…。
希望のように空に輝いた。




