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異世界竹取物語〜★僕が約束を果たすまで☆〜  作者: 色採鳥 奇麗
第一章 新しい日常

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異能災害


「僕の名前は──」


「おや?資料に記載されていた異能とだいぶ違いますね。手違いでしょうか」


 輝夜の言葉を(さえぎ)って、女教師は怪訝に眉を(しか)めた。

 それを聞いて、輝夜の口からピントの外れた声が漏れる。


「ほぇ?」

 

 せっかちな輝夜と言えど、異能をお披露目するタイミングは、自己紹介が最高に盛り上がる最後の瞬間にするべきだと心得ていた。

 なにしろ、まだ三人しか観測されていない貴重な異能だ。

 出しどころによっては、盛り上がりに欠けてしまう。

 そんなわけで、今の教師の言葉は、輝夜にとってなんのこっちゃ?という話になるのだが…。


「およ…?」


 よく見ると、厚い光の『膜』が輝夜を丸々と包み込んでいた。

 現状、巨大なシャボン玉の中に閉じ込められたようになっている。


「なに…これ?これ…僕の異能じゃないですよ」


 よくよく考えてみれば、雲の切れ間から光が差し込んで、奇跡的に輝夜一人を照らしたのならともかく。

 雲一つない快晴の空の下で、光が『スポットライト』のように収束すること自体、おかしな話だった。

 やや状況を掴みきれていない輝夜であったが、とりあえず脱出を試みようと光の『膜』に手を伸ばしてみた。

 しかし、『膜』はびくともしなかった。

 何度試しても結果は同じ。


「出られないな。ありゃ?」


 挙句には、光の『膜』はギュルギュルと自転を始める始末。

 まるで巨大なドリルが、輝夜の存在を(えぐ)り取らんとするかのように…。

 

(これ…ヤバいかも…)


 動き出したということは、なにかしらの段階に移行したということ。

 嫌な予感に、余裕こいていた輝夜の口元が引き攣る。

 だが、そのただならぬ気配を感じ取ったのは輝夜一人だけではなかった。


「全員、彼から距離を取って!『異能災害』です!」

 

 女性らしからぬ教師の声量に、危機感を覚えた生徒一同は、すぐさまに距離を取った。


 ──『異能災害』


 『最初の六人』の神災と同様、一般の人も初めて異能に覚醒した際、大半がその力を制御できずに暴走させてしまう傾向にある。

 その暴走には多少個人差があるものの、災害認定されているだけあって、対処が遅れてしまうと負傷者や、最悪…死者を出してしまう。

 対処も、それはそれで難しい。

 例えるなら、火の上がった建物に、消防隊が高出力の水を放水して鎮火させるように、暴走して出力された異能によって対応方法も変わってくる。

 なお、もっとも効率のよい異能の解除方法は、相手を眠らせるなどして、異能者の意識を奪うのが最善にして最速と言えるだろう。


「僕が止める!」


 誰よりも早く状況を見極めた(やさし)が声を上げて動いた。

 彼の足元からユラユラと伸びる黒い『何か』が、波のように地面を走り、輝夜を包む『膜』を瞬時に飲み込んでいく。


「見たところ、あの力は『光』系統の異能だと思う!どういった能力かはわからないけれど、僕の『影縫』で抑え込めるかも!」


 騒ぎを聞きつけた他クラスの教師、生徒も同様に『光』と対極にある『闇』系統の異能で、事態の収束を試みる。

 残った生徒は、もうひとつの解決手段として、力を暴走させている異能者の捜索に当たった。

 その騒ぎは、舞い上がる炎のように燃え広がり、一帯に騒然とした空気を立ち込めさせる。


 ただ──、

 騒動の一部始終を目撃していた一人の超越者は、この発端である『光の膜()』にわずかな違和感を覚えていた。

  


 ★☆★



(おかしい…)


 異能災害という叫びを聞いて、誰よりも早く事態の収束に動いたのは、他でもない教祖であった。

 その権能を持ってして、力を暴走させている異能者を特定し、後は眠らせるだけで万事解決──するはずだったのだが、事態はそう容易ではなかった。


(どうなっている。異能者が覚醒時に放出する、魂の爆発的波動を感じなかった。捜索範囲を広げてみるか…)


 『命』を司るその力は、魂の領域にまで作用する。

 教祖は学校内に絞っていた感知能力を、一気に日本全土へと拡張。

 計り知れない規模の情報が教祖の脳内に押し寄せる。


「ぐっ…」


 その情報量にクラリとよろめく教祖。

 無機質な面を支えながら、倒れるすんでのところで踏みとどまる。

 そうした甲斐もあって、それなりの成果は得られた。

 現時点において、力を暴走させている異能者はこの日本に存在しないという事実。

 その信じがたい結果に、教祖は息を呑んだ。

 

(ありえない…。他国から干渉している?にしても距離がありすぎる)


 しかし、教祖は慌てるような素振りを見せずに、あくまで冷静に事態の収束に身を乗り出した。

 根本を断つのがダメなら、目の前の事象をなんとかすればよい。


 『最初の六人』が一人にして、異能の中の異能。

 

 ──教祖。


 『命』を司る権能をもって、今、表舞台へとその片鱗を轟かせる。


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