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異世界竹取物語〜★僕が約束を果たすまで☆〜  作者: 色採鳥 奇麗
第一章 新しい日常

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5/11

教祖

 ──心せよ。


 ──深淵を覗く時、


 ──深淵もまたこちらを覗いている。


 現状を指し示す言葉として、これほど相応しい言葉もないだろう。

 まさしく今、この瞬間。

 輝夜がじっと教祖を見つめていたその時、教祖も同様に輝夜を見ていた。

 その無機質な面の奥にある瞳は権能によって補正され、普通の肉眼では捉えることのできない、ずっと深い部分を透視している。

 『高次元』を見据えている、とでも言おうか。

 ともあれ、教祖は自身の人生において、二度目の未知と遭遇していた。


(なんだ…あの『色』と『形』は…。奇妙な少年だな。というか、なぜ手を振ってくる!?)


「アルビノなんだそうだよ。珍しいだろ」


 先ほど、壇上で凛々しいスピーチを見せてくれた女が、教祖の視線の先を見つめながらゆっくりと歩いてくる。

 別にアルビノという物珍しさから少年を凝視していたわけではなかったが、説明するのも面倒だった教祖は、特にこれといったアクションを起こさなかった。

 

「こんなところにいていいのかい?多忙なんだろう?校長先生」


「君こそ、教祖様ともあろう者が、こんなところで道草を食っていていいのか?」


「こう見えて、結構暇なんだ。教団の皆も、僕の研究を率先して手伝ってくれてるけど、今はこれといった成果もないし…。だからこうして、面白そうな力に目覚めた子がいないかなーって見に来たんだ」


「それで?その面白そうな子はいた?」


 学校の(おさ)らしい悠然(ゆうぜん)たる仕草で髪を払い、校長…始奏(しそう)綾音(あやね)は教祖に顔を向けた。


「いた。あの白い子」


 教祖が熱視線を送る相手に再び目を向けると、綾音は過去に目を通した新入生の資料を想起した。

 記憶に残りやすい容姿に名前、そして謎が多い希少な異能。

 口にするのに、さほど時間はかからなかった。

 

「あの子は竹取輝夜君。確か…魂片(こんへん)顕現(けんげん)型の異能者だね」


「はは…。昔話に出てきそうな名前だね。それにしても魂片(こんへん)か…。確か、内にある魂の欠片を、物質化させる異能だったか…」


 過去。

 輝夜の異能は武器を顕現させるだけの、よくある異能だと思われていたが、偶然にも魂の領域を観測できる異能者によって、今では明確な違いがあることがわかっている。

 教祖の言った通り、その異能は魂の欠片を物質化して顕現させる。

 魂の欠片。

 すなわち輝夜は、自身の魂とは別に、小さな魂を保有している。

 これも異能者として覚醒した者の、進化の可能性のひとつなのだろう、と教祖は考えた。


「まぁ、謎が多い異能だが、これからゆっくりと解析すればいいだろう。彼が僕の計画に、大きな進展をもたらしてくれることを願うよ。

 そういえば、他にも二人いるんだろう?その子達は?」


「一応、声はかけたんだけどね~。一人はまったく興味を示してくれなかったよ。もう一人は、仕事に就いたばかりだから無理だって」


「フられたのね…残念。まぁ、一人手に入っただけでも上々だ」


「そうだね…。それじゃあ、私は行くよ。弟分(おとうとぶん)の様子を見に来ただけだし。それに、君と違って私は忙しいからね」


 綾音は教祖に背を向け、嫌味(いやみ)ったらしい言葉を吐いて歩きだした。


「あっそ。僕はもうちょっと、彼らを観察させてもらうよ」


 『好きにしろ』とでもいったヒラヒラと揺れる手振りに、彼女の相変わらずのおざなりな性格が見て取れ、今後の学校の行く末を憂いて教祖は小さな溜息を吐いた。


「はぁ…。じゃあね、ねぇさん」


 ★☆★


 挨拶も兼ねた自己紹介は、ようやく輝夜の番に回ってきた。


「次は……竹取君ね」


「ハッイッ!」


 女教師に名を呼ばれ、白の化身と言っても相違(そうい)ない活発な少年は、揚々(ようよう)と生徒達の前に躍り出る。

 輝夜曰く、挨拶は最初が肝心だ。 

 清潔感や好印象を感じさせるシャキッとした身なりに、耳に残るハキハキとした声。

 そして、忘れられないような、記憶に焼き付くトーク(りょく)が必要とされる。

 しかし、印象云々(うんぬん)に関してはともかく、こと見た目のインパクトは群を抜いている輝夜。

 初動の『掴み』に満足して、つい緩みそうになった口元をキュッと結んで堪える。

 まだまだここからが本番。一言も(はっ)さず、結果も出さずして達成感に浸るのは、落ち着きのない輝夜の短所のひとつだ。

 呼吸を挟み、逸る気持ちを落ち着かせた輝夜は、冷静に思考を加速させていく。

 何を述べ、何を語り、何を知ってほしいかは、すでに頭の中で整理されている。

 後は言葉にするのみ。

 これから仲間になる同級生達を、その双眸(そうぼう)の中にすっぽりと収めて、少年は意を決した。

 まさにその瞬間、気の利いた日の光が頭上から降り注ぎ、『スポットライト』のように輝夜に焦点を当てる。

 まるで、世界の中心人物であるかのように。

 そしていざ、自己紹介。

 

「僕は名前は──」


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