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異世界竹取物語〜★僕が約束を果たすまで☆〜  作者: 色採鳥 奇麗
第一章 新しい日常

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3/12

竹取輝夜という友人


 異能(いのう)特技(とくぎ)研収(けんしゅう)高校。

 都市の傍らに堂々(どうどう)(そび)える、世界にひとつだけの最先端の学び舎だ。 

 開校したのは四年前と、その歴史は浅い。


 ──(まな)び。

 ──調(しら)べ。

 ──(きた)え。

 ──(みが)き。

 ──(きそ)い。

 ──(はぐく)む。


 その本質もまた、基本的に()の教育機関と変わらない。

 唯一違う点は、この高校に通うほぼすべての生徒が特異な力を持っている、という点だ。

 人はその特異点を、


 ──『異能者』と呼ぶ。


 周囲と一線を画した白い肌の少年もまた、その超越者の一人だ。

 新入生、竹取輝夜は校門の前で立ち尽くし、これから通う学校の全貌を、しかとその目に焼き付けていた。


 雲ひとつない青く澄んだ登校日和。

 道中、一面が桃色の花びらで飾られた木のアーチは、これからの生活を祝福するかのような特別感を演出してくれた。

 そして輝夜の眼前。

 東西南北に位置する場所にひとつずつ設けられた清潔感が漂う堅牢な校舎は、内と外界を仕切る境界線のように校内をまるごと囲んでいた。

 一見すると、後ろめたいことを隠していると思われるだろうが、実際の理由は単純で、異能によって生じた流れ(だま)が民間に及ばないようにするための、城壁の役割も担っている。

 そんなことなど知る由もなく、輝夜は校門を抜けて学校の教師だと(おも)しき男に、事前に受け取っていた学生証を提示し、案内されるがまま校内の右手へと進んだ。

 

 第一校舎、一階。

 時間はさほどかからず、輝夜は指定された教室の前へとやって来た。

 『1年1組』の表札を見あげながら、自分のラッキーナンバーを引き当てた幸先(さいさき)の良さに輝夜は運命めいたなにかを感じ、ガッツポーズをするかのようにグッと拳を握りしめた。


「よし…」


 扉の向こうでは名前も知らない、まだ見ぬ仲間たちがすでに待機しているかもしれない。

 みんなと仲良くなれるかな?

 なんて考えながら、輝夜は不安と期待で膨らんでいく胸を、大きく息を吐いて落ち着かせた。

 そうして意を(けっ)し、引き戸に手をかけてゆっくりと開いた。

 ガラガラと軋む音に、一斉に注目が集まる。が、見たところ教室内には片手で数えられる程度の生徒しか集まっていなかった。

 そもそも、興奮して早々に家を出た輝夜の登校時間が早すぎただけで、予定された時間はだいぶ余っている。

 拍子抜けの展開に輝夜は嘆息しながら、教室の中に入っていった。

 

「あれ?輝夜じゃん」


 思わぬ声に、輝夜は顔を上げた。

 そこに別の男女の凛とした声が続いた。


「輝夜君?」「カグヤちゃんだ!」


 輝夜の表情がみるみるうちに明るくなったかと思うと、声の主たちは怪訝に眉を(ひそ)めながら、お互いの顔を見合わせた。

 彼らにとっては、初対面の顔ぶれ。

 だが輝夜にとってその三人は、久しぶりに再会した懐かしの朋輩(ほうばい)であったりした。


 ★☆★


 目黒(めぐろ)(やさし)(いわ)く。

 竹取輝夜という(とも)は、常に物事の中心にいる、目を背けたくなるほどに(まばゆ)い存在だった。

 まるで自分とは対照的。雲の上の人。

 同じ中学でありながら日陰者だった優は、そんな輝夜に憧れたこともあったが、自分には縁のない人だと目を背ける日々を送っていた。

 しかし──、

 

『僕とお話をしよう!』


 この無邪気で厚顔無恥なお人よしは、優の都合などお構い無しに、その手を取って穏やかな陽だまりの中へと引っ張り出してくれた。

 今でも、その日のことを思い出せる。

 彼のようにまっすぐで、明るい性格の持ち主を他に見たことがない。

 優にとって輝夜とは、すべての『闇』を晴らし焦がす、太陽の如き『光』だった。



 揺籠(ゆりかご)(さくら)|曰く。

 竹取輝夜という友は、尻尾を振って可愛らしくついてくる、愛玩動物のような存在だった。

 子犬の毛並みのような、フワッと跳ねた癖のある白い髪。常に期待に満ちたつぶらな瞳。

 愛嬌のある人懐っこい性格は、幼い頃に失った愛犬のことを思い出させた。

 一目惚れだった。

 だから初めて目にした時に、咄嗟に声をかけて親しくなった。だがそこに恋愛感情は一切ない。

 撫で回して、甘やかして、首輪をつけて躾けたい。そんな苛虐(サディズム)的な欲求が、櫻の胸の内に芽生えていた。

 櫻にとって輝夜とは、心にポッカリと空いた喪失感を唯一埋められる、代わりのいない代わりだった。

 


 大石(おおいし)拓翔(たくと)曰く。

 竹取輝夜という友は、好奇心旺盛で危なっかしい、目が離せない存在だった。

 二人の出会いは、小学生の頃に(もよお)された地域対抗イベント。

 種目は八対八の小規模サッカー。拓翔が対峙する相手チームの中に、異彩なオーラを放つ少年がいた。

 ところが、いざ試合が始まってみると、相手ゴールの中にポンポンとボールが吸い込まれ、拓翔のチームは苦もなく勝利を収めてしまった。

 あまりの呆気(あっけ)なさに言葉も出ない。


「ねぇ!君、サッカー凄く上手だね!なんかコツでもあるの?僕にも教えてよ!」


 試合終了後、少年は目を輝かせながら拓翔に話しかけてきた。

 拓翔の目から見ても、少年のボール捌きはお世辞にも上手(じょうず)とは言えない。むしろボールを踏んでずっこけたり空振りしたりと、彼が運動音痴なのは揺るぎない事実。

 対して拓翔は、相手チームが弱かったという理由もあるが、味方チームを勝利に導いた確かなMVPだと言えた。

 少年が教えを請うのも納得がいく。

 拓翔は面倒臭がって断ろうとしたが、どうも少年の眼差しが弟達と重なって見えて、なんだか見放す事が出来なかった。

 これを機に、二人は少しずつ仲良くなった。 

 拓翔にとって輝夜は、世話の焼ける弟分だった。


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