表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
消える空の縁で、君を見つけた。  作者: hayama_25


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

6/7

机の上は

 私は…


誰かに「消えてほしい」と思われていたかったのかもしれない。


そうすれば、こんな気持ちにも、ちゃんとした名前がつけられる。


“いじめられてるから”

“暴力を受けているから”

“愛されていないから”


……そういう、理由。


その方が良かったのだろうか。


もし何かが“もっと分かりやすく”壊れていたら、


誰かを責める理由も、何かに怒る資格も、持てたのだろうか。


堂々と「消えたい」って思えたのだろうか。


何か一つでも「理由」があったら、誰かに「わかって」と言えたかもしれない。


でも、本当は、どれもない。


わたしは誰かに嫌われているわけでもないし、ひどい環境にいるわけでもない。


わたしには、語れる悲劇がない。


理由のない虚しさ。誰にも明かせない重さ。


その苦しさに、「誰かの悪意」という“かたち”を与えたくなった。


自分の気持ちに理由をつけるために。


そうしたら少しは、耐えられるかもしれなかったから。


「おかえり」って言ってくれる声もあって、話してくれる友達だっている。


周りには私の味方になって助けてくれる人だって、ちゃんと…。


もしもこの気持ちに理由があったのなら、


「ひどいね」って言ってもらえて、


「あなたは何も悪くないよ」って抱きしめてもらえて、


「生きてるだけでえらいよ」って、ちゃんと理由つきで肯定してもらえたかもしれない。


今の私は、"消えたい"と思ってしまう自分を、どこに置けばいいかわからなかった。


苦しいって言えないくらいの場所で、ずっと息を潜めて、生きている。


だから、“ふつう”の顔をしながら毎日をやりすごすしかない。


何もされていないのに。

何も起きていないのに。


ただ、胸の奥がずっと冷えていて、誰にもそれが見えなくて、


見えないからこそ、「甘え」だと思われるのが怖くて。


机に菊の花が置かれていた“ふり”をした。

自分で自分に。


頭の中だけでも、「理由のある世界」に変えてみたかった。


苦しみの輪郭に名前を与えることで、


この生きづらさに、「正しさ」をつけてしまいたかった。


ほんの一瞬、あの花が見えたのは


たぶん、きっと、わたしの中に残っていた最後の“願い”だった。


名前のある不幸のほうが、きっと、息がしやすいから。


名付けられないままの「生きづらさ」は、ときに、何よりもしんどいから。


空気みたいにじわじわと、「生きている」ことがこすれて、痛くなるだけで。


決定的な何かがあったわけじゃない。

それが、いちばん誰にも伝えられなかった。


見えないからって、軽いわけじゃないのに。


誰にも叩かれていないからって、わたしは壊れていないわけじゃないのに。


そういうものを、


“誰にも説明できない苦しさ”として、今日も制服のポケットにしまい込んで、


机の前に座って、笑って、ちゃんと「平気なふり」をしている。


そして今もまだ、机の上は空っぽのままだ。

だからわたしは、ひとつ笑って見せた。



でも本当は、ずっとあの花の幻を、

胸の中で握りつぶせずに持ったまま、生きている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ