表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
消える空の縁で、君を見つけた。  作者: hayama_25


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

5/7

誰かに見つけて欲しいのか

教室に足を踏み入れた瞬間、胸がきゅっと縮んだ。


朝のざわめき。机を引く音。誰かの笑い声。


いつもの朝のはずだった。でも、その中に“違和感”は混ざっていた。


私の机の上に、白い花が一輪。


それを見た瞬間、思考が一瞬止まった。


目を疑うとか、驚くとか、そういうんじゃない。ただ、心の奥に「嫌な予感」が走った。


それは────


白菊。仏花。


まるで誰かが、わたしの存在を弔ってくるみたいで。


冗談? 悪意? それとも、ただのからかい?


手がかりのない悪意が、そこにだけぽつんと浮かんでいるように見えた。


誰かのくすくす笑う声が聞こえた気がした。教室の片隅から。


「楓佳?」


その声に、肩がびくりと跳ねた。


振り返ると、茉白ましろがこっちを見ていた。


いつもの顔。変わらず柔らかくて、わたしを気にかけてくれる声。


私は一瞬、反応が遅れた。


机の上を見たまま、頭が真っ白になっていたから。


「…あ、おはよう」


声が自分のものだとは思えないほど、軽くて薄かった。


まだ頭が上手く回らない。


でも言葉を選ぶ間もなく、口が勝手に“正解”を選んでしまった。


挨拶。それは、この世界で「普通」でい続けるための呪文みたいなもの。


「おはよう。さっきから呼んでたのに、どうかした?」


茉白がちょっと不安そうな顔をした。


机の上の花に気づいたら、どんな反応をするんだろう。


「それは…」


視線を机に戻すと、その上には何もなかった。


白い花なんて、最初からどこにもなかった。


みんな普通だった。


私語をしている子、椅子に座ってスマホをいじっている子、窓の外を眺めている子。


誰一人として、こちらを見てなどいなかった。


笑い声すらも、よく聞けば誰かの楽しい会話の続きだった。


なのに、どうしてあんなにはっきり見えたんだろう。


“置かれている”って、確かに思ったのに。


私は慌てて笑顔を浮かべた。


大丈夫だって、表情筋にだけ命じるように。


「いや、ちょっと眠たくて」


遅くまでゲームをしたからとか、ドラマを見たからとか。


そんな高校生らしい理由じゃない。


頭の中のざわめきが止まらなくて、

何度も同じ夢の輪郭をなぞってしまっただけ。


「寝不足?昨日あんまり寝れなかったの?」


心配そうなその声が、じんわりと胸にしみた。


それが少しだけ苦しかった。


優しさがまっすぐすぎて、自分の嘘がより浮かび上がってしまう。


なにも“問題”を抱えていないふりをしたまま、

“苦しい”ことを、うまく言葉にできないから。


「うん、ドラマの続きが気になって」


そう言いながら、目をそらした。


誰かに「本当」を話せる日なんて、きっと来ない。

きっと来ないまま終わるだろう。



でも今はまだ、この嘘がわたしを守ってくれている。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ