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その猫寄越せ!! お断りします!!!!

 お風呂入っているところ、電話がかかってきました。


「もしもし」

『子猫ほしいんだけど』


 やっぱ、見た目可愛いから、気になるのねー。ポスターすごい。


「ポスターには書いてないですが」

『いや、動物病院に電話して聞いた』

「そ、そうですか」


 見た目とかは関係ないんだー。これは、ちょっと、困ったなー。


 過去に、ともかく猫が飼いたいから、という問い合わせがあって、面談したりすると、お断りとなることが、経験上、多いです。

 とりあえず見てみよう、と外見も知らずに来てみれば、思ったのとは違う、という感じになります。

 あと、外見の拘りが強い人もいたりします。



 昔、すごい人がいたんですよ。

 問い合わせで、長毛の猫、オスが欲しい、という人がいました。その人も、動物病院に電話かけまくって、里親募集している所が、我が家しかなかったという話です。


 その時、たまたま、長毛の三毛のメスの子猫がいました。


「すみません、長毛はいるのですが、メスなんです」

『見たいです!!』

「メスですよ?」

『それでも、見たいです!!』


 オスがいい、と言っていたので、不安でしたが、見た目はともかく可愛い三毛の子猫だったので、一度、我が家で面談してもらいました。

 それなりに猫はいて、みんな、その人に寄っていって、ご挨拶してたのですが、見向きもされませんでした。


 終始、人見知りが強い長毛の三毛の子猫を抱きしめて、ニコニコと笑っていました。


 すぐ連れて帰りたい、と言われましたが、ともかく、猫を受け入れられるような環境を確認したいので、と住所と連絡先をいただいて、帰ってもらいました。

 一緒に面談をした夫は、見送ってから、



「野良ネコなんて、そこら辺にいっぱいいたけど、あの人の目には、長毛じゃない猫は、目に入ってなかったんだろうな」



 と笑って言いました。

 お届けに行ってみれば、歴代の飼い猫は皆、長毛でした。これは、拘っても仕方ないなー、と思いました。

 長毛の猫に強いこだわりを持っていましたが、逆に、可愛がってもらえて、良い出会いではありました。



 まれに、こういうこともありますが、問い合わせでー、という人は、微妙な感じがします。


「一応、こちらは、一度、保護宅まで面談して、後日、こちらかお届けして、一か月のお試しの後、正式譲渡としています」

『そんな面談なんかいらん!! すぐに連れて来い!!!』

「でも、一度は見て、性格を確認してからのほうがいいですよ。子猫ですけど、とても元気ですし」

『お試しってなんだ!! そんな必要ない!!!』

「先住猫ちゃんとの相性もあるので、お試しすることとなっていますが、大丈夫ですよ。我が家でも、一番、気難しい猫とも仲良くしていますから、どんな猫でも、仲良く出来ます」

『ウチの猫は、どんな猫でも、仲良くするぞ!!』



 これはまた、すごいのが来たなー。



「猫、どれくらい飼っていますか? 我が家では、三匹ですね(外猫あわせると、もっといるけど)」

『………それの倍だけど、貰えないのか?』

「そういうわけではないですけど、そんなにいるのに、どうして、子猫が欲しいのですか?」



 どうも、猫がいっぱいいるお宅のようなので、引っかかりました。いっぱいいるから、と言って、ダメというわけではない。知り合いに、かなりの数の猫を保護している人はいる。同じ地区で、百匹もの猫を家飼いしているトコがある、という話を動物病院で笑い話として聞いたこともあります。



 だけど、そういう家って、仕方なく、猫を引き取っているんだよね。



 多頭飼いとなるお宅って、猫を探しているわけではない。猫を拾ってしまったり、怪我をしている猫を助けたり、庭で子猫が生まれたり、知らない誰かが捨てていったり、そういう、どうしようもない理由で、可哀想だから、と家猫として飼っているわけです。

 電話の向こうの人も、まさしく、そういう人なんだけど、わざわざ、子猫を欲しがる理由が気になりました。



「どうして、子猫なんですか?」

『ちょっと前に、俺の家の猫だろう、と近所の人が子猫持ってきたんだよ。俺の猫じゃないけど、引き取ったんだけど、死んじゃったんだ。それで、代わりの子猫を探してんだ』

「病気か何かで死んだのですか?」

『病院にも連れてったぞ!!』



 何かあって死んだんだろうなー、とは思う。動物病院に連れて行っても、病気が見つかるわけではないし。子猫が急死することって、よくある話です。


「そうなんですか。一応、こちら、医療費等の請求はしません」

『そんなの、タダに決まってるだろう!! 金とるつもりかのか!!!』

「いえいえ、そういう問い合わせがあるので、先に説明するんです。それでも、と言われるので、猫は長くて二十年生きますから、お金もかかるので、そちらで使ってください、とお断りしてるんです」

『エサは、大きいの買ってるから、そんなに金はかからないぞ!!』

「子猫五匹保護した時は、カートンで買ったエサが一週間でなくなった時は、びっくりしましたよー」

『大きい袋で買ってないのか?』

「カートンだから、一箱に六袋かなー」


 話が通じない。たぶん、我が家が望む里親ではない。



 この人は、見た目なんかどうだっていい。

 子猫であれば、何だっていい。

 近所の人が、また、猫を持ち込むから、きっと、また、家猫は増える。




 最近、多頭猫の保護で、事件になっている。百匹もの抱えきれない猫を保護して、結局、生き残ったのは十数匹で、動物虐待として、刑事事件になった。

 事件となったのは、飼い猫ではなく、保護猫だ。でも、飼い猫で崩壊した話は一年に一度は、ニュースで見ている。



「ウチの猫じゃなくてもいい感じなので、お断りします」

『なんだと!! すぐ猫を寄越せ!!! 舐めとんのか!!!!』

「脅迫するような方には、お渡しできません」

『脅迫なんかしてねぇ!!!』

「脅迫しているように、私には聞こえます」

『わかった!! こっちの電話番号も消せよ!!!』



 こうして、お断りとなりました。

 私の独断でお断りしたようなものなので、長女に事後報告しました。



「う、うーん、そんなにたくさん猫いる所はちょっと。で、でも、いい家もあるって知ってるよ!! でも、そういう家って、滅多にないから」



 長女としても、誰でもいい、というわけではありませんでした。

 とりあえず、問い合わせ先は、親である私で良かった。こんなの、長女では対応出来ないなー。

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