人生の分岐点で、猫生の分岐点だった
夏休みが始まったばかりで、色々と忙しかった時でした。せっかくの三連休、夫は次女を連れて、友達が集まるキャンプに行きました。
私と長女はというと、自宅に残りました。長女は今年、大学受験です。三年生になって、滑り止めの大学を決めるために、三連休に行われるオープンキャンパスに行くこととなっていました。オープンキャンパスは土日の二日間、行われるのですが、土曜日は夏休み最後の登校日であったため、日曜日に行くこととなりました。
金曜日は、次女の荷物をまとめて、土曜日は、夫と次女をバス停まで送って、長女は最終日だというのに学校休みたい、とアホなことをいうので、車で送迎して、と午後までバタバタしていました。
「明日は、朝の5時には起床だからね」
受験生のくせに、ゲームをする長女に口うるさく言う私。
「もう、わかってるから!!」
「そう言って、夜中までゲームやっちゃうでしょう!!」
こいつ、一時期、深夜までゲームやって起きて、学校で体調崩したから、ゲーム時間決められたのよ。けど、守らないから、私が監視してるの。
「明日は私が運転なの。お父さんはいないんだからね。はやく寝て」
「はいはい」
むっかつくなー!! 長女は、私のことを口うるさい親め、と見ながら、とりあえず、はやく就寝してくれた。
目覚ましで起きて、前日に買ったお弁当を食べて、としていると、あっという間に一時間経ってた。
「途中、コンビニ寄ろう」
いつものカフェラテを飲みながら行きたい。コーヒー大好きだから、運転する時は、コンビニ寄って、コーヒー買って、それ飲みながら長距離運転してます。
でも、スマホのナビを使って、どう行くのかなー、なんて見てると、いつものコンビニを通り過ぎてた。
次こそは、次こそは、と何度も通り過ぎていると、とうとう、スマホのナビの示す道から外れた。
だって、コンビニ行きたいんだもん!!
スマホのナビは優秀なので、ちょっと道が逸れても、新しい道を示してくれる。その道は、遠出する時に使う道だから、よく知ってた。
「ほら、トイレ休憩」
「えー」
「この後、たぶん、コンビニないから」
脅しではない。ナビ見たけど、左側にコンビニはないなー。右側にはあるけど、私が行きたくない。
ちょうど、自宅から大学まで半分の場所でした。ここでコンビニ休憩しても、オープンキャンパス開催前には到着する予定でした。
朝、バタバタしていたので、私もトイレ休憩して、コーヒーと軽食買って、としていると、あっという間に三十分、経ってました。
「もう、ここからは休憩ないからねー」
「わかったから、行って!!」
口うるさい母親め!! みたいに見られた。そうなんだけど、お前、コンビニのないとこで、トイレとか言い出すじゃん。女の子は、トイレが近いんです。
ちょっと信号とかで捕まったりして、進みが悪かったけど、川沿いの道を進んでいきます。連休中日だから、川には釣り人いっぱいだなー、なんて眺めてつつ、対向車を見ていると、不自然な動きをしています。
「あ、あぶなっ」
道の端を白い子猫が歩いていて、それを対向車が避けていました。あんな小さい子猫だから、気づかない車にすぐ轢かれてしまいます。
一度、子猫を通り過ぎて、道路の端に車を止めて、長女を呼びます。
「下りて下りて!!」
「えー、何ー?」
「子猫、轢かれちゃう!!」
最初は面倒そうにしていたけど、子猫と聞いて、俊敏に下りて、子猫を探す長女。
長女、逃げる子猫を捕まえるため、道路のど真ん中に行った!! そして、車が停まってくれたけど、子猫がUターンして私のほうに戻ってきた。
結局、我が家の車の下に逃げる手前で、長女が鷲掴みで捕まえた。
「お母さん、動物病院に行かなきゃ!!」
「………」
「ほら、早く行こう!!」
「………いやいや、何言ってんの、あんた!!」
子猫を捕まえたけど、私は保護する気なんてこれっぽっちもない。
「これから、オープンキャンパスだよ!!」
「はやく、病院に行かないと!!」
「聞けよ!!」
病院を連呼する長女。
ここで、私は頭を整理する。私は、子猫を保護するつもりなんて欠片ほどもなかった。このまま、道路にいると、車に轢かれちゃうから、安全な場所に置いて行くつもりだったのだ。
なのに、長女は子猫を病院に連れて行くという。
車の中には、子猫を保護するための道具はない。
これから、オープンキャンパスに行くけど、子猫は連れて行けない。
今日は日曜だから、動物病院はやってない!!
子猫は、見るからに、猫風邪にかかっている。
両目は目ヤニでふさがって、ノミダニが体全体を這いまわっていて、ガリガリにやせ細っている。
絶対に、お腹に寄生虫だっているよ!!
色々と考え、天秤にかけて、として、長女に決めさせることにした。
「まず、この子猫を保護したら、オープンキャンパスには行けない。いいの?」
「諦める!!」
これで、長女は、志望大学、一つ減ったな。
「子猫をいれる箱がないから、あんたの命の次に大事な毛布を犠牲に出来る?」
「出来る!!」
帰ったら、長女の毛布を漂白剤で洗おう。
「この猫は、あんたが面倒をみるんだよ」
「わかった!!」
どうせ、私がほとんどやるんだろうなー。子どもに生き物の責任をとらせるのって、親も覚悟しないといけないんだよね。
というわけで、子猫は長女の精神安定剤となっている毛布にくるまれて、自宅に連れて行くこととなりました。トホホホホ。