表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

9/29

第9話 レンコン。の巻!


 泥だらけのアンジーが帰ってきた。


「まったくふざけているっ!!」


「どうしたんですかアンジーさん!」


「行ってみたら底なし沼だった!なんという恐ろしい罠!!」


 レンコンを手に持ったアンジーが怒っている。



 ◇◇◇◇



 時間は数時間戻り、場所は街の外れのレンコン畑。


「うわーーーーっ!底なし沼だー!!」


 レンコン畑にはまり込むアンジー。


 アンジーを助けようと、兵士たち(高給取り)が次々にレンコン畑にはまっていく。


「うわーーーーっ!」


「足が、体が、動かない!」


「今日出したばかりの鎧がーー!ピカピカに磨いたのにーーっ!」


「おい!引っ張るな!」


「押すな!押すな!絶対押すなっ!!」


 阿鼻叫喚。地獄絵図。



「あんたら、な~にしとるんじゃ~…」



 通りかかった農家のおじいさんを驚かせてしまった。


「ご老人!助けてください!死にたくないっ!」


 おじいさんは丈夫なロープを持ってきてくれて、それを頼りに何とか這い出ることができた。



 ◇◇◇◇



「ご老人は私のファンらしくて、なぜかレンコンをプレゼントしてくれたよ」


「なんか…大変でしたね」


「まったくだ。大変な目にあった。私の片足の装備も底なし沼に持っていかれた。ほかにも何人かの鎧の一部が、底なし沼に沈んでいるだろうな」


「大丈夫なんですか?」


 ハルマキは心配する。


(レンコンの育成に支障はないのだろうか…)


「ああ、ありがとう。大丈夫だ。なくなった装備はまた買えばいい。それより、全員が無事でよかった。戦場では何が起こるか分からない。きっと若い兵士たちにもいい学びになっただろう。失った装備が、良い肥やしになってくれることを願うよ」


「そうですね。肥やしになるかどうかはわかりませんが、すくすく育ってほしいです」







 風呂上がりのアンジーが、腰に手を当てて、牛乳を一気飲みしている。



 2人のメイドがアンジーの鎧を洗っている。1人はアケビだ。


 ハルマキは、アケビに対し、


(泥で汚れそうな仕事はしないというイメージを持っていたが、アンジーのためならこんな仕事もするんだな)


 と思った。


 アケビは、まるでアンジーのファンで、特注の装備を手にとっては「ほう。なるほどですねえ。こうなってますか~」と、ちょっと気持ち悪いしゃべり方で、1つずつじっくり見ている。


 兵士たちは外で、各々、自分で自分の鎧を洗っている。治安のためには兵士の威厳も大事らしい。鎧をピカピカにするために、水を取り合っている。



 夏前の空気に似ていて、太陽が暖かく、風が吹くと少し冷えて。大男たちがはしゃいる。



 昼間の水遊びで濡れた手を、ぽかぽかの太陽とそよ風が乾かすような、そんな時間。




 アンジーが窓を開けてそれを見ている。



「こう見ると、普通の女の子ですね」



 ハムカツが言う。


 確かに。剣と鎧を装備していないアンジーを見るのは初めてだ。




 窓から入った風が、アンジーの髪と薄手の服を揺らしている。





 たぶん、それを、ハルマキとハムカツがアホみたいな顔で見ていたからだろう。



 振り向いたアンジーが少し笑った。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ