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第5話 偉い人。の巻!


「ハルマキ、大丈夫か?手首を怪我したのか?申し訳ない、巻き込んでしまって…」


 帰ってきたアンジーが手首をさすっているハルマキを見て言う。


「そんな…アンジーさんは何も悪くありません。勝手に追いかけたのは私ですから」


 確かに、アンジーが謝る必要は全くない。ただ、人々を守ることに対しての責任感が強すぎるのだろう。


「そっちの人…ハムカツだっけ?」


「はい、ハムカツです」


 なぜかちょっと赤くなるハムカツ。


(うわ~、コスプレイベントとか行ってみたかったんだよな~。ま、これは本物で、コスプレではないみたいだけど…)


 アンジーの姿はハムカツのオタク心をくすぐったようだ。


「もしかして、2人は同じ国の人なのか?着ているものがちょっと似ている気がする」


(ガーーーーン)


 ハムカツ的には、わりとお気に入りの私服だったのでショックを受けている。


「ええ、そうです。こいつは、さっき話した私の弟子です。どうやらついてきてしまったようで」


「へえ、いいね。遠くの平和な国。私もいつか行ってみたい。…ところで、2人は泊る所は決まっているの?」


「いえ、それが…私たちはこの国に来たばかりで、この国のお金すら持っていない状態で…」


「だったら一緒に泊まらないか?」


「えっ!」


 ハムカツが声を上げる。


「よろしいんですか?」


 ハルマキが申し訳なさそうに聞き返す。


「ああ、私たちは今、タコヤキ団討伐のために町長の屋敷を借りていて、臨時兵舎として使わせてもらっているんだ。この町の町長は元々大商人だったからね。シャンデリア付きの広い家を持っているのよ」



◇◇



 少し離れた場所に空き地があって、そこに数台の馬車が、目立たないように止まっている。


 町長からの「最近、町の周りの様子がおかしい」という情報があり。それでアンジーが派遣されたらしい。ハルマキと出会ったのは、その見回り中の出来事。


 アンジーが町長にハルマキとハムカツのことを軽く説明して、4人で馬車に乗る。


 町長専用車なのだろうか?中の装飾はかなり豪華だ。元々大商人の大金持ちで、今は町長をやっている偉い人。ハルマキもハムカツも偉い人にはちゃんと緊張するタイプなので、ふかふかのイスに沈み込めずに、ちょっと空気椅子状態。


 

 アンジーと町長が今後の話をしている。


「町長さん申し訳ないね。何人か取り逃がしてしまって、でもタコヤキのお頭は捕まえたし、下っ端たちだけで戻ってくることはないと思うけどね。一応、捕まえた連中の取り調べが終わるまでは引き続き世話になるよ」


「ありがとうございます。アンジェリカ様が来ていただけた事実だけで、奴らがこの地に戻ってくることは二度とないでしょう」


 アンジー………めちゃくちゃ偉い人のようです。


 緊張が重力に負けて、ふかふかソファーに沈み込もうとしていたハルマキとハムカツだったが、空気椅子状態の延長決定。ふくらはぎパンパン。


 思えば、あからさまに怪しいハルマキとハムカツの2人を、町長があっさりと同乗させたのもアンジーの圧倒的な信頼によるものなのだろう。





 4本のふくらはぎが限界を迎え、2人のヒップはふかふかソファーに包まれてお尻セレブになった。


「そういえばハルマキは手首を痛めていたね。町長の家にはとても優秀な医療スキルを持ったナース兼メイドさんがいるから、見てもらうといいよ」


 アンジーの言葉にハルマキが答える。



「はは、ありがたき幸せ」



 4人しかいない車内なので、さすがに4人での会話となる。その中で


「ええっ!…2人ともですか?2人とも、自分のスキルを知らないんですか?」


 アンジーも町長も大いに驚いて、開いた口が塞がらないでいる。そして町長が口を開く。いや、既に開いているが…口を開く。


「聞いたことがあります。スキルをトラブルのもとと考え、あえて調べることをしない地域もあるとか」


「なるほど、親からもらった才能と、天からもらったスキルの食い違い問題か」


「たぶんそうでしょう。才能は宿命、スキルは運命ですから。その2つが一致していれば、ほぼ間違いなく一流になれる。逆に、親が一流でもスキル次第では、別の仕事を考えなければいけない事もある。勿論、選択肢が増えるというポジティブな考え方をする人が多いですけど」


「不思議な風習があるものだねぇ…」


 ハルマキは、これ以上変な人と思われたくないので、何とか話を合わせようと頑張る。


「そうなんですよ。生まれたころからそういう環境で育ってきたので、スキルというものを気にしたことがあまりなくて、よく知らないんですよね。スキルというのは誰でも持っているものなんですか?」


 町長が答える。


「そうです。基本的には、誰でも1つだけスキルを持っています。唯一の例外がイタコスキルです。イタコは、この世に爪痕を残した者、この世界の形を変えた英雄の痕跡を感じとり再現する。これを降霊と呼び、降霊した英雄の、スキルを含めた全ての能力を使うことができます。つまりそのイタコが複数の英雄を降霊できれば、一人で複数のスキルを使えることになります。だからイタコスキルは特別なんです」


 アンジーが、指を一本立てて子供に教えるように言う。


「手足2つで、口鼻1つ。耳目2つで、スキル1つ。頭1つに、夢いっぱい。それが人間だ!」


 ハルマキとハムカツは同じタイミングで、


「なるほど…」


 と言った。


「ふふふ…「なるほど」だって…ふふふふ。君たちやっぱり面白いね」


 そう言って、アンジーは笑った。


 ハムカツは「MCがうまい」と言われることは多いが、「おもしろい」と言われることはあまりなかったので、めちゃくちゃ嬉しそう。顔真っ赤。


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