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第33話 ものまねをする。の巻!




「もう、大丈夫です。馬車で揺られても問題ないって、アケビちゃんが」


 あれから3週間ほどたった。ハムカツはアケビの謎の薬が効いて、もう痛みもないそうだ。「王都に行ったら剣を習いたい」と言ったら、「さすがにそれは、もう一か月くらい様子を見た方がいい」と言われた。


「よし。これで国王に会いに行けるね!」


 アンジーが満面の笑みで言う。


 腹の痛みや今後の不安で寝れなかった日も、アンジーの笑顔を見れば救われた。それはハルマキや隊員たちも同じで、アンジーの笑顔にはそんなチカラがあるのだろう。




 送別会の準備をしている。


「結局何者なんだろう」


「メイドや兵士たちに聞いても、青いフードの男の知り合いは一人もいないんだよな」


 メイド長の仕切りで準備が進められ、町長や一部の兵士も手伝わされている。


「どうやってこの屋敷に入り込んだんでしょうね?」


「やっぱ、あの男が隊長が町を出るって情報をシルバーオクトパスに流したんですかね?」


「街中では、数年前から目撃されていたらしい。町の情報を調べていたのもその男かもしれないが、ただ、顔を見たという情報が一つもなくてね」



「はいはいっ!無駄話しない!!」



 メイド長は、町長に対して言っているのか、兵士たちに対して言っているのか分からない感じで怒った。ドラクエで例えるとイオ系の怒り方。


 ちなみに、準備を手伝っている兵士たちは、一時的にこの町に残る兵士たちだ。


 国境近くの大きな町のわりに、今まで、警備が手薄過ぎて、それがシルバーオクトパスに狙われた理由だろうということで、警備の増員が決まったのだ。今、王都で希望者を募っていて、順次、町に残ったアンジー隊と入れ替えていくとのこと。


 セニョリータも準備を手伝っていて、通りかかったハルマキがその胸に2つの首飾りが揺れているのを見つけた。


 なんとなく、


(セニョリータはこの町に残るのかもしれないな)


 と思ったが、一か月後に普通にアンジー隊に合流した。


 ハルマキは予言者でも占い師でもないし、特に勘もよくない。


「こんにちは。ハルマキさん」


「ああ、こんばんは、町長さん」


「いやあ寂しくなりますね」


「そうですね。私も、許されるならこの町に住みたいですよ」


「はっはっはっ。ありがとうございます」


「彼らの中にも、町に残ることを希望する人がいるかもしれませんよ」


 つまみ食いをして怒られている兵士たちを見ながら言う。


「歓迎しますよ。でも、どうでしょうね。彼らは…」


 町長に「今までお世話になりました」と言おうと思ったが、おそらく、送別会であいさつを求められるだろうから、その時の方がいいなと思った。


 町長と別れるのはさみしい、というか不安だ。実際、町長には世話になった。異世界で何も分からない我々を助けてくれた。とぼけた人柄だが、とても頼りになった。


 隣国のファラグ王国の使者が来た時も、町長が対応してくれた。


 町長は、


「S級様などおりません。仮に居たとしても、お忍びの旅なので、目立つようなことは好まないでしょう」


 という、(絶対いるじゃ~~ん)と思われる対応をした。


 S級イタコの存在が確定であれば、国レベルの話になるので、隣国の使者も、逆に来にくくなるのだろうが、その辺のことは一町長が決められる話ではなく、なんとも絶妙な対応だった。




 送別会が始まった。


 町長のあいさつ。


「こんばんは、町長です。皆さま、本日はお集まりいただき、誠にありがとうございます。この度、町の大恩人のハルマキ様、アンジー様御一行が町を離れるとのことで、ささやかではございますが送別会を催す運びとなりました。えーー……思えば、私が初めてハルマキ様と出会った日、混乱の中、異国の衣を身にまとい凛々しく立ちつくすその御姿はまさに歴史に名を刻む歴々の英雄たちのごとき……」


「長くなりそーー」


 アンジーからヤジが入る。


「帰れーー」


 アケビ、言い過ぎ。


「えーー………、ありがとうございました」


 町長、心が折れる。



「続きまして、子供たちからハルマキ様への感謝の言葉です」


(おお!それは嬉しい!…だが、なぜおまえが司会をしている。ハムカツ…お前は送られる側だろうに…)


 ハルマキの近くには、いかつい護衛の男が立っている。形式的に立っているだけなので、緊張感はないが、威圧感はある。


 子供が泣いている。親に押し出されてハルマキに近づいて来る。すっごい斜め。綱引きの一番後ろの人くらい斜めの状態で、大泣きしながらスライドしてハルマキに近づいてくる。


「やーだ!やーーーだっ!!」


 子供ながらにS級様(偽物)のオーラを感じて怖かったのだろう。必死に抵抗している。


 横にいるでっかい兵士にビビっているのかもしれない。


 子供はもう、斜めの状態から寝ている状態になっており、最終的に、大泣きしながら寝ている子供が親に押されてハルマキの前をUターンしていく、という感謝の言葉となった。


「続きまして、2人目の、子供たちからハルマキ様への感謝の言葉です」


 ハムカツが何事もなかったかのように司会を続ける。


(今の見てたよね?すごかったよね?)


 ハムカツと目が合わない。ハムカツは視界の端っこで、ハルマキの無言の視線を感じていて、目を合わさないようにしている。


「さっ、どうぞー」


 2人目の子供がハルマキの前に立つ、横にお父さんがしゃがんでいる。


 子供がもじもじしている。緊張でしゃべれないのだ。


「こんばんは、って…」


 お父さんが子供の耳元で言う。


「こんばんは」


 子供が言う。


「こんばんは、ハルマキです」


 ハルマキが言う。


 子供がまたもじもじしている。


「この度は、町を救っていただきありがとうございました」


(お父さんの声結構大きいな…)


「この度は、町を救っていただきありがとうございました」


(子供がまねをしていう言う。かわいい)


 子供がもじもじする。


「ハルマキ様大好き」


(おじさんに告白された…)


「ハルマキ様大好き」


(子供はかわいい)


「ぼくは、将来ハルマキ様みたいになりたいです」


(今からですか?)


「ぼくは、将来ハルマキ様みたいになりたいです」


(がんばれ!)


「だってだってぇー、ハルマキ様ってかっこいいんだもぉん!」


「恐縮です」


「だってだってぇー、ハルマキ様ってかっこいいんだもぉん!」


(子供かわいい)


「ほらほら、ハルマキ様が「恐縮です」って」


(いやいや、あなたに言ったのですよ)


「ほらほら、ハルマキ様が「恐縮です」って」


(それは言わなくていいやつ!)


 お父さんも、ちょっと焦ってきている。どうやって終わらせていいか迷っているのだろう。


「ぼく、もお、お腹すいちゃった」


「料理の方も用意しておりますので、後ほど…」


「ぼく、もお、お腹すいちゃった」


「ちょっと待っててねー」


「ハルマキ様、本当にありがとう。バイバーイ!」


「いえいえ、こちらこそ、この町には本当にお世話になりました」


「ハルマキ様、本当にありがとう。バイバーイ!」


「バイバーイ!」


 親子が戻っていく。


「えー、続きまして、3人目の、子供たちからハルマキ様への感謝の言葉です」


「これ大丈夫?ねえ、ハムカツ?これ大丈夫?」


 何事もなかったかのように司会をしているハムカツに、ちょっとイラっとした。


「ハルマキ様、こんばんは」


(今度の子は一人でやってきた。しっかり者っぽい女の子だ)


「こんばんは、ハルマキです」


「ハルマキ様。わたしたちの町を救ってくれて本当にありがとうございます」


(子供特有の抑揚。お父さんが考えた文章を丸暗記してきたんだろうなって感じのしゃべり方だ。きっと、一生懸命覚えてきたのだろう)


「本当に本当に、感謝していま…………本当に本当に感謝をしています」


(「を」はいいから!「を」は入っても入らなくても、どっちでもいいから!)


「ハラマキ様、あっ、間違えちった!いっけねえ。てへぇ。ハルマキ様、どうかこれからも、かわいい

私たちがいるこの町をどうかお守りください。ハルマキ様大好き!」


(かわいいのは否定しないが、親が考えた文章があざとすぎて…)


「この線から上の文章を、明日の夕方までに暗記しておきなさい」


(たぶん、そこは暗記しなくていいところだよ…)


「暗記した文章を言って、ごちそうを食べて帰りましょう」


(向こうで、青ざめている夫婦がいるけど…絶対この子の両親だろ)


「家も燃やされて、お金も無くなっちゃったけど、あなたという宝物が無事で、パパもままも幸せです」


(めっちゃ泣けるんですけど~~~っ!!)


 子供は頭を下げて帰って行った。


「子供たちからの感謝の言葉は以上です」



 この後、料理が出てきた。そんなに話題になっているわけでもないが、コック長のS級パンも出てきた。幅を取ることが不評だったので、ひし形のパンに、かにぱんのようなくぼみを二本付けただけの、なんとなくSに見えなくもないという特徴のないパンになった。ただ、味はめっちゃうまい。コック長ただもんじゃない。


 レンコンも出てきた。これもうまい。後に、アーマーレンコンと呼ばれ町の特産品になる。


 農家のテプラ一家も招待されていた。見たことのない御馳走を仲良く食べていた。


(短い期間ではあるが、たくさんの思い出がある…)


 と、ハルマキは思った。




 送別会が終わり、ハムカツと二人。


「明日いよいよ出発ですね」


「そうだな」


「うまくいくといいですね。国王との謁見…」


「ああ、そうだな」


「なんかもう、腹をくくってる感じですね」


「腹をくくっているというか…元々、私たちは死んでいて、なぜだかこの世界に飛ばされて……その後はもう、アンジーさんに助けられて、今日まで生きてこれたから、この命はアンジーさんのために使おうかなって……そう、それで、私は決めたんだ。S級イタコの…」


 ハルマキが息を吸う。


「ものまねをする」





「そうですね。僕も同じです!」


「いやおまえは違う。お前はものまねできないだろ」


「うっ…」


「ははは…」




 翌朝、王都から来た馬車に乗る。


 ハルマキの「目立ちたくない」という意思を、どう理解したのか、迷彩柄である。


 町長とアケビに見送られて出発する。


 前から2番目の馬車に、ハルマキ、ハムカツ、アンジーが乗っている。


「これからどうなるんでしょう」


「さあね、誰もS級イタコの扱い方なんて知らないからね」


「私も、王都のことなんてまるで知りませんから」


「分かっているのは、ハルマキが国王に謁見したときの第一声くらいかな」


「ははは、そうですね」


「うん、そう、それは……」






    第一章  ~こんばんは、ハルマキです~



    終わり     








 とりあえず8万字を目標にしていたのでここで終わりです。というか打ち切りです。


 もっと無双させたかったのですが、うまく書けませんでした。実力不足です。


 しばらくは他の人の作品を読んで勉強します。


 そのうち、むかーーーしに書いて、箸にも棒にも先割れスプーンにも掛からなかった小説を、少し直して書いたり、しょーーーもない短編とか書くかもしれません。


 では、

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