第32話 ロボ…出る!の巻!
「ロボット五機ですか?」
「ああ、五機のロボを出そうかと思って…」
ハルマキとハムカツが深刻な表情で話し合っている。
「覚悟を決めたのですね?」
「ああ」
「国王との謁見……その時に…やるんですね!?」
「この世界の人々の反応を見るにS級イタコは、にわかには信じられない存在…目の前で見た人たちでさえ、目の前の現実を疑うほどの存在だ。国王も同じだろう」
「それで、国王が「S級イタコの力を見せてくれ」という展開になると予想するわけですね」
「そうだ。その時にロボット五機を出す。見せつけてやるさ、国王に…私の力を!」
「確かに、一国の王を相手にするのであれば、ロボット五機くらいは必要でしょう。むしろそれで足りるでしょうか?」
「相手が国王だろうが誰だろうが、ロボット五機の破壊力があれば大丈夫だ」
「ふっふっふっ…そうですね。きっと、謁見の場にいる護衛の兵士たちもロボット五機の破壊力を味わうことになるのでしょうね」
「罪悪感がないと言ったら嘘になるが…」
「国王には悪いですが、仕方がないですよね…」
「ああ、我々の未来のためだ」
「はい」
「私は、ロボット五機ひろしのものまねをする!!」
ハルマキは国王を騙す覚悟を決めたのだ。
◇◇
「なっ…なんだこれはっ!!」
国王によって選ばれ派遣された3人の精鋭兵士たちは驚いた。
アンジーの部隊の隊員たちが、全員で指パッチンの練習をしているのだ。
3人は一旦扉を閉める。
3人は、アンジーの隊に入隊したわけではない。しかし、アンジー隊と連携を取り、護衛対象のS級イタコを守らねばならない。つまり…この人たちと仲良くしなければならないのだ。
3人は王から与えられたミッションの難易度に改めて驚愕する。
もちろん、隊員たちも、あの日からずっと指パッチン指差しをし続けていたわけではない。あれから何回かブームの再燃があり、今回は4回目になる。
順を追って話そう。
まず、アンジーが指パッチン指差しがかっこいいと言ったことのより第一次ブームは生まれた。この時の指パッチン指差しは、指パッチンの後に親指を上にしてピストルを模したような手の形になる。この異世界にはまだ銃器が存在しないので、説明するときにやや難しくなるが、これを「初期型」と呼称する。
第二次ブームは一人の男の発明から始まる。パッチン後の親指を横に倒し、手の平が上に来るようにして終るタイプが発明されたのだ。
最初は馬鹿にされた。
「なんだそれは?」
「おじいちゃんのジャンケンか?」
「そこに小っちゃいドングリ握ってるのか?」
などと言われたが、しだいに、
「でも、これ、ちょっとかっこいいんじゃないか?」
「上から感が増すよな」
「めっちゃクールなんじゃね?」
と、なり、それを見たほかの隊員たちも、
「なんだそれはかっこいいじゃないか」
と言ってまねをし始め、そのタイプを「平上型」と呼称し、第二次ブームとなった。
平上型のブームが落ち着いた頃、それは一人の男の悩みから始まった。
「指を差したときに、どんな言葉を言えばかっこいいのだろうか?」
という悩みだ。
この悩みが起点となり、指差し後のかっこいい言葉ブームが起こった。
パチンと指を鳴らすと同時に、平上型で指をさす。そしていう言葉。
パチン「いいね!」
パチン「まったく、お前にはかなわないぜ」
パチン「それ!同じこと思ってたし」
パチン「天才になりたくて、左手で箸持ってるから」
パチン「オレ、ポケットに何でも入れちゃうし」
パチン「おまえ、下り坂で凄くスピードアップするよな」
もう、何でもかっこいい。
議論は白熱し、
「このカッコよさは俺たち以外でも成立するのだろうか?」
という話になった。
「例えば子供とか…」
パチン「お母さん、しょうゆ取って~」
パチン「お母さん、うんこ~~!」
パチン「お母さん!今日、家までスキップで帰ってきたっ!」
パチン「おかあさん、プールの授業あったから、ヨシオ君のパンツはいてきちゃった」
「うーん…子供にはまだ早いのかもしれない」
「もっと、上から目線の偉い人の方がいいんじゃないか?例えば、裁判長とか…」
パチン「死刑!」
パチンパチン「静粛に!」パチンパチン「静粛に!」
「いや、「静粛に!」の時は木のやつがあるから。木のやつでカンカン!「静粛に!」だから」
「おお、かっこいい!」
「え?待って…ってことは、指パッチンより、木のやつの方がかっこいいのか?」
「いやいや、木のやつを常に持ち歩くのは、さすがに邪魔だろ…かっこいいけど…」
「だよな、やっぱり指パッチンだよな」
と、危うく木のやつブームになりそうになったが、何とか回避してくれた。これが第三次ブームである。
そして現在が、第四次ブーム。
これは、第二次ブームの逆。指パッチンの後に、手の平が下を向くように指をさす「平下型」のタイプを、誰かが発明したのだ。
「なんだこれは、指パッチンの後の指差しが、ものすごく「ビシッ」と決まる感じがする!これは、かっこいいぞ!」
と言って、今、平下型ブームの真っ最中。
ガラガラガラ…。
3人が閉めた扉が開き、中からアンジー隊の兵士が出てくる。
パチン「もしかして、王都から来た、ハルマキさんの護衛の方々ですか?」
平下型である。平下型でそう質問した。
精鋭たち3人は困惑した。
(なんなんだこれは?どういう文化なのか?町の文化なのか?隊の決まりなのか?……)
パチン「はい。我々は、国王の命により、S級イタコ様をお守りするために派遣されました」
平下型である。
精鋭たちは、
(ここでは、これが普通なんだ。これをやらないと、変な人と思われるかもしれない)
と思った。
パチン「どうぞどうぞ、中へ」
兵士がもう一人出てきてそういった。
パチン「ありがとうございます」
パチン「あそこにいるのがアンジー隊長…じゃない、アンジェリカ・フレイ隊長です」
パチン「ええ、来るときに馬車の中でお会いしました。改めてご挨拶をしてもよろしいか?」
パチン「ええ、どうぞどうぞ」
パチン「アンジェリカ・フレイ隊長。これからよろしくお願いします」
「アンジーでいいよ」
パチン「は…はい。アンジー隊長」
「うん、よろしくね。町長には会った?」
パチン「はい。先ほどご挨拶しました」
「部屋は決まったの?」
パチン「はい。立派な部屋を用意していただきました」
「そう、じゃあ、後でハルマキに合わせるから、それまで部屋で休んでていいよ」
パチン「はい!私たちはアンジー隊に入るわけではありませんが、アンジー隊長のいう事を聞けと国王に命じられております。なんでもご命令ください」
「そう、じゃあ……」
アンジーがパッチンなしで、精鋭たちの平下型を指差す。
「パッチンやめれ」




