第29話 天才。の巻!
アミーゴの横にタケボンがいる。
動かない。
アンジーがタケボンを見ている。
「タケボンは天才だった…天才で、頭が良くて、頭の良さ山のごとしだった」
「山のごとし??」
「アハハハ」
(ウケた。あまりうまくツッコめなかったけど、ウケた)
「タケボンは隊の中で参謀的な役割も担っていて、その頭脳を使って、何か問題を解決するときに、中指と親指でパチンと指を鳴らし、その鳴らし終わった手の形のまま、私を指さしてくるんだ。それがめっちゃかっこいいんだ」
兵士たちが、みんな、指を鳴らしてアンジーを指さし始める。
「ピュアの集団か?」
(ウケない)
ツッコミが分かりにくかったのか、みんな指パッチンに夢中なのか。
アンジーは気にせず話を続ける。
「ホイケンティア王国軍で一斉テストがあったんだ。この国や近隣諸国の歴史、文化、さらに数学、軍略など様々なテストが行われ、タケボンの成績はとても優秀だった。トップ17に入っていた」
「もしかして17位ですか?」
「なんでわかったんだ?」
「えっと……なんとなくです」
「アハハハハ」
(ウケた。ちょっと、アンジーさんを気遣ったようなツッコミだったのが良かったのかもしれない)
「そんな、軍の中でも17本の指に入るほど頭のいいタケボンだが」
「指多い!!」
「アハハハハ」
「さらに言うと、実は、タケボンはテスト前の勉強を全然していなかったのだ!私が、
「タケボンは何時間くらい勉強してるんだ?」
と聞くと、
「え?オレ、勉強とか全然してないっすよ?」
と言うのだ。隊員の中には
「本当は隠れて勉強しているんじゃないか」
と言う者もいた。
軍師や大臣なども含めての17位だ。そうやって疑うのも無理はない。正直、私もちょっと疑ってしまった。
さらに、あの頃、タケボンは早めに家に帰ることが多かった。それも疑念を持った原因だろう。しかしそれには理由があったのだ。ある日私が、
「あれ?タケボン、今日も早く帰るの?」
と聞くと、タケボンは、
「あ、え、え、えっと、飼ってる犬が逃げちゃって…」
と言った。私は反省した。逃げた犬を探さなきゃいけないのに、勉強などできるはずもない…。
次の日、
「犬は見つかったのか?見つかってないなら、私たちも一緒に探そうか?」
と言うと、
「あ?え?いやいや、全然、そんなそんな。大丈夫です。見つかりました、見つかりました」
と言ったので安心した。
その日は、別の隊の隊長が剣の稽古を見てくれる日だったが、タケボンは、
「犬が逃げてないか不安なので、いったん帰ります。もし戻ってこなかったら、犬が逃げたと思ってください」
と言って、いったん帰宅した。そして戻ってこなかった。犬が逃げたのだ。
次の日も、さらに次の日も次の日も、犬は逃げた。もう、勉強どころではない」
「いや、犬が毎日逃げちゃう人、絶対頭良くないでしょ…」
「アハハハハ」
(よし!ウケた!)
「タケボンは、いつか私に代わりこの隊の隊長になっていたかもしれない。タケボンが隊長になり、私がその下で自由に戦うという、そんな未来もあったかもしれない。少なくとも、隊をまとめるという点においては、私よりもタケボンの方が優れていただろう」
「犬、逃げちゃうのに?」
「アハハハハハハ」
(ウケた)
確かに、アンジーは軍隊の隊長という仕事には向いてないのかもしれない。この隊の隊員の使命は、詠唱中のアンジーを守ることであり、つまり、アンジーのために死ぬことだ。それだけでも心を痛めるだろう…非情なようだが、部下が死ぬたびに、これほど心を痛めていてはアンジーの心は持たないのではないか…。さらに、そこに隊長という責任も加わると、怖くて指示を出すこともできなくなるのではないか…。
「アハハハ」
アンジーも笑っている。
(アンジーさんは普段からちゃんと部下の一人一人を見ていて、その部下たちを自慢したくて、私に聞かせたくて、それで、こんな話をしているのかもしれない)
「アハハハハ」
ハルマキも笑っている。
(アンジーさんは、たまたまイタコスキルに恵まれただけで、隊長という仕事には向いていないのかもしれない。それを薄々わかっていて、それで「タケボンの方が隊長として優れている」なんてことを言ったのかもしれない。でも、そんなアンジーさんを…この国で最強の女の子を、私は、守りたいという気持ちになっていて、そして、それは、ここに居る全兵士たちが同じ気持ちなんだと伝わってくる)
「アハハハハ」
兵士たちが笑っている。




