第27話 反省。の巻!
アグパヌと3人の側近を捕縛した。しかし町ではまだ盗賊たちが暴れている。
町長たちが情報を引き出す。
アグパヌは気絶したままだが、むしろそれが好都合だったのか、残りの3人はよくしゃべってくれた。
彼らは、緊急事態の連絡用に2種類の煙花火を持っていた。白い煙は「集まれ」。黒い煙は「逃げろ」だ。
「S級イタコさえいれば、白い煙で盗賊たちを集めて、シルバーオクトパスの幹部の一派を一網打尽にできるかもしれない。だが……」
そう言って、町長はハルマキを見る。
一頭のティラノサウルスが、泣きながらハムカツに向かって走っている。
「あの様子では普段通りに戦えないかもしれない。そもそも猛竜進一の限界降霊時間は何時間なのか?もしかしたら数分しかないかもしれない。不確定要素の多い中で、私は町長として決断しなくてはいけない」
町長に悩んでいる時間はなかった。
「シルバーオクトパスをみすみす逃がしてしまうのは悔しい、だが町民の命には代えられない!黒の煙を上げよう!」
パン!パパンッ!…パンッ!
破裂音が町中に轟く。
ハルマキの「こんばんは」の大声が聞こえても略奪行為をやめなかった盗賊たちが、この花火の音を聞いた瞬間、外に出て空を見上げる。
空にはマザードラゴンの入道雲。しかし、それは盗賊たちの目には入っていない、盗賊たちに見えたものは、まっすぐ伸びた黒い煙のみ。「逃げろ」のサインだ!
盗賊たちは、慌てて逃げだす。
恐怖の時間は終わった。
それでも町の悲しみは終わらない。人々は震えていた。
「大丈夫か。ハムカツ!死ぬな!」
ハルマキが泣きながら声を掛ける。ハルマキも震えている。
「し…師匠…もうそろそろ、ものまねをやめる時かなと思います」
「何を言っているんだ!ものまねはお前の夢じゃないか!やめるなんて言うな!」
「いや…僕じゃなくて…師匠が……」
「急に何を言い出すんだ。なぜ私がものまねをやめなければならないのだ」
「そうじゃなくて……もう…」
「もう?」
「猛竜進一のものまね…そろそろやめた方が…」
「あ」
猛竜進一はいなくなり、ハルマキが帰ってくる。
「いやあ、夢じゃなかったんだねえ。まさか本当にS級様とは…」
「アケビちゃん!」
「ほれ、どきな。S級様」
アケビがハムカツの傷を診る。ハルマキがのぞき込む。ちょっと邪魔。
「死ぬなハムカツ!」
「こんな傷じゃ死なないよ」
「本当ですか!?」
「ああ、私がいるからね」
と言って、アケビはニヤリと笑う。
ハムカツの視界にアミーゴが映る。横にセニョリータが座っている。
「アケビちゃん。アミーゴは?」
「……………」
アケビは黙っている。
「アミーゴは僕よりも若いんだ…」
「あんたは自分のことだけ考えな」
アケビは周りを見渡し。
「おい誰か、こいつを屋敷に運んでくれ。手術をする!」
力のありそうな町民数人でハムカツを屋敷に運ぶ。町民たちは、すぐ後ろにS級イタコがくっついてくるので、ちょっとビビっている。
「ここからは私の時間だ。気が散るだけで役に立たないんだから、全員出ていきな!」
部屋にはアケビ1人、ハムカツに全身麻酔をかけて手術が始まる。
手術は数十分で終わった。
「運がいいね。内臓はほぼ無傷だよ。自分でよけたってことはないと思うから、やっぱり運がいいんだろうね」
「ああ…ありがとうございます。アケビちゃん」
ハルマキが泣いている。
「すぐに目を覚ますはずだよ」
「大丈夫ですよね?本当に大丈夫ですよね?魚の煮つけとか言ってませんでしたよね?」
「魚の煮つけ???」
「あ…いや…何でもないです……」
「じゃ、私は他の兵士を診に行くよ」
「ありがとうございました」
アケビは、S級イタコ様が深々と礼をしているのを見て、ちょっとおもしろかったが、笑いはしなかった。
しばらくして、ハムカツは目を覚まし、もうろうとしたままハルマキを見つける。
「ああ、師匠………どっちですか」
「異世界だよ」
「ああ、やっぱり、そっちなんですね」
アンジーが帰ってきた。
「ハムマキッ!!」
「アスパラッ!?」
「あ、すまん、2人が混ざってしまった」
「いえ、私こそすいません。謎の条件反射で……」
「大丈夫なのか?」
「ええ、アケビちゃんが言うには、思ったより全然軽傷だそうです」
「良かった」
「アンジーさん、走ってきたんですか?少し顔色が悪いように見えます」
ハルマキじゃないので、少し走ったくらいで顔色が悪くなったりはしない。でも、確かにアンジーの顔色は良くないように見える。
「反省している。申し訳ない」
アンジーが、2人に頭を下げる。
「え?え?何がですか?」
「私の判断ミスだ。私は町を出るべきではなかった」
「そのへんのことは、私たちにはよくわかりませんが…」
「そのせいでハルマキのS級イタコがバレて」
「それは……確かに…」
「ハムカツも怪我をした」
「串カツになっちゃいました」
「そして町の人たちや兵士たちは……」
「………………」
「私の個人的な感情があって、それで…そのせいで判断を間違えたんだ。とにかく申しわけない」
「………………」
短い沈黙の時間。濃い沈黙だった。
「町の様子はどうでした?」
「ああ、みんな「アンジー様、アンジー様」って言ってくれて…たぶん、私が町を救ったと思ってる人もいたと思う。町を救ったのはハルマキなのにね」
「アンジーさんの顔を見るだけで、みんな安心するでしょうから、今はそれでいいんですよ」
「ああ、そうかもな、今はな…」
「あれ?アンジーさん。怪我してます?」
ハムカツがベッドに寝ながら言う。
「いや、私は怪我なんてしていないぞ」
「でも、あごの下に血が」
アンジーが自分のあごの下をこする。血はもう乾いていたが、アンジーの指先は少しだけ赤くなった。
「これか。これは返り血だな。ここに来る途中、逃げ遅れた盗賊を見つけて、そいつが店の客を人質にとっていたから、人質を安全に取り返すためにター・ターゲを降臨して対処したんだ。その時の返り血だろう」
「ちゃんと町の人を救ってるじゃないですか。その人も喜んだでしょう」
「どうかな、彼女は目の前で人が斬られて、血が噴き出るさまを見て怯えていたよ。買った油を忘れてしまうほど、慌てて家に帰っていった」
「きっと今ごろ、感謝してますよ」
町長を待たせているとのことで、アンジーは部屋を出る。
「なあ、ハムカツ。おまえ、さっきの会話の途中でスベってたよな…」
「串カツですか?」
「表情には出していなかったが、あれはびっくりしたぞ」
「すみません」
「普通はあの空気でボケないんだけどな…」
「反省してます…」
「…どのくらい反省している?」
「ソースの二度付けくらいです」
「そうか……」
「はい……」
「そんなにも反省していたとは……」




