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第2話  イタコの世界。の巻!


 女剣士は腰にランプのような物をぶら下げていて、反対側には剣のようなものがある。


(あれは本物の剣なのか?初めて見た。本物だとしたら、彼女は女剣士、ということで、偽物だとしたら、女コスプレイヤーということだ)


 そう思ってハルマキはあたりを見渡す。


(文明レベルが中世ヨーロッパくらいだとしたら、アニメはない?ならコスプレイヤーでもない?)



 少女は少し怪しんでいるような、のぞき込むような仕草でハルマキを見ながら



「こんばんは、アンジェリカ・フレイです」


 と、挨拶を返した。

 


「あれ…そういえば。言葉が通じるんですね」


「言葉?」


「あ、いえ……あのー、かなり遠くから来ましたので」


「へえ、旅人ってこと?」


「え、ええ…そんな感じです。…なのでここがどこなのかも分かってなくて」


「ここはブラデ、国境の近くの町よ…って言っても、私も来たばかりでよく知らないんだけど」


「そうなんですか」


「最近この辺でタコヤキが出るらしくてね」


「タコヤキが?食堂でですか?」


「食堂?まあ、食堂にも出るし、民家にも出るし」


「へー!民家でも出るなんて。なんか大阪みたいですね」


「オオサカ?」


「かつお節いっぱい掛けて」


「カツオブシ?」


「マヨソースもどばーっと掛けて」


「マヨソオスドバア?」


 アンジェリカ・フレイは、知らないカタカナをいっぱい言われたので


(やばい。頭のいい人だ)


 と思った。




   「キャーーーーーーーッ!!!!」




 突然、闇の向こうから女性の叫び声が聞こえる。


「出たか!」


 そう言ってアンジェリカ・フレイは走り出す。


 ハルマキも気になって追いかける。が、全く追いつけない。やはり鍛えられた戦士なのだろう。



 ランプの光を目印になんとか追いつくと、 食堂でガタイのいい、十数人の男たちが暴れていた


「オラオラ!さっさと金をよこせ!イタコ様の命令だぞ!」


 女性店員が震えながらお金を袋に詰めている。


(イタコ様?そういえばアンジェリカ・フレイさんも「イタコ祭り」とか言ってましたね。この世界にはイタコがいるのか…)


 と、ハルマキは、男たちの大声にビビりながらも、意外と冷静な自分に驚いている。


 男たちの中心にいる、小柄な男がイタコ様のようだ。

 

「こ…こいつらは?」


 と、アンジェリカ・フレイの横でハルマキがつぶやく


「イタコヤンキー…通称タコヤキ。イタコ修行を受けたものの才能が伸びず、国家試験に落ちて闇落ちしたカスよ」


 アンジェリカ・フレイは剣の柄に軽く手をかけて険しい顔をしている。


「まさか、戦うつもりですか?あんな大男たちを相手に一人で?」


「もちろん。私はそのためにこの町に派遣されたんだから」


 と、ひきつった笑顔で言う。あまり余裕はなさそう。それでもアンジェリカ・フレイは



「そこまでだ悪党ども!」



 と、タコヤキたちの前に飛び出る。


「なんだてめぇ!」


 悪党Fくらいのモブ悪党が怒鳴る。


「お前らを捕まえるために、わざわざ王都アミダバからやってきたんだ!結構遠かったぞ!」


「知るかっ!じゃあ来んじゃねえ!」


「もう来ちゃったんだから捕まえてやるっ!」


「やめるんだっ!」


「やめないっ!お前ら悪党なんだから「やめるんだ!」みたいな言い方するな!」


「何を言っているんだおまえっ!」


「いや、「やめるんだ!」は、良い者側の言い方だろっ!」


「意味が分からんぞ!とにかく帰れ!それともぶっ殺されてえのかっ?」


 これは作戦だった。相手を挑発しつつ、時間稼ぎをしているのだ。

 アンジェリカ・フレイは、のちにこれを振り返り『頭脳作戦』と呼称した。

 さらに挑発を続ける。


「ふん!おとなしく捕まれば怪我をせずにクサい飯をたらふく食えるぞ」


「クサい飯だと!例えばなんだ?」


「ええっ?いや、例えばとかじゃなくて、なんか、あれだ……うんこだ!うんこ!!」


「お頭。あいつバカですぜ」


 相手を威嚇して優位に立とうとしたアンジェリカ・フレイだが、ちょっとバカにされちゃってる。


 悪党の一人がアンジェリカ・フレイの胸を見ている。


 そして気づく。


「お……お頭、あのバッヂ!国家認定イタコだ!」


 それを聞いて悪党どもがざわつく。


「国家認定イタコってことは、お頭よりも……」


「ああん?なんだてめえら?」


 お頭が手下どもを威嚇する。


「お前らビビってんじゃねえ!相手は一人だ!詠唱の時間を与えるな!そして時間を稼げ!降霊をする!」


 焦った様子でお頭が叫ぶ。


「させるかっ!」


 覚悟を決めたアンジェリカ・フレイは目の前の一人を斬り倒し、お頭に向かって走る。


 二人目の悪党の剣が、アンジェリカ・フレイの振り下ろした剣を受け止める。その一瞬で悪党どもが集まってくる。


(囲まれる!)


 そう思ったアンジェリカ・フレイは後方に下がる。


 お頭はそれを見てにやりと笑い。ぶつぶつと何かをつぶやきだす。



「隊長っ!!!」



 二人の大男が店に駆け込んできた。隊長とはアンジェリカ・フレイのことのようだ。


  因みにこの時、入ってきた男の肩がハルマキに当たり、ハルマキは(もっと端っこ歩きなさいよ)と言うチャンスだと思ったが、(世代的に伝わらないかも)と思ったし、どう考えても、今はそれどころではないので言わなかった。


 アンジェリカ・フレイは、部下らしき二人の男に



「助かった!10秒稼いでくれ!降霊するっ!!!」



 と言い、男たちも鼻息荒く


「わかりましたっ!」


 と、答えた。


 二人の部下が交戦する。ハルマキの目には二人ともアンジェリカ・フレイより強いように見えていたし、実際にそうだった。……今のアンジェリカ・フレイよりは。



「うおおおおおおぉぉぉっっ!!」



 悪党のお頭が吠える!さっきまでとは明らかに様子が違う。仲間の悪党を吹き飛ばしながら突進してくる。

 

「な、な、なんですかぁっ?!さっきと全然顔が違うし、体も少し大きくなってるっ!」


 ハルマキが驚きの声を上げる。顔、声、能力まで()()()()で、まるで、目で見ているお頭と、脳で見ているお頭が、同じ存在なのに重ならないような、そんな不思議な感覚を体験していた。


 二人の部下が迎え撃つ


「ふはははっ!どけっ!雑魚ども!」


 お頭だったその()()()()が襲い掛かる。


「くっ!」


 さっきまで悪党どもを蹴散らしていた部下たちが、一人の小柄なはずの男を相手に二人がかりでも防戦一方。足止めがやっとといった感じだ。



 そんな中、アンジェリカ・フレイがひざまづき詠唱を始める。




「我は憑代  魂の宿  神に認められ  永遠の魂を世界に刻む英霊よ  今一度  その剣技をもって守らせたも  竜の化身!  剣聖!  ター・ターゲ!!   ええーーーーいっ!!!!」



 空気が揺れる。


 アンジェリカ・フレイの中に何かが集まり、その圧力で空間さえも歪んでいるよう。

 



 アンジェリカ・フレイがゆらりと立ち上がる。

 


 ハルマキは不思議な気持ちになった。


 あのお頭と同じように…いや、それ以上に!アンジェリカ・フレイが、まるで、アンジェリカ・フレイじゃないような…寒気を覚えるほどの違和感があった。



 そしてアンジェリカ・フレイは言う。




「こんばんは、ター・ターゲです…」

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