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第16話 ストⅡ。の巻!




 将来のことはとりあえず保留のまま、ハルマキたちは町長の家に戻ってきた。


 部屋を片付けようとしていたメイドたちに


「申し訳ございません。またしばらくご厄介になります」


 と言って、今朝までいた部屋に戻ってきた。


 アンジーが「部屋を交換しよう」と言ってきたが、当然断った。



 部屋でハルマキが頭を抱えている。


「言い出すタイミングを逃してしまった…。私の判断は間違っていたのかもしれない。アンジーさんには本当のことを言うべきだった」


「でも、本当のことを話すとなったら、我々が異世界人だということも話さなきゃダメですよね?この世界で異世界人ってどんな存在なんでしょう?過去に前例はあるんでしょうか?まさか、異世界人は即処刑…なんてことはないですよね」


「分からない。でも、急に「この世界に異世界人っています?」なんて聞いたら、さすがに怪しまれるだろうから、慎重に聞き出さねば」


 ハルマキもハムカツも、アンジーを信用していないかのような自分たちの言動に、後ろめたさを感じた。


 メイドが持ってきてくれた紅茶が冷めていく。







 トイレから出てきたハムカツがアンジーを見つける。


 聞きたいのは、この世界の異世界人事情だが…


「えーと…あのー…捕まえたタコヤキ団はどうなりました?」


 聞けなかった。


「みんな牢屋に入ってるよ。念のため、無詠唱を見た3人は別々に収監している」


「別々に?」



 今現在、ハルマキがS級イタコであることを明確に知っているのはアンジー1人だけ。(本当はS級イタコじゃないけど…)それ以外に、あり得ない夢を見たと思っているのが、タコヤキ団の残党3人と若い兵士、それとアケビで、あの時両腕を負傷し動けなくなった兵士は、倒れ込んだときの首の角度や兜のせいで、その場で何が起こっているか、全く把握できなかったという。唯一、ハルマキの「こんばんは」だけが聞こえたらしい。


 一人一人の脳内にある状態では「夢」という結論で完結している。だが、自分の記憶と同じものが他人の脳内にもあると知ってしまったら…「夢ではなかった」と気づいてしまうかもしれない。


 真顔で「S級イタコに会った」なんて言うやつは、「河童に会った」と言ってる奴と同じ反応をされるだろう。なので、夢のすり合わせが行われる可能性は少ないが、念のため、アンジーの計らいで3人の残党は別々に収監された。


「S級イタコがバレると困るんでしょ?」


「え、ええ…そうですね…」


「念のため取り調べには私も立ち会うつもりだけど、まだ鑑定士が来てないのよ」


「鑑定士ですか?」


「そう。スキル鑑定士。凶悪犯が捕まったら、必ずスキル鑑定するのよ。例えば、脱獄スキルを持っている犯人だったり、弁護士スキルを持っている犯人だったり、それらのスキルによって、多少対応を変える必要があるからね」


「スキルを鑑定するスキルの人がいるんですね」


「あ、そっか。ハムカツもスキルのこと知らないんだったね。ハルマキの弟子ってことは、ハムカツのスキルもイタコってことだよね」


「うーん。どうでしょう?師匠にはいつも「才能がない」って言われてますから」


「へー、そうなんだ。でも、まあ、なんにしても、S級イタコがバレたくないんだったら、イタコスキルも隠しておいた方がいいね」


「そ…そうですね」


 アンジーと別れて、ハムカツはうなだれている。


(嘘をつきたくないのにたくさん嘘を言ってしまった。いや、そんなに嘘は言っていない。嘘にならないような姑息な本当を言っていた。アンジーさんに対して…)






「アンジーちゃん、あーそーぼー」


「アケビちゃん、仕事は?」


「もうないよ。全部他のメイドたちに押し付けてきたから」


「大丈夫?ほかのメイドたちに嫌われない?」


「全然!私人気者だから!町長に文句言えるのって私だけだからね。みんな頼りにしてくれてるよ」


「ならいいけど。」


「今度みんなで、ピクニックいくか、ストやろうって話してたんだ」


「スト?」


「そう、ストライキ。後で多数決で決めるんだけど。今、スト優勢!」


「マジか、大変だな町長さん」


「でも、今回2回目のストだからね。1回やったんだけど、まだやり方が良くわからなくって。アンジーちゃんストやったことある?」


「いいや、ないよ。だって優遇されてるもん。私」


「ふーん…」


「じゃあね。アケビちゃん。私はいろいろあって忙しいのよ」


「あ、待って!アンジーちゃんどっち?」


「私はピクニックに一票」







 少しして、中庭を通りかかるアンジー。メイドたちが集まっている。


「給料増やせー!」


「お休み増やせー!」


「井戸のポンプ新しくしろー!」


「ハゲー」


「調理場の火力上げろー」


「兵士たちがいる間だけでも臨時バイト雇えー」


「口が臭いー」


「シャンデリアをもっと派手にしろー」


「女子トイレつくれー」


「ハゲが臭いー」



 アンジーが近づいて行き。


「なに、なに?楽しそうだね?何をやっとるの?」


「練習だよ!練習!1対4でストに決まったから練習してるんだよ」


 アンジー以外満票だった。


「ふーん。でも、アケビちゃんだけ、ただの悪口になってたよ」


「スト、ムズいわー」


 アンジーが、向こうの柱の裏に、人影を見つける。


「じゃあね。がんばってね」


「アンジーちゃんもやってかない?」


「やってかなーい」


 そう言ってその場を離れると、柱の裏で町長が泣いていた。


「町長さん…どうしたんだ?」


 号泣している町長が、震えながら振り返り。


「メイドたちに暴言を吐かれ、立ち直れないほどのショックを受ける…………練習」


「ふふふっ、なんだかんだ言って、この家のメイドたちと町長さんって、仲がいいんだな」


 アンジーが真顔で振り返り。



「……って思う練習」





 さて、スト練も終わり、メイドたちがおしゃべりをしている。


「鑑定士って、夕食、食べてくのかなあ?食べてくんだったら食材買い足した方がいいかも」


「旅芸人の2人も帰ってきちゃったしね」


「旅芸人の2人と言えば…聞いた?」


「何?」


「あの2人、自分のスキルを知らないんだって」


「なにそれ?」


「なんでも、自分のスキルを調べない国から来たらしくて」


「そんな国があるんだ」





(スキルを鑑定しない国出身の2人のスキル…気になるねえ……)



 アケビがニヤリと笑っている。






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