表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

15/32

第15話 大きな話。の巻!




 戦闘中の声や物音が聞こえたのだろう。怪しい家の近くに残してきた2人の兵士たちが走ってきた。


 どんな物音が聞こえたのだろう。剣が鎧を叩いた音か?大岩が地面に落ちた音か?


「こんばんは!」


 2人の兵士が言う。


「おう、こんにちは。来てくれたのか」


 アンジーが出迎える。


「どういうことですか?これは…」


 それは異様な光景だったろう。現場の様子から、激しい戦闘が行われたのはわかる。だが、気絶しているものも含め、みんな、ちょっと薄ら笑いなのだ。


 そう、笑顔の魔法がまだ少し残っているのだ。


 そんな笑顔を見た2人の兵士は


(怖っわ!)


 と思った。


「正直油断していた。私の失態だ。探索すると言っておきながら、心のどこかでどうせ国外に逃亡していると、決めつけてしまっていたのだろう。そのせいで仲間に怪我を負わせてしまった」


「隊長、1つお聞きしてもよろしいですか?」


「なんだ?」


 アンジーに質問をしようとした兵士の腕をつかんでもう1人の兵士が小声で言う。


「待て、おまえ、本当にそれを聞くのか?」(小声)


「聞くさ、お前だって気になっているだろう」(小声)


「だが俺は怖いぞ。聞かないほうがいいんじゃないのか?怖いことになる気がする」(小声)


「いいや、聞く。わからないことは聞いた方がいい」(小声)


「隊長」


「ん?」


「なんで、薄ら笑いなんですか?」




「ふっ………魔法さ」




「…ほら」(小声)


「ごめん」(小声)


「聞かない方が良かっただろ」(小声)


「うん」(小声)



「笑顔の…魔法だよ…」



「ほら~」(小声)


「ごめんて…」(小声)


「ああ、やっぱりそうですか」


 と、兵士がアンジーに言う。


「どうした。急に」(小声)


「合わせるしかないだろ」(小声)


 もう一人の兵士も。


「魔法……確かに、なるほど、すごい…」


「………」


「………」


 2人は一旦、忘れることにした。



 


 その兵士たちがタコヤキ団の残党をきつく縛りあげる。取り調べ班の報告では、捕まってない残党は5人。つまり、今縛り上げた奴らで全員ということになる。


 だが油断は良ろしくない。早くみんなと情報を共有せねば。1人の兵士はその場に残って見張りを。もう1人はアンジーを護衛しながら集合場所に戻ることになった。


 集合場所にいた別の班の兵士たちに状況を説明し、動けない兵士やタコヤキ団残党の回収に行ってもらった。


 アンジーとハルマキたちは、兵士たちに聞こえないように、少し離れた場所で今後の話をする。



 アンジーとしては、お忍びの旅というハルマキたちの事情にも配慮しつつ、しかし、知ってしまった以上、そのまま何もせずに別れるというわけにもいかない。



「S級イタコに出会っておいて何もしなかったとなれば、私が後でどれほどの罪に問われるのか…想像もできない。一旦、私と一緒に帰ろう、ハルマキ」


 ハルマキは悩んだ。


(もう一度ウケたい……。あれだけのウケ方をしたことがない。自分のパフォーマンスで、その場がひっくり返るほどのリアクションをもう一度浴びたい。あれだけのウケ方が約束されているこのフォーマットを崩すのはもったいなすぎる。だが、それはアンジーさんを騙す行為だ。謙虚に生きるという自分の生きざまにも反している。)


 やはりハルマキは、ものまね以外は不器用な人間だ。自分の性格に合わないことで喜び、それを職業にしてしまった。


 一見、落ち着いていて、しっかりとした意志を持っている、パリッとしたお堅いベテラン芸人のように見えるが、それは表面だけで、中身はトロトロでいろんな迷いがドロドロにつまっているのだ。


(ああ、でも、私はあの瞬間のために生きてきたのではないだろうか。それほどウケた。一度くらいわがままを言っていいのでは?今まで謙虚に生きてきたのは、この一度のわがままを言うためではないだろうか?)


 ハルマキはそう言って自分を騙してみた。そして騙せた。


「我が国、ホイケンティア王国はけして強い国ではない。はるか昔には『世界の中心』とまで言われた伝統国なのだが、それも、単に保有してたイタコの数が他国よりも多かったというだけで、特別な産業や特産物があるわけじゃない。私もこの国最強なんて言われるが、それは私以外にA級イタコが存在しないというだけ。隣国は、領土も広く、人口も多い、さらに四天王と呼ばれる4人のA級イタコがいる。今はもう、隣国との国力のバランスが崩れている。これはとても危険な状態なんだ」



 アンジーがハルマキを見つめる。



「でも、もし、我が国にS級イタコがいれば、両国のバランスはとれて、問題は一気に解決する。世界は平和になるんだ」



 ハルマキは震えていた。




(話が大きすぎる。国を変える?世界を平和にする?それは、なんて大きな話。それは、なんて大きなリアクション…)





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ