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「では、シャルベーシャさんは人間に襲われて、知らない間に私の家の近くの森で倒れていたと」

「そうだな」


 どうしてこのようなことになったのかは、わからないが、これ以上考えても仕方がなさそうだった。


 とにかく私はとんでもない魔獣を助けてしまったようである。


「これから、どうするんですか?」

「まずは傷を癒やし、魔力を回復させる」

「それは協力させてください」


 先ほどは人類を滅ぼすと豪語していたが、シャルベーシャさん自身は悪い人、いや悪い魔獣ではなさそうなのだ。


 怪我は治療してあげたいし、そうして和解ができたらなんて淡い期待を抱いていた。


「娘、名は?」

「アリアといいます」

「アリア、お前の治癒術は、大したものだ。私の魔力が戻るまで処置を頼む。それまでここで世話になる」

「はい」

「私が回復したら、人類掃討といこうか!よろしくたのむ」


 シャルベーシャさんは、自信に満ちた表情をこちらに向けて言った。


「はい。……いや、人類掃討? よろしくたのむって何を?シャルベーシャさん待ってください!」

「私のことはシャルと読んで構わないぞ。この皿はどこに置いておいたらいい?」

「あ、はい。流しにお願いします。ではなくて! 私に何をさせようと…?」

「また時が来たら話そう。私に考えがある」


 シャルさんが何を考えているのかわからないが、今すぐにでも人類に危害を加えるということもなさそうだ。

 とにかく何か策を考えなければと思うが、そんなのすぐに思いつかない。もちろん人類を滅ぼしていいわけないが、シャルさんが人間を恨む気持ちもわかる。


 人間は文明のために多くの魔獣を犠牲にしてきたから……



 物思いに耽っていたが、ふと我にかえる。


「あ! 今日は診療所の診察日でした。私行かないと!」

「ん? なんだ?」

「私はこの町で診療所をやっていまして。お仕事なので、今日は夕方まで出かけないといけないのですが」

「私も行こう」

「いやお願いですから、家にいてください」


 診療所に着いてこられたら、非常に厄介だ。

 診療所の患者は旅の人も多いが、地元の人もやってくる。その人たちに、この人をなんて説明するというのだ。


「何故。町で暴れたりはしないぞ」

「それは、ありがとうございます。ですが、まだシャルさんも療養中ですし……私は仕事がありますから」

「かまわん。その間私1人でも町を見て回る」

「ええ……」


 どれだけシャルさんが人間にしか見えないとしても、1人で出かけてもらうのはなんだか不安だ。


「あの私が帰ったら、いくらでもお付き合いしますから。それか次のお休みの日とか……」

「…………」


 シャルさんは怪訝な顔をする。

 だが1人で出歩かれて何かあったら、庇うことができない。ここは引けなかった。


「また絶対に町を案内しますから! 約束します。それに今日晩ご飯に食べたいものをご用意しますし。……お肉とか?」

「肉だ」

「はい、肉料理にしますね! 出来るだけ早く帰ってきます」

「ふん」


 かなり不満そうだけど、納得してしてくれただろうか。次のお休みに町を案内してあげようと思う。


「あ! 家のものは自由に使って頂いて大丈夫ですから。食べ物も好きに食べてください。………あと、倒れた本棚を直しておいて頂けると助かります。では、行ってきますね」


 私はとても小さい声で自分の願いを伝えて、逃げるように家を出た。




 青年が家に1人残される。

 散らばった本を拾いながら、ぼやいた。


「私に雑用を押しつけて行きおった。なんて娘だ」

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