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 カフェテラスから落ちていった、とある軍人の魔石付きバングルはすごい勢いで町中を駆け回っていた。逃げ回っている、もしくはそれを操っている何者かの姿は見えない。側から見たらバングルが一人でに動き回っている。


 それを追いかける金髪の青年(魔獣)、さらに後ろからそれを追いかける少年(軍人)、さらにそのかなり後方から2人を追いかける私という状況だった。カフェから出て、結構な距離を走ったし、かなりスピードも速い。私は遠くから2人の姿を追うのがやっとだ。


 私は1度足を止め、息を整えた。このまま追いかけていったところで意味がない気がした。今2人は町の北側へ向かっている。確か町の北出入口から出たら、割とすぐに森林地帯となる。そこへ向かっているのだろうか。


 ガタンッ


 私のすぐ背後で商人用の馬車が荷物を積みおわり、今まさに発進しようとしていた。




 町の北側出口に向かって逃げていくバングルを追う2人の男性の思考は大きく異なっていた。1人は巣の場所の特定を、もう1人は現在逃げ回っているバングルの確保を目論んでいた。


 魔獣であり金髪の男シャルベーシャは、巣の場所が特定できれば、十分であった。このままバングルを見失うことなく追跡できればよい。そのため走る速度を弱めた。今余計な体力を使うまでもない。むしろ諦めたと思わせて、安心して巣に帰らせようとすら考えていた。


 一方若い軍人ノアは、バングルを捕えるために走る速度を上げた。金髪の男を追い抜き、もうバングルに追いつかんとしていた。

 後ろの金髪の男が余計なことをするなと、ものすごい形相で睨んでいることには気づいていなかった。


 ノアがバングルに追いつき、並走する。

 手を伸ばし、バングルを掴もうとするが、その手は何度か空を切った。

 

 次は届く!


 ノアがそう確信して手を伸ばした瞬間、バングルは急に動きを止めた。


「なにっ!」


 ノアは勢い余ってバングルを通り過ぎる。

 バングルはシャルベーシャとノアのちょうど間の位置で動きを止めていた。ノアがゆっくりとバングルに近づいていく。シャルはその様子を警戒して見ていた。



『動くな』



 突然2人の頭に何者かの幼げな声が響いた。

 2人の体の動きが止まる。

 体を動かそうにも、四肢は重く固まり、指ひとつ自由に動かせなくなってしまった。かろうじて言葉を発することだけは可能だった。


「これは一体どうなっているんです!」

「……」


 ノアがシャルに問いかけるが、返答は返ってこなかった。シャルは険しい顔をしてバングルを見下ろしている。



『眠れ』



 再び頭に声が響いた。


「くそっ、なんだ……この声……」

 

 その声を聞いたノアは、ゆるやかに意識を失っていき、その場に倒れ込んだ。シャルベーシャは、その場に立ち尽くしている。


 バングルが再び動き出す。ノアの倒れた身体をするりと抜けて、北側の出口へ向かっていく。

 

 バングルが再び速度を上げて走り出さんとした時だった。ぼふんと前方のなにかにぶつかり、ひっくり返る。


「バングルさん、捕まえた!」


 商業用の馬車に乗せてもらい、先回りしていた少女アリアの手にバングルと共に、姿は見えないが柔らかく暖かい、ふわふわしたような感触のものが収められた。

 アリアはその見えない何かを固く握って、自分の胸に掲げる。


「うわ! な、なんですこれは?」


ピィー、ピィー


 鳴き声を発したかと思ったら、それは突然姿を現した。頭に一本のツノが生えた小麦色のリスの姿だった。

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