13
私たちは町で露店を営むオリバーさんのお宅を訪れていた。そして北の軍人であるという息子さんのノアさんに魔石紛失のことについて詳しい話を聞くことにした。
「はじめまして、ノアさん。私はアリアと申します。こちらは、知り合いのシャルさんで、私の魔石の捜索をお手伝いいただいてます」
「ノア・ハリスです。この度はどうも」
お互い軽く自己紹介を済ませる。
ノアさんはブラウンの短髪でその容姿は若く、幼さが残っている。北の軍都に配属になって、まだ日は浅いそうだが、彼は見た目の割にとても落ち着いた雰囲気を纏っていた。
「僕が魔石を無くしたのは、この町に帰ってきてから2日後のことでした。3日前のことですね」
「その日は何をされていましたか?」
「ええ、その日は……
魔石を紛失した当日の彼の動向はこうだ。
朝は日課のランニングにでていた。町の外周を小一時間走った後、中央のカフェテラスでドリンクを頼み十数分程休憩をとる。その後中央通りの露店で武具の整備用品などを見て回り、昼過ぎには帰宅した。
「軍事用の魔石は、専用のバングルについた状態で装着していました。気づいたときにはバングルごと無くなっていました。……僕は魔石が支給されて以来、このバングルを外したことはありません」
「そうですよね」
軍人さんで魔石を横流しするのはタブーだ。紛失もまた然り。そのため、軍人は皆魔石を専用の腕輪に装着して、退役まで外すことはしないと聞いたことがある。
「アリアさんたちはその日に何を?」
ノアさんから逆に質問をされる。彼はこのような状況下でもとても落ち着いていた。
私は自分の身に起きたことを端的に話した。
「状況は似ていますね。軍の人間でもここ連日、魔石の紛失が発生しています。皆一様に気づいたら無くなっていたと……。かなり異例なことだと思われますが、どれも事件性はない」
「そうですね……」
情報を共有してみたものの、これが事件であるという確証は得られないままだ。今後の見通しは立たたずじまいかもしれない。
「えっと、シャルさんはどう思います?」
ふとシャルさんに問いかけてみる。彼はノアさんと私が話している間、何かを考えているような素振りをしていたが、ずっと静かだった。話が行き詰まる今、何か少しでも思い当たることがあるといいのだが。
「わからないな。少々不可解ではあるが、不注意なのではないか?」
「え……」
シャルさんから思いの外、あっけない応えが返ってきた。
「これ以上話しても得られる情報はなさそうだ。私は戻るぞ」
そう言ってシャルさんは立ち上がり、1人で扉の方へと向かってしまう。私も反射的に立ち上がり、彼の後に続いた。
「ええ!シャルさん、待ってください!……すみません、ノアさんまたわかったことがあれば、お伝えしにきますから!」
私はノアさんに声をかけ、慌ててシャルさんを追いかけた。
シャルさんは家の外に出て、早足でどこかに歩いていく。
「シャルさん、いきなりどうしたんですか?」
「この町には、相当優秀なスクワール族がいるようだな」
シャルさんが何やら含みのある笑みをこちらに向けてくる。
「スクワール族……ですか。リスのことですよね」
「ああ」
スクワール族はリス科の生き物の中でも微量な魔力を持っていることで魔獣に分類される生き物だ。その魔力は僅少のため、討伐の対象になどはならないといわれている。見た目的にも普通のリスとほぼ見分けもつかないと思う。
「そのスクワール族がどうしたんです?」
「魔石を盗んでいるんだろう、冬眠のために」
「ええ!」
「まだ推測でしかないがな」
リスが冬眠するために、魔石を盗み集めているというのか。予想外のことすぎて、素直に驚くしかない。
「それを今から確かめに行く」




